エトロフ発緊急電
佐々木譲(著)
/新潮文庫
作品情報
1941年12月8日、日本海軍機動部隊は真珠湾を奇襲。この攻撃の情報をルーズベルトは事前に入手していたか!? 海軍機動部隊が極秘裡に集結する択捉島に潜入したアメリカ合衆国の日系人スパイ、ケニー・サイトウ。義勇兵として戦ったスペイン戦争で革命に幻滅し、殺し屋となっていた彼が、激烈な諜報戦が繰り広げられる北海の小島に見たものは何だったのか。山本賞受賞の冒険巨篇。
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商品情報
- シリーズ
- エトロフ発緊急電
- 著者
- 佐々木譲
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮文庫
- 書籍発売日
- 2017.04.01
- Reader Store発売日
- 2015.07.03
- ファイルサイズ
- 0.7MB
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この作品のレビュー
平均 4.0 (67件のレビュー)
-
ずーっと前(25年くらい前かな?)、NHKのドラマで見てから、ずっと原作を読みたいと思っていた。
昭和16年の日米開戦前夜の話。
1月、連合艦隊司令長官 山本五十六は、ある大胆な作戦を立てる。それ…は、もし日米開戦が避けられないことだとしたら、開戦初日に米国太平洋艦隊をハワイで撃滅するしか方法はないということであった。この決意を海軍大臣に対して手紙に書き、信頼出来る部下に手渡しさせる。そこから、秘密裏にハワイ奇襲攻撃の作戦は進めていたはずだった。
しかし、秘密は微かな穴から漏れる。東京のある教会のアメリカ人宣教師の元へある日本人から「日本はハワイを奇襲攻撃するつもりだ。」という情報が伝えられる。愛国心によりアメリカとの戦争をどうしても避けたかったその日本人は、その宣教師が実はアメリカ軍のスパイであることを知っており、アメリカ海軍極東課の情報士官テイラー中佐とも知り合いだった。
日本のハワイ奇襲攻撃作戦について複数のところから情報を得た、テイラー中佐は、ケニー・サイトウという日系アメリカ人に白羽の矢を立て、日本にスパイとして送り込む。サイトウはアメリカでは差別されて育ち、スペインで義勇兵として戦い、その後、殺し屋となっていた、アメリカにも日本にも帰属意識の無いアナキストだった。サイトウは日本語、日本海軍の艦船の見方、武闘、暗号解読などの訓練を受け、偽のパスポートを用意され、日本に送りこまれた。
日本でのサイトウのスパイ活動を助けたのは、先に登場したアメリカ人宣教師(彼は、南京大虐殺で中国人の婚約者を日本軍に虐殺され、日本に恨みを持っていた)、それから「日本に全てを奪われた」という在日朝鮮人だった。アメリカ人宣教師スレイセンは、親しくなった日本海軍の技術者を騙して、暗号通信機を作らせ、サイトウに渡す。
サイトウは海軍の要人の家に忍び込み、ある重要な海図を目にする。何処かの島の何処かの湾。日本地図を端から端まで目を凝らして見ると、それが千島列島の中の択捉島の単冠湾(ひとかっぷわん)だと分かった。
ハワイ奇襲攻撃のために日本艦隊が集結するのが択捉島の単冠湾だと分かり、スレイセンの情報からも大体の時期が分かったサイトウは択捉島に向けて、暗号通信機を持って出発する。その頃、サイトウがアメリカのスパイだと察した日本の憲兵は追いかける。
サイトウは追っ手を避けるため、わざと直通の汽車を使わなかったり、途中でヒッチハイクをしたり、家族連れのふりをしたり、最終的には舟を盗んだり(その過程で殺人を犯したり)して、足跡を残さずに単冠湾に到着する。一方、追いかける憲兵のほうは、サイトウの行き先も目的もはっきり分からず、偽装にも気付かないので、てんやわんやである。
サイトウは択捉島では、駅逓(馬を交換する所)の美しい女主人ユキとその使用人、宣造の好意を受け、正体を隠して匿われる。ユキはロシア人との混血児で私生児、宣造はクリル人。どちらも差別されているので、サイトウとは通じる所がある。
ある日、単冠湾に日本海軍の艦船が何隻も集結しているのを見た日から、サイトウは冬は稼働していない鯨の加工工場の発電機を利用して、暗号通信機を動かし、アメリカに暗号を送り続ける。そして、四日後、いよいよ出撃の様子。そのことを打電しようとした時、ようやく憲兵もサイトウに追いつき……。
結局、アメリカ側は日本の真珠湾攻撃に関する複数の警告を無視し、奇襲攻撃は成功した。
日米開戦の前、米国海軍情報部が日本国内に複数の協力者からなる諜報網を作り上げていたこと、「フォックス」のコードネーム(この小説でのサイトウのコードネーム)により、択捉島単冠湾から11月26日まで日本海軍機動部隊の出撃を報告する暗号電があったことは史実であったらしい。
国という大きな組織が戦争に向かって動いてしまっているときに、愛国者とは言えないアウトサイダーのような人達が、その大きな流れを変えるかもしれない活動を陰で、日本の端っこで行っていたということが興味深く、ハラハラすることだった。それが善であったか悪であったかは、その当事者にも今の私達にも言えないのであるが。
サイトウの持つハードボイルドな雰囲気にうっとり。テレビドラマでのサイトウ役の俳優さん、かっこよかったんだけどなあ。今は全然見ないな。
続きを読む投稿日:2021.06.13
めちゃ面白い冒険小説。よくあるプロットを戦争というフィルターを通すことで奥行きが増している。陰のある孤独なヒーローとうら若き女性の報われぬ恋、孤立無援の状況などハードボイルドの基本を忠実になぞっている…ので一見難しそうにみえてサクサク読める。また脇役も魅力があり細部まで丁寧なのが好感触。前作との繋がりがみえつつ全く新しい戦争スパイ小説として(しかもアメリカ目線)一級品であることは間違いない。特に斎藤が択捉島へ逃げていく所は良い。追う側と追われる側の描写の迫力でグイグイ入ってくる。続きを読む
投稿日:2024.02.21
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