教養主義の没落 変わりゆくエリート学生文化
竹内洋(著)
/中公新書
作品情報
一九七〇年前後まで、教養主義はキャンパスの規範文化であった。それは、そのまま社会人になったあとまで、常識としてゆきわたっていた。人格形成や社会改良のための読書による教養主義は、なぜ学生たちを魅了したのだろうか。本書は、大正時代の旧制高校を発祥地として、その後の半世紀間、日本の大学に君臨した教養主義と教養主義者の輝ける実態と、その後の没落過程に光を当てる試みである。
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商品情報
- 著者
- 竹内洋
- 出版社
- 中央公論新社
- 掲載誌・レーベル
- 中公新書
- 書籍発売日
- 2003.07.25
- Reader Store発売日
- 2014.12.21
- ファイルサイズ
- 5.5MB
- ページ数
- 278ページ
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この作品のレビュー
平均 3.6 (55件のレビュー)
-
本書は,大正時代の旧制高校以来,日本の大学にみられた教養主義とその没落を追究する。教養主義とは,哲学,歴史,文学など,人文学の読書を中心にした人格形成をめざす主義を意味する。この学生文化は,古典の読…書に限らず,高い知性を誇った総合雑誌や単行本の購読を通じて培われてきた。教養主義は,1950年の旧制高校廃止でも滅びることなく,アンチ軍国主義の象徴として,マルクス主義とともに60年代半ばまで生き延びる。対照的に,新制高校出身で都市ブルジョア文化に育った石原慎太郎は,教養主義の刻苦勉励的心性に対する生理的嫌悪を,当時の作品の中で示していた。
教養主義に軋みが出てきたのは,1960年代後半からである。筆者はその理由として,貧しく寂しい農村の消滅,日本の高等教育におけるエリート段階の終了とマス段階の開始,そして大卒のグレーカラー化の3点を挙げる。企業に経営幹部として期待されるわけでもなく,大量に採用されるサラリーマン予備軍にとって,教養は無用なものとなる。大学紛争世代による教養知識人への執拗な糾弾も,ただのサラリーマン予備軍への不安と憤怒に由来したのではないかと,懐古する。
筆者は,教養の機能として,人間の環境や日常生活への充足をはかる「適応」,効率や打算,妥協などの実用性を超える「超越」,自らの妥当性や正当性を疑う「自省」の3作用の必要性を説く。1970年代以降の教養機能では,「適応」の肥大,「超越」と「自省」の急速な衰退によって,3作用のバランスが失われてしまった。筆者は,旧制高校的教養主義の復活を時代錯誤として一蹴しながらも,いまこそ旧制高校的な教養主義を通じてその意味や機能を考えるチャンスだと述べる。大正時代の教養主義は,印刷媒体とともに,教師や友人などの人的媒体を介して培われてきた。戦後の大衆教養主義がそれを著しく希薄化させただけに,今後教養を培う場としての対面的人格関係の重要性を主張している。
これまで,齋藤孝『なぜ日本人は学ばなくなったのか』講談社,2008年と,小林哲夫『高校紛争 1969-1970』中央公論新社,2012年を読んできた経験が,本書における教養主義やそれに関する価値観に対する理解を可能にしてくれた。おそらく筆者が最も言いたかったのは,終章の部分だろう。それだけに,序章~5章の200頁を割いて綴られてきた教養主義の栄光と,たった1章の間に崩壊してしまった教養主義の成れの果てが,対照的に描かれている。おりしも,全共闘世代から絶大な共感を得た吉本隆明が昨日死去した。これも,教養主義を再評価するひとつのタイミングだと言えるのかもしれない。続きを読む投稿日:2012.03.17
昔は読まなければならない本というものがあった。難しそうな本がぎっしりつまった本棚。雑誌『世界』を定期購入して、本棚に並べていることがインテリの証だった。p.6
寮や下宿で夜を徹して人生論や哲学論議。…p.8
岩波書店という文化装置。p.131
教養主義とは、たくさんの書物を読んで、教養を詰め込む預金的な志向・態度。p.54
大半の人は散漫な知識を寄せ集めた教養俗物だった。実存哲学のフレーズを振り回して、哲学青年・文学青年を気取った。教養は友人に差をつけるファッションだった。学歴エリートという成り上がりが教養というメッキによって「知識人」という身分文化を獲得しようとした。p.24
頭でかっちの、裸にすれば痩せっぽちのインテリ野郎。p.82
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エコール・ノルマル・シュペリウール。都市部の金持ち階層出身が多い。この学校に入学したブルデューは地方の下層中流の出だったので、負い目を感じていた。p.117
東大生の1日の勉強時間(1934年)。4時間弱(授業除く?)。p.100
大学進学率15% (1963年)。ここから大学の大衆化が進んでいく。p.206続きを読む投稿日:2024.05.08
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