いま集合的無意識を、
神林長平(著)
/ハヤカワ文庫JA
作品情報
30年以上SFを書いてきたぼくは、第一線をはなれたような気分になっていた・・・・・・ベテラン作家が、伊藤計劃『ハーモニー』と3・11後のフィクションの可能性を考察する表題作、深井零がパーソナルなコンピュータを追い求めた記憶を語る《戦闘妖精・雪風》シリーズのスピンオフ「ぼくの、マシン」、多世界解釈を巡る異色スペースオペラ「かくも無数の悲鳴」など、変遷し続けるコミュニケーションの様相を切り取った全6篇を収録
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商品情報
- シリーズ
- いま集合的無意識を、
- 著者
- 神林長平
- 出版社
- 早川書房
- 掲載誌・レーベル
- ハヤカワ文庫JA
- 書籍発売日
- 2012.03.01
- Reader Store発売日
- 2013.11.15
- ファイルサイズ
- 0.2MB
- ページ数
- 256ページ
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この作品のレビュー
平均 3.7 (79件のレビュー)
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意識と無意識のはざまに
パーソナルコンピュータは、OSもクラウド化されて、もはやパーソナルでは動かなく、誰かと繋がっていないと無用になるパーソナルコンピュータ。仮想現実と現実、意識と無意識、存在とはなんなのか。短編のため、ス…トーリーよりも読んだあとの自問自答が頭を駆け巡る。スピンオフの作品もあるが、この本だけでも十分面白かった。アドベンチャー的なSFを期待すると読み進めにくいかも。この作者の本も読んでみたい。でも、それ以上に伊藤計畫の本をまた再読したくなるとともに、本当にすごい人を失ったなと改めて悲しくなった。続きを読む
投稿日:2015.07.19
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甘さとは無縁の「子供」の時代
この著者は、他の著作においても、幼少期のみ精神感応能力を持ち、長ずるとそれを失う、という世界を描いていたが、この短編集にもその世界観の物語が含まれている。本来であればアドバンテージになりうるテレパシー…能力が、あたかもオタマジャクシのしっぽのように、邪魔物として扱われ、それを失いかけている=大人になりかけている少年が、羨望と嫉妬からいじめの対象となる、など相変わらず著者の創造する世界は常識の上を行く。どこか哀切な幕切れとも相俟って、印象深い短編になっている。
この短編集にはまた、雪風シリーズの深井中尉の幼少時代のエピソードが含まれているが、これもまた「コミュニケーションが取れない」という判断が、いかに一方的なものであるかを表している。彼には彼の正義と論理があるのだ。常識にとらわれた我々が、それを理解できないだけ。やむを得ず少年は人間とのコミュニケーションをあきらめ、マシンとのコンタクトを求めるようになったのだ。
どの短編も、派手さはないが、SFの体裁を取った、深い人間観察が根底に潜んでいる。今は亡き後輩作家に宛てた表題作には、ヴェテラン作家としての著者の矜持が見え隠れしていて、おかしな表現だろうか、愛らしくさえある。続きを読む投稿日:2015.01.07
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