荒天の武学
内田樹(著)
,光岡英稔(著)
/集英社新書
作品情報
武術において想定外は許されない。不意の事態に際して、最適な答えを常に求められるのが武術本来の在り方だ。その精神は危機の時代、先の読めない荒天の世にこそ真価を発揮する。現代思想家・内田樹は合気道七段の武道家でもある。その内田が注目するのが中国武術韓氏意拳の光岡英稔。光岡は十一年にわたるハワイでの武術指導歴を持ち、きれい事ではない争闘の世界を歩いてきた。本書は二人の対話を通じ、護身、闘争という狭い世界にとどまらない、武術に秘められた荒天の時代を生き抜くための知恵を提示する。【目次】はじめに 「弱い武道家」という立ち位置から 内田 樹/序章 武運ということ/第一章 荒天を生きるための武術/第二章 荒天型武術の学び方/第三章 達人はフレームワークを信じない/第四章 荒天を進む覚悟/おわりに きれい事では済まない状況を如何にきれいに解決できるか 光岡英稔
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商品情報
- シリーズ
- 荒天の武学
- ジャンル
- スポーツ・アウトドア - 格闘技
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社新書
- 書籍発売日
- 2012.12.19
- Reader Store発売日
- 2013.06.28
- ファイルサイズ
- 2.6MB
- ページ数
- 256ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (27件のレビュー)
-
内田氏の著書は浴びるほど読んだが、今回はとりわけ武道にフォーカスした内容で、対談相手は韓氏意拳の光岡氏。光岡氏はストリートファイトで日本の合気道とは性格を異にする面も多いが、根本は相通じているようだ。…時間概念の捉え方など、素人には少々ついて行けないような単元もあったが、海外での体験談や過去の武人にまつわるお話、さらには日本が現在直面している危機など幅広い話題を扱っている。終盤のエアガンの子どものエピソードには正直ビックリした。この事態からも、日本の危機的状況が浮き彫りになっている。平和を実現する手段としての、次元の高い「荒天の武道」が今求められているのかもしれない。続きを読む
投稿日:2013.01.15
武道的な力とは、端的に言えば、一個の生き物としてあらゆる状況を生き延びることができる能力。自分自身が愉快に、気分良く生き続けられるために心身の能力を向上させること。
ただ、自分ひとり愉快であればよいと…いうものではなく、社会格差のせいで苦しんでいる人がいれば、自分も楽しくなくなる。だからこそ、武道家としての自分であれば、そういう問題も何とか解決するように努力する。自分自身の心身の能力の開発を阻害するすべてのファクターを「敵」だと考えて、どうやってその敵を無力化していくのか、それを工夫する。
内田老師はそう述べた上で、現在の武道がある種無菌状態の中で競技化されているものは、晴れた日の武道=晴天型の武道であり、本質的に重要であるのは、あらゆる足場も崩れた上で、荒れ狂う初期条件の中でいかにふるまうかという荒天の武道であるとする。
荒天型の武道家は、まず自分が置かれている状況を大づかみな歴史的な文脈でとらえるところから始まる。政治も経済も社会問題も宗教も学術も、自分が投じられている状況の変化に関するさまざまな因子については、できる限り情報を集め、それぞれの知見を深める。
主体的に受け身を取る。武道では、常いかなる状況でも「場を主宰する」人間であらねばならない。それはつまり、先手を取るということである。攻撃されたではなく、攻撃させたという地点から物事を考える。武道では後手に回ったと思った瞬間に、人間は絶対的に遅れてしまう。相手が提示した状況に応じるための最適行動を直ちに選らばなければならないという形になる。相手に出された問題に正解を迫られるという状況は全く武道的ではない。そう考えると、受け身という受動的な行動に見えるものすらも、主体的に実施している状態としなければならない。これは、自分自身仕事をしているときも感じる。状況に先手を取られている時にパフォーマンスは低い。常に、状況よりも先手を取り、場を主宰する。現代的に言えば自分のペースで仕事をできるように、努力する、準備する、行動するということが重要である。
武道のみならず、仏語でも「随処に主となれば、立処皆真なり」という言葉もある。常に、場の主人公であれ、そうすれば、そこが正しい立ち位置となる。仕事では、多くのMTGやPJTが進行する中で、状況に先手を取られ、MTGも無目的になんの発言もせずに終わってしまうことも最悪のケースとしてある。もちろん、船頭多くして船山に上るではあるが、常に自分自身がその場の主人公であるという自覚をもって主体的に立ち向かうことが重要である。続きを読む投稿日:2023.11.26
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