「忠臣蔵」の決算書
山本博文(著)
/新潮新書
作品情報
吉良邸討ち入りに費やされた軍資金は「約七百両」──武器購入費から潜伏中の会議費、住居費、飲食費に至るまで、大石内蔵助は、その使途の詳細を記した会計帳簿を遺していた。上野介の首を狙う赤穂浪士の行動を金銭面から裏付ける稀有な記録。それは、浪士たちの揺れる心の動きまでをも、数字によって雄弁に物語っていた。歴史的大事件の深層を一級史料から読み解く。「決算書」=史料『預置候金銀請払帳』を全文載録。
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商品情報
- シリーズ
- 「忠臣蔵」の決算書
- 著者
- 山本博文
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮新書
- 書籍発売日
- 2012.11.16
- Reader Store発売日
- 2013.05.24
- ファイルサイズ
- 4.7MB
- ページ数
- 255ページ
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この作品のレビュー
平均 3.7 (14件のレビュー)
-
赤穂事件は同時代の人々にとってもセンセーショナルな事件だったため一次資料も多く存在し、モノガタリ化され続けたために普通なら散逸する様な資料も現在まで残っていることにまず瞠目。原型が多少歪められたとして…も、出来事がモノガタリ化されポピュラーになる事には大きな意義がある。
散逸せずに残った資料に、赤穂藩改易から討ち入りまでの精密な出納帳が残っており、本書はそれに基づいて書かれた、討ち入りまでの金の流れと、赤穂藩士の生活の様子と、心の動きを描かれた一級の読み物である。
討ち入りまでのモチベーションの根本には「武士である」という倫理的な要素は強いが、武士として忠義を尽くす相手が立場によって「藩」「浅野家」であったり、「内匠頭長矩」であったり別れているのが面白い(中には大石内蔵助に惹かれて、という人もいた様だが)。結果として前者は浅野家再興運動にまず走り、後者は討ち入り強硬派となった。最初から一枚岩ではなかったチームをまとめ上げるためには優れたリーダーと「先立つもの」が必要だ。特に討ち入り強硬派は江戸詰の人間が多かったため、意思確認やコントロールの為に都度都度江戸に使者を派遣する必要があり、実は残った「決算書」を見るとこの交通費が占める割合が非常に大きかった事実も面白い。
そして、おそらく討ち入り決行に至ったのは、決算書を見る限り残金に余裕がなくなって決行に至らざるを得なかったという面も否定できない。微禄だった者は討ち入り前にはまさしく「食い詰め浪人」になっており、ことを起こすには後がなかった事も読み取れる。一番最後の出納は、高禄だった大石内蔵助自身のポケットマネーによって賄われていた(つまり、改易から藩務整理ののち残った金を綺麗に使い切って討ち入りに向かった訳だ)。
欲を言えば、大石内蔵助自身の「決算書」も見たかった。様々な用途で消えていった赤穂藩の残金だが、微禄だった者への生活援助に充当されてはいたが大石個人は受け取っていない。妻子を離別後遊蕩に走った時の金も、全て個人の金で賄われている。千五百石という高禄を食んでいた大石内蔵助の貯蓄はいかほどだったのか。
藩の残金の出納帳を最後には幕府に提出することによって、改易から討ち入りに至るまでの行動に一片の私心のない事、公の金を公の行為のために使用した事が分かり、それによって討ち入りの「正しさ」はより凄みを増すことになる。赤穂事件が「忠臣蔵」となって人口に膾炙した理由の一つにはこういう部分があったことは否定できまい。続きを読む投稿日:2019.10.29
このレビューはネタバレを含みます
最近読んだ新書の中では間違いなくNo.1!
レビューの続きを読む
いやー面白かった。
歴史に詳しくない人でも面白いと感じられる1冊。
討ち入りまでのあらゆるお金の動きをまとめた「金銀請払帳」が残っていることもすごいが、
金…一両などを現在の紙幣価値で12万と据え、とにかくわかりやすくまとめているこの本がすごい。
そして分析に沿って討ち入りまでの葛藤、苦労が見えてくる。現代とそんなに変わらないのもまた面白いんだよなぁ。
退職一時金として「割賦金」を支払い、残り700両=8200万ほどを内蔵助が抱える。
最初は討ち入りというより、仏事費などにお金を1200万使ってたりするのも気持ちが見えて面白い。
そして討ち入り実行が現実的になると
上方と江戸の往復の旅費や、リストラされて家賃も払えない仲間たちの家のお金を払ってあげたりとお金の出費がとてもリアル(笑)
討ち入り前の居住地をまとめたマップも面白い。江戸城近くはやっぱり家賃が高い(笑)
赤穂浪士の話は著者も言っている通り、心情や動きに注目した本は多いけど、
経済的側面に注目した本はなかなかないので貴重な1冊。いやー面白かった。
続きを読む投稿日:2022.04.27
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