この作品のレビュー
平均 4.2 (7件のレビュー)
-
『どうしてかというと、「本を読む」ということは、「読んだ結果をどうするか」ということとからんでいると思うから』―『本の未来、人の未来、社会の未来』
すごいなあ、やっぱり。橋本治は。一見したところ突飛…に思える話の流れの裏側で、橋本治の脳内細胞が活発に結合している様が見えてくるようだ。例えばここで引用した「本を読む」という話だって「読むことの動機」という平面ではなくて、「何で人は本を読んだりするのかな」という荒野に立って問いを立てている。そういう思考の方法をする知識人って数が少ないけれど、更にそれをすごく庶民的な平地から考察できる人って他にはいない気がする。
『「ヒット曲の寿命が長かった」というのは、「その曲を所有したい」と思う人と、「その曲が流れたら聞いてしまう」という人の両方がいて、それが咀嚼され消化吸収されるまでの時間が長かったからだろうと思う。「その曲を所有したい」の人が多くなったら、その人達がCDを買ったり、曲のダウンロードをした段階で「ヒット」は終わってしまう。「咀嚼する」という時間が不必要になる』―『「本」はもう閉ざされているのかもしれない』
ね、こういう考察って、出来そうで出来ないと思うよ。問題と正面から向き合っていないように見えて実のところ本質的な洞察が行き届いている。余りに切れ味の鋭い刀で切られるから、切られて血が流れているのに痛いと感じることも出来ないって感じかな。
この時事批評のアンソロジーは、リーマンショックや民主党による政権交代の予兆から始まって、東日本大震災とご自身の闘病の話までが時系列に綴られているものだけれど、今更ながらに「自分の頭で考える」ってことの重要さを思い知らしめてくれるものばかり。もし橋本治が現在進行形のコロナ禍の状況を見たらなんて言うのかなとつい想像してみたくなるけれど、きっと『分からない時は焦ってもしょうがない。「えーと、なにが分からないんだ?」と悠長に構える――すると、分からないことだらけなのに、妙に落ち着いてしまう。「眠れない時に羊の数を数える」というのと同じことかもしれない』ー『焦ってもしょうがない』なんてことを言うんだろう。それにすぐに法律で規制しろとか基準を示せとか言う声に対しても、自ら考えない、自明のことをあたりまえと思えない人の多さに何か一言あったに違いない。
本の背景のことを備忘録的に書いておくと、この時事批評は朝日新聞出版の「一冊の本」に2001年7月号から2012年4月号まで計130回にわたって連載されたものをまとめた『橋本治という生き方』『橋本治という考え方』そして『橋本治という立ち止まり方』の三冊の最後の掲載分。その後は、発表の場を筑摩書房の「ちくま」に移し「遠い地平、低い視点」として連載を続け、2014年7月号から2018年8月号までの掲載分を『思いつきで世界は進む ――「遠い地平、低い視点」で考えた50のこと』として出版。「遠い地平、低い視線」は2019年1月号の第54回「観光客が嫌いだ」で断筆となっている。出版されていない連載4回分の最初の第51回の2018年10月号は「闘病記、またしても」で、著者自身も振り返っていたように、多くの読者は本書の中に収められた2010年12月号分の「闘病記」のように再び執筆活動を続けるものと信じていた筈。因みに「観光客が嫌いだ」では『「東京オリンピックになったら、そういう観光客に東京の街は占拠されるんだろうな」と思うから、東京オリンピックもいやだ。自分の知っている町がある日突然バカの群れに埋め尽されているのを見るのはいやだ』と言っていた橋本治だから、コロナ禍の状況下で静けさを取り戻した街には、安らぎを覚えたかも知れない、などと夢想してみたりする。
(「遠い地平、低い視点」の第35回以降の連載は、この時点でまだWebちくまから読むことが可能です)
続きを読む投稿日:2021.01.10
物事の本質をすっと捉え、自身の考えを易しい言葉で論理的に説明する。なぜそうなのか、自分はなぜそう思うのかと、自分が納得するまで考えることの楽しさを教えてくれる。
投稿日:2013.12.23
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。