希望格差社会――「負け組」の絶望感が日本を引き裂く
山田昌弘(著)
/ちくま文庫
この作品のレビュー
平均 3.8 (49件のレビュー)
-
生活が不安定化するプロセスをリスク化と二極化で捉え、労働・家庭・教育の3つの切り口で明らかにしてくというスタイル。結果として生じる格差には量的(経済的)格差・質的(ステイタス)格差・希望(心理的)格差…の3つがあり、著者は希望格差を重視する。それは人は希望によって生きるものであるという著者の信念からのようである。そして希望がない(絶望する)人が多い社会は停滞し、堕落し、社会秩序が保てないと警鐘を鳴らす。(ちなみに他の本では日本人の8割が希望を持っているので絶望している人は2割という説が紹介されている)
不安定化の背景としては第1に近代化に伴う自由主義の進展がある。自由とリスクはセットなのでリスク化が進行する。結果、運に頼る人がでてくる。第2に冷戦崩壊に伴うグローバル化の進展がある。競争激化によって勝ち組と負け組の二極化が進行する。結果、やる気がなくなり希望もなくし先送りの人生を歩む。しかしながら、政府の政策は昭和的価値観のままであり、時代の変化に対応しておらず負け組をサポートできていない。というのが著者の大まかな主張である。
著者の主張には今となっては特に目新しいものはないが、よく整理はされている印象を受ける。ただし、16年前の本なので当時はそれなりのインパクトはあったのかもしれない。本書に付け加えるポイントとしてはネット社会の進行と中国の台頭があるだろう。気になる点と言えば、本書の肝でもある「希望」への言及は必要なのか?という点である。1~7章まではデータやそれなりの根拠を持って説明がなされているように思えるのだが、8章以降の希望の話になると演繹的に著者の主観が語られている印象を受ける。これは希望が心理的テーマであるが故に、社会科学的には検証しきれない限界があるからだろうと思われる。
そもそも、経済格差よりも希望格差の方を重視する著者のスタンスに疑問を感じる。人はパンのみにて生くるものに非ずとは言え、パンがなければ生きてはいけない。やはり経済格差ありきの希望格差であって、根本原因としての経済格差の構造を探究すべきであり、希望格差はあくまでもオマケ程度でしかないのではないか?本書の構成も概ねそのようになっているように思えるのだが、経済格差じゃインパクトがないので希望格差として売り出したのだろうと推察する。結果、オマケがメインのような題名になってしまい、著作全体としての主張がボヤけてしまった印象も受けるのだが、決して悪い本ではないと思う。続きを読む投稿日:2020.04.29
データに基づいた分析は的確で、20年ほど前のものだが、正に予言のごとく、格差の増大、未婚・離婚の増大・少子化…などその通りの社会になっている。
ただ、基本的に高度経済成長期の日本社会-サラリーマン専業…主婦家庭、1億総中流社会-を安定した「良い」時代のように記載し、その前提が崩れた現代社会をリスクのある不安定な危険な社会という論調には違和感を覚えた。
能力、やる気、努力の有無など人によって千差万別だし、企業は営利団体なのだから能力の有無によって地位や報酬に差異を設けるのは合理的。
寧ろ高度経済成長期に能力に関わらず全員を正社員として採用して保護して仕事の出来に関わらず年功序列で給与を上げたから成長しない貧しい国になったのでは?
格差と騒いでいる人たちはマクロで物事を見過ぎ気がする。個々人の能力や努力(ミクロ)で見ると、やっぱり格差の下に属する人は結局は自己責任なのではないかと思ってしまう。
あと、宗教が心の拠り所(防波堤)になっていたとの分析はその通りだと思う。自分は無神論者だが、海外の人はほぼ何らかの宗教を信じている。昔、海外旅していた時、あなたは何を信じているか?との質問に無神論者と回答したら「では、何を指針に生きているのか?」と言われたことを思い出した。過激派などに焦点が当たりがちだが、本来的には重要な役割を担っているのかも。続きを読む投稿日:2024.03.08
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。