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真剣勝負のその日、波切八郎はついに姿を現わさなかった。しかし秋山小兵衛はなぜか八郎を憎めない。一流の剣客が約束を違えるとはよほどの事がその身を襲ったからであり、実際、道場出奔後、八郎の運命は激烈に転変し、見えない勢力に操られ人斬りを重ねる日々であった。対照的な生き方をとる二人は、互いへの想いを断てぬまま思いがけぬ所で……。「剣客商売」ファン必読の番外編。
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祖父の代から目黒に道場を構えていた小野派一刀流の剣客・波切八郎は、御前試合の決勝で敗れた秋山小兵衛に真剣勝負を挑み、小兵衛は二年後の勝負を約した。それを待つ身でありながら八郎は、辻斬り魔に堕ちた門弟に自首を促すことができずに成敗してしまう。道場を出奔し浪々の身となった八郎は、想いを通じた座敷女中のお信にそそのかされるまま、お信の敵、高木勘蔵を討つ。
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越後、新発田の剣客・神谷弥十郎の道場で下女として働いていたお福は、主人が暗殺されたため、下男の五平と一緒に江戸へ出る。が、新しい主人の御家人・三浦平四郎も、そして五平も、神谷を殺した無頼浪人の凶刃に倒れる。三浦に手裏剣の手ほどきを受けていたお福は、三浦の碁敵・秋山小兵衛の助太刀をえて、見事、仇を討ち果たす。数奇な運命を背負った女の波瀾にとんだ成長の物語。
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小兵衛は今も時折、二十六年前、門弟滝の仇討ちに立会った際の、相手方の助太刀山崎との死闘を思い出す。「生きていれば名ある剣客になっていたろうに」。そんなある日、蕎麦屋で見かけた崩れた風体の浪人は、敵討ちを成就し名をあげたはずの滝だった。そしてその直後、奇しくも小兵衛は、清廉に生きる山崎の遺児に出遇う。老境の小兵衛が人生の浮沈に深く思いを馳せる、シリーズ最終巻。
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得体の知れぬ目眩に襲われたその日、小兵衛は、恩師・辻平右衛門ゆかりの侍・井関助太郎を匿うことになる。井関は手負いで、しかも曰くありげな小さな男の子を連れていた。小兵衛にすら多くを語らぬ井関に、忍びよる刺客の群れ。小兵衛は久しぶりに全身に力の漲るのを感じるのだった。一方江戸城内では、三冬の父・田沼意次が窮地に……表題の特別長編に、短編「おたま」を併録。シリーズ15弾。
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小兵衛は見た。凄腕の二人の浪人者をたちまちにして蹴ちらした、その巨漢の剣客の手並みを。男の名は波川周蔵。「あの男ならせがれでも危い」。波川にいわれなき胸騒ぎを覚えた小兵衛は、やがて大治郎襲撃の計画を偶然知るや、卓抜した剣客の直観で、その陰謀と波川との見えざる糸を確信する。秋山小兵衛六十六歳、一剣客として父として、その血は熱く沸いた。シリーズ第14弾、特別長編。
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小兵衛の剣友を見舞った帰途、大治郎の頭上を一条の矢が疾った。心当たりはなかったが、これも剣客商売ゆえの宿命か。「お前が家を出るときから見張られていたのではないか」小兵衛の一言で大治郎は、次の襲撃を呼び寄せるように、下帯ひとつの裸身で泰然と水浴びをはじめた――「波紋」。旧友内山文太を想う小兵衛の心情を描き格別の余韻を残す「夕紅大川橋」など全5編。第13弾。
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「まだ…まだ死ねぬぞ、まだ十人あまりもいる…」死病に冒されながら、世話になった村に巣くう無頼浪人どもの一掃を最後の仕事と心に決め、ひとり剣をにぎる中年の剣客・村松太九蔵。その助太刀に小兵衛の藤原国助作二尺三寸が冴える「十番斬り」。小兵衛の亡妻お貞への情愛を彷彿させる「白い猫」「密通浪人」。[辻斬り]事件のその後を描き味わい深い一編「罪ほろぼし」など、シリーズ第12弾。
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その試合「負けてやれ」。秋山大治郎が義父・田沼意次から一刀流の道場を構える谷鎌之助との試合を命じられた経緯を報告すると、小兵衛は即座にそういった。鎌之助はその試合に仕官がかかっていたのである。勝負を前にして苦悩する大治郎には、まもなく初めての子が授かろうとしていた……。初孫・小太郎の命名をめぐる小兵衛の意外な一面など面白さがいよいよ冴えるシリーズ第11弾。
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「名は秋山大治郎」とわざわざ名乗って辻斬りを繰り返すずきんの侍。しかも狙われるのは、幕閣の中枢で対立する田沼意次と松平定信の家臣ばかり。意次の娘・三冬の夫である大治郎は窮地に追い込まれ、身の証を立てるため、家から一歩も出ない暮らしを余儀なくされる。小兵衛は、四谷の弥七と傘屋の徳次郎だけを頼りに必死の追跡を始めるのだが……。シリーズ初の特別長編、第10弾。
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「親の敵……」夜の闇につつまれた猿子橋のたもとで、秋山大治郎は凄まじい一刀をあびせられた。曲者はすぐに逃げ去り人違いだったことがわかるが、後日、当の人物を突き止めたところ、秋山父子と因縁浅からぬ男の醜い過去が浮かび上がってくる「待ち伏せ」。小兵衛が初めて女の肌身を抱いた、その相手との四十年後の奇妙な機縁を物語る「或る日の小兵衛」など、シリーズ第9弾。
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足軽という身分に比して強すぎる腕前を持ったがために、うとまれ、踏みにじられ、孤独においこまれた男。秋山小兵衛はその胸中を思いやり声をかけてやろうとするのだが、一足遅く、侍は狂暴な血の命ずるまま無益な殺生に走る……表題作「狂乱」。ほかに、冷酷な殺人鬼と、大治郎に受けた恩義を律儀に忘れない二つの顔をもつ男の不気味さを描く「仁三郎の顔」など、シリーズ第8弾。
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