この作品のレビュー
平均 5.0 (2件のレビュー)
-
単行本が上梓されたのが1999年、すでに一度2002年に新潮文庫が出ていますが、再文庫化ということで、ともかくあの名作『追悼の達人』が帰ってきました。
病気や死がテーマの宮澤賢治や安部公房などの文学…作品を、『病いの人間学』(1999年)で鮮やかに私たちの目の前で私たちの日常的に役立つように説いてくれたのが立川昭二でした。
あるいは追悼=死者を思って悲しみにひたるということなら、吉本隆明が『追悼私記』(1993年)という、美空ひばりや手塚治虫からミシェル・フーコーや昭和天皇への自分が書いた追悼文を集めた本を出していますが、それなら負けじと、わが鶴見俊輔も『悼詞』(2008年)というバートランド・ラッセルや高橋和己から司馬遼太郎や赤塚不二夫まで、総勢125名への半世紀にわたった全追悼文を集めた本を書いています。
この文脈でいうと、立川昭二は別として、両巨頭には申し訳ありませんが、二冊の本がどう逆立ちしても、タモリが赤塚不二夫の葬儀のときに、まるであたかも原稿をよんでいるような振りをして、まったくのノー原稿でながながと弔辞を述べたパフォーマンスにとうてい太刀打ちできません。
実は嵐山光三郎とは、その著書を読む前からのつきあいでした。といっても、実際に知っていたわけではなく、私が小学生の頃から雑誌『太陽』や『別冊太陽』を読んでいて、その編集長が彼だったこと、毎回とても興味ある特集を企画するこの人はいったいどういう人なのだろうという編集者に関心を持った最初だったこと、そこで知った本名が祐乗坊英昭(ゆうじょうぼう ひであき)という僧侶のような名前だったことなど、興味尽きない人なのでした。
本書は、追悼といっても故人を忍んで称えるばかりではない追悼もある、というところに眼をつけて書かれた本だと思います。
とかく追悼というと欠点や悪行は伏せておいて、美辞麗句を重ねたよそ行きの言葉で語られがちで、誰もひどい飲んだくれとか、とんでもない嘘つきだったとか、助平で淫乱で尻軽で不逞の輩だった、などとは、いくら今にも喉元から出そうでも、口が裂けても言わないのが人情みたいなところがあるからです。
まあ、自分のときを想像してかもしれませんが、つまり、いまあんなにひどいこの人に言わないから、私のときにもみんな言わないでねみたいな感じ。
それはともかく、現代において確固たる地位を確立している、文豪と呼ばれるまでになった作家なのに、批判される夏目漱石や罵倒される永井荷風、軽視される谷崎潤一郎という事実が面白くないわけがありまん。
きっと当人たちは言われて面白くなかったはずですが、ともかく嵐山光三郎が調べに調べつくして集めた追悼文の数々によって、その赤裸々な追悼文、死者に鞭打つこの所業、かつてのあの時代の文豪たちがいかに周りにねたまれていたかがわかるのか、それとも、はたまた、彼らがずる賢く、虎視眈眈と有名になるために他人を蹴落としてまで振舞ったのかの真相は、実際に読んでお確かめあれ!続きを読む投稿日:2011.07.19
このレビューはネタバレを含みます
今まで知らなかった明治~昭和の文人・文豪の素顔を紹介してくれる著者の文人・文豪シリーズ?はどれも楽しませてくれますが、本作も亡くなった文人に寄せられた追悼文を手掛かりに本人の素顔、そして追悼する側の感…情まで明らかにした怪作であり、労作です。長生きしてしまった人には追悼してくれる人が少ないとはなんという皮肉でしょうか。続きを読む
レビューの続きを読む投稿日:2011.08.20
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。