【感想】トランスジェンダー入門

周司あきら, 高井ゆと里 / 集英社新書
(26件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
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  • トランスを通して見えてくる、マジョリティをも含む社会課題

    トランスのみならずジェンダーについて、自分がいかに無知だったかよく分かった。そして、まだよく分かっておらずグルグルと考えている。
    トランスの人は「出生時のラベリング」と「ラベル付けられた性らしさを求められること」の2重の違和を抱えている。後者は私自身にも付きまとってきたが、シスでヘテロというマジョリティでも抱えている課題へも多く言及されていて、社会や制度の不備や直す手立てなど様々な角度からの手がかりが得られてよかった。続きを読む

    投稿日:2024.02.24

ブクログレビュー

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  • fuku0

    fuku0

    断片的な知識はあってもあまりよく知らなかったトランスジェンダーのこと。
    たとえば、FtM/MtFという表現がもはや好ましくないことは知らなかった。また、性自認と性的指向は別物だという知識はあっても、性的マイノリティというときにトランス女性のレズビアンやトランス男性のゲイという存在は想定から抜けてしまっていた。
    第二章では、ある架空のトランスの人の性別移行に当たって直面する課題が物語風に描かれ、当事者の人生を想像する助けとなる。また、トランスジェンダーの議論となると公衆浴場やスポーツといった直感的・扇情的な議論が取り上げられがちだが、著者らのいうように、当事者が人生の中で対峙する障壁に比べればそんなことはあまりに些細なことだと切に感じる。
    法的な性別変更くらい厳格な要件を満たさずとも可能となる社会を実現しなければならないと思う。
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    投稿日:2024.03.18

  • すずのき

    すずのき

    別の著者の本(たしかフェミニズム系の本だったと思う)で「差別主義者の最大の特徴は、自らが差別主義者だと自覚していないことだ」と書かれているのを読んだことがあり、自分が誰かを無意識のうちに差別することがないように、自分のよく知らないトランスジェンダーについて書かれたこの本を読んでみた。

    著者は、「トランスジェンダーのことをきちんとわかりやすく書いた本が世の中にないので自分でこの本を書いた」と述べている。
    私は専門外なのでこの本に書かれていることがどれほど正しいのかは判断できないが、少なくともこの本を読んでトランスジェンダーの方たちの気持ちを以前よりはるかに理解したり想像したりすることができるようになった。
    それはつまり、トランスジェンダーの方の立場になって考えることが(完全にではないだろうが)できるようになったということでもあると思う。

    この、別の人の立場になって考える、ということが私はとても大事だと思っている。それが世界から差別をなくす一歩になると信じたい。

    時間のない人でも、第一章だけでいいから読んでほしい。
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    投稿日:2024.03.03

  • horinagaumezo

    horinagaumezo

    トランスジェンダーとはどのような人たちなのか、性別を変えるには何をしなければならないのか、トランスジェンダーの人たちはどのような差別に苦しめられているのかなど、トランスジェンダーについて、様々なデータを用いて現状を明らかにするとともに、医療や法律をはじめその全体像をつかむことのできる本邦初の入門書と謳われている。
    LGBT理解増進法の制定等によりトランスジェンダー差別的な言論をよく目にするようになり、改めてトランスジェンダーについて知りたいと思い、本書を手に取った。そもそものトランスジェンダーの定義やトランスジェンダー差別の実態、トランス医療、性同一性障害特例法のことなど、トランスジェンダーについて理解が深まった。
    ただ、著者の主張の部分が強いように感じ、また、なぜトランスジェンダーが生まれるのか(先天的なものなのか、後天的なものなのか、生物学的にはどのように捉えられているのかなど)といった知りたかったことに触れられていない部分もあり、入門書としてもう一つと思うところもあった。
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    投稿日:2024.02.11

  • ヨッシー

    ヨッシー

    この本を読み終えて、自分の中にフィルターが一枚生まれた気がした。それは過剰な忖度だったり、厚みの分だけ他者との距離を生んでしまうものではなくて、考えや思いを口にしたり文字で発信する際に、無意識に誰かを傷つけてしまうような表現をこしとってくれるようなもの…であったらいいなと思ってます。
    正直なことを言うと、半分くらい読んだ時点ではトランスジェンダーの人たちの辛い体験や困難を想像して神妙な面持ちになりつつも、文章の端々から滲み出てくる言葉の強さに「なんかすみません…」と書き手のお二方に頭を下げたくなるような圧を感じてしまったのも事実でした。本書に出てくる表現でいうところのシスジェンダーにとって、トランスジェンダーの人たちの「生きづらさ」は想像しようと思ってもなかなか想像できないもので、でもだからこそ本書を手に取ったりして歩み寄りたい、できる範囲で理解させてほしい、と思って読み進めていったらすごい勢いで感情に訴えかけられてきて面食らうというか…。
    でも、4章の「医療と健康」を読み進めるにつれて「命に関わるレベルで困ってるなら、必死になるのも当然だな…」と思ってからは、言葉の強さがそのまま生きるための強さにも感じられて、腑に落ちたような気がしました。
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    投稿日:2024.02.01

  • 読生

    読生

    人間としてのあり方の問題だけど、生物としてのあり方の問題でもあるのだろうか。
    主に当事者の立場で書かれています。
    相当困ってる。
    社会のあり方があまりにも社会的な性の影響を受けるから。
    ただ、生物的な性との関係性についての記述はあまりないような気がする。
    何がどうなってそういうことが起こるのか。
    「生まれた時に割り当てられた性」という表現がこの本には出てきますが、そもそもなぜそういう言い方をしなければならないのか。
    染色体というものがあります。もちろんこの本でも触れられていますが、それはすごく少ない。
    そこが大事な気がするのですが、そこにはあまり触れていない。
    つまり、私たちの考えている「性」のほとんどが社会的な性であって、そこにズレが生じた場合のほとんどの問題は、社会的な性の問題であるということなのでしょうか。
    この辺り私もうまく理解できているか分かりません。
    本能というものもあります。
    性自認が生まれた時に割り当てられた性とズレてしまった人は、つまりその本能もズレているのだろうかと。
    ただ、その「本能」自体が社会的な性なのかもしれない、そうするとこれはもう人間だけの問題ではなくなるのだけど…。
    「なぜズレが起こるのか、なぜズレがズレであると判断されるのか」
    その辺りがよく理解できていないのです。
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    投稿日:2024.01.02

  • mayuharu21

    mayuharu21


    性同一性障害ということばは誤り。「障害」ではない。
    ジェンダーアイデンティと性自認と性同一性は同義。

    そもそもこのことからしてわかっていない「知識人」が
    多数いるのではないか。日本に。
    「知識人」としたのは、政治家に対する皮肉だ。
    特に自民党の一部。

    この新書は、トランスジェンダーにとって、
    この日本がいかに生きづらい国であるかを綴っている。

    トランスジェンダーは人口の1%もいない、という。
    出生時に割り当てられた性と、ジェンダーアイデンティティが異なる人。
    従来はこれらの人々は「いないもの」にされていた。
    それこそ「障害」「異常」とされていた。
    しかし時代は変わり、少数派を尊重することが当たり前の世の中になってきた。

    考えてみれば、以前は、そして今も、左利き、すら差別されてきた。
    それは道具に代表されよう。
    はさみ、スープをすくうお玉、自動改札機、、、
    10%いる左利きですら不便な世の中。
    様々な技術でようやく改善されつつある、まだその途上。

    ましてや1%もいないトランスジェンダー。
    「効率化」からすれば無視したくなる、というのも理解できなくもない。
    しかし、
    トランスジェンダーを認めないときの事例はいつも
    「トイレはどうする」
    「銭湯はどうする」
    ばかり。
    既に欧米では男女トイレを区別しない国も出ているという。
    銭湯は、、今日日銭湯を日常的に利用する日本人がどれだけいるというのか。
    問題のすりかえ。
    些細なことを咎め、本質的なトランスジェンダーの生きづらさに向き合わない。

    なんて偉そうなことを言うが、私もつい最近まで、
    LGBTのうちT、トランスジェンダーは理解できない、と言っていた。
    なぜ性転換手術(このことばもいまや使わないそうだ)をしてまで姓を換えるのか、と。
    今はそれが誤った考えだとわかる。
    中には好んで体にメスを入れる人もいるかもしれないが、
    大半の人は、生きづらさから逃れるためにやむを得ずに手術を選んでいるのだ。
    そもそも法律がそれを強いている。
    生殖能力が無くならなければ戸籍上の性別を変えてはいけないと。
    それは「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」
    名称だけでもアウト。2003年成立時点ではやむを得ないとしても速やかに変更すべき。
    内容もだ。
    要件は
    一 十八歳以上であること。
    二 現に婚姻をしていないこと。
    三 現に未成年の子がいないこと。
    四 生殖腺せんがないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
    五 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。

    この四が憲法違反であると最高裁の判決が2023/10に出た。

    世の中は確実に変わってきている。
    変わらないのは自民党の一部。
    いや、もっといえば日本の官僚制度だろう。
    明治維新で作られた薩長政権の考えは敗戦を経ても変わっていない。
    戸籍がその最たるもの。たかだか150年の歴史、変えればいいのだ。
    廃止すればいいのだ。そのためならマイナンバー義務化も理解されよう。
    ・・・そもそもカードじゃないけどね、今の時代。

    色々絡まる。
    キックバックの安倍派を干すことで自民が割れれば、今の官僚制度も変わるのか?
    トランスジェンダーなどマイノリティに目を向けた国になるのか。
    いずれにしても多数派が少数派を切り捨て、効率化を求める時代ではないのだ。
    それが通用しないことはこの30年で誰しもわかっているはず。
    変えねば。変わらねば。

    続きを読む

    投稿日:2023.12.13

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