【感想】神さまのいうとおり

谷瑞恵 / 幻冬舎文庫
(15件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
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  • 非科学的でも信じちゃう人多いはず

    2022年中学入試において大妻、香蘭、栄東、城北、ラ・サールなど多くの学校で出題された。田舎に昔から伝わるおまじない、言い伝え、風習など科学的には迷信だとわかっていても、結構受け入れてしまうのが現代人の不思議なところ。主人公友梨のひいおばあちゃんセイと人形屋敷のオババと呼ばれる発子の二人は、もはやおまじないを自在に操る巫女のような存在。二人の言うことは非科学的なのに、なんか妙に説得力がある。私達の多くの悩みを解決する糸口は、古き良き考えの中にあるのかもしれない。探し物が見つかるおまじないはぜひ会得したい。続きを読む

    投稿日:2024.05.21

ブクログレビュー

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  • ひるあんどん

    ひるあんどん

    橋の下で拾った子、これたまに見かける親が子供に言う言葉、今は虐待と言われてしまう?でも本当は子供の無事な成長を祈っての言葉。このほかにも古くから伝わるおまじないや言い伝え、その意味。このような言葉には人々の知恵や願いが込められているんですね。続きを読む

    投稿日:2024.05.18

  • aquamarine

    aquamarine

    このレビューはネタバレを含みます

    「会社を辞めて農業をしたい」
    父親が突然宣言し、曾祖母の暮らす田舎に引っ越して住むことになった友梨。主夫となった父親や同級生との関係に悩む友梨に曾祖母が教えてくれたのは、絡まった糸をほどくおまじない。

    代々伝わる昔からの言い伝えやおまじない・風習が物語に出てきます。
    そんな言い伝えやおまじない・風習には「神さま」がいて、「神さまのいうとおり」にすると良いことがあったり、気持ちが楽になったりすることがあります。

    この本の紹介文にもあるように、忘れかけていた大切なことを思い出させてくれる優しく不思議な物語です。

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    投稿日:2024.05.06

  • mui-mui

    mui-mui

    キリスト教や神道みたいなきっちりとしたいわゆる宗教ではなく、もっとゆるい意味での神さまっていうのは、かつての日本には確かにいたし、それは今にも繋がっているのかもしれない。そんなゆるく存在する神さまや、ともすれば迷信とも思えるおまじないなんかが、とんがってすり切れた主人公たちをゆっくり癒していく。そんなお話です。続きを読む

    投稿日:2024.04.23

  • さてさて

    さてさて

    あなたは、昔から伝わる”風習や言い伝え、おまじない”を信じているでしょうか?

    『トイレ掃除すると安産になるとか、乳歯が抜けたら屋根へ投げろとか、新しい靴を夜に履くな』などなど、この国には数多の”風習や言い伝え、おまじない”が存在します。地域によって微妙に異なることもあるとは言え、そんな言葉の数々を聞いても私たちが違和感を抱くことはありません。

    かく言う私も『乳歯が抜けたら屋根へ投げろ』と言われて何の疑問を抱くことなく投げた過去を持つ人間です。改めて考えると何とも不思議です。理由もわからないのに、また、その効果のほども明らかでないにも関わらず、何も考えずに付き従ってしまう私たち。グローバルな世の中になって、今度はそんな私たちこそ不思議がられるそんな未来が来るのかも知れません。

    さてここに、『ものもらいはうつらないわよ』、『じゃあどうして、ものもらいって言うの』という疑問の先にそんな言葉の意味を日常に落とし込んでいく物語があります。この言葉、聞いたことがある!知っている!という”風習や言い伝え、おまじない”が次々登場するこの作品。そんな言葉を説得力ある物語の中に見るこの作品。そしてそれは、そんな言葉の数々の先に”小さな「神さま」の存在を感じる”物語です。
    
    『熱を出すと、いつも客間に寝かされた』と、『小さかったころ、母の実家でもある田舎の家』でのことを思い出すのは主人公の吉住由梨(よしずみ ゆうり)。『おまえはね、本当はうちの子じゃないんだよ。橋の下で泣いてたから拾ってきたんだ』と『ひいおばあちゃん』に唐突に言われた由梨。その言葉が『胸に引っかか』る由梨は『熱が下がったあと』『念のため』に父母に訊くも『何バカなこと言ってんの』、『友梨のお産は大変だったんだよ』と一蹴されます。『やっぱり捨て子だなんてあり得ないという結論』の一方で『どうしてひいおばあちゃんは、そんなことを言ったのだろう』と思う由梨。そんな由梨が過去を思い出したのは、一家で、『ひいおばあちゃんの家で暮らすことになったから』でした。父が仕事を辞め、『今度は農業をやりたいと言い出し』た先に、田畑を持つ『ひいおばあちゃんの家に引っ越すことにな』った由梨一家。そんなある日、通学途中の橋を通りかかった時、『十年前にも、この橋へ来たことがある』、『自分が捨てられていたという場所だろうかと見に来た』と思い出した由梨。そんな時『由梨ちゃん、何してんの?』と『地元の高校に通う佐南桃枝』に話しかけられます。昔話をする中に『ねえ、あのころ、いっしょに遊んでた子がいなくなったことなかった?』と訊く由梨に『そんなことあった?』と返す桃枝。そして、成り行きで『橋の下で拾ってきた子だ』と『ひいおばあちゃんに言われた』ことを話す由梨。それに、『近所のおばあちゃんに、おまじないみたいなものだってのも聞いたことある』と返す桃枝ですがその意味はわからない様子。『たぶん、エイトくん、って名前だった。いなくなった子…』と由梨が語ると『エイトくん?和島瑛人(わじま えいと)?その子なら、いるよ。隣町の高校に通ってる』と返す桃枝。『だったら、いなくなったのは誰なのだろう』と思う由梨。名前を知った由梨は家を調べると瑛人に会いに行きます。『わたしのこと、おぼえてる?』と訊く由梨に『いっしょに、人形屋敷へ行っただろう?本当の親をさがしてるとき』と語る瑛人。そんな瑛人は『ずっと、友梨ちゃんがいなくなったと思ってた』と言います。一方の由梨は『近所の人たちが、総出で誰かをさがしてたのを見たような気がするし、瑛人くんをさがしてたんだって思い込んでた』と語ります。そんな二人は議論の末に一つの考えに行き着きます。『本当に誰もいなくなったりしてないのかな』、『もうひとり、いっしょにいたのかもしれない』、『連れ去られた子はどうなったんだろ。このあたりで事件にはなってないのよね?』、『あの子は、本当にいたのかな』とやりとりする中に『現実と非現実と、自分たちの周囲には二つの世界があって、そこを行き来したかのような、奇妙な感覚』を感じる由梨。そして二人は『人形屋敷、まだあるの?』、『行ってみる?』という結論の中、瑛人の自転車に二人乗りして橋へと向かいます。そして、辿り着いた橋の先、『生い茂る草に囲まれて一軒家が立ってい』るのが見えます。『近くまで行ってみる?』と自転車を降りて進む二人。そんな中、『僕らは、本当の両親をさがしてた。だったら、その子もそうだったんだ』と言う瑛人に、『それでいっしょに、川原へ行ったんだっけ?』と返す由梨は、『口にすれば、それが正しい記憶になっていく。瑛人の記憶も混ざり合うと、もう、本当の出来事なのか空想なのか、区別がつかない』と思います。そんな由梨が抱く過去への疑問が解き明かされていく物語が描かれていきます…という最初の短編〈第一話 橋の下の幼なじみ〉。昔から伝わる”風習や言い伝え、おまじない”に光を当てるこな作品のあり様を示す好編でした。

    “代々伝わる暮らしの知恵、忘れかけていた大切なことを思い出させてくれる物語”と内容紹介にうたわれるこの作品。六つの短編が連作短編を構成しながら展開していきます。そんな作品が注目するのは、昔から伝わる”風習や言い伝え、おまじない”の数々です。おそらく国内だけでなく世界各地にも同じようなものはあるのだろうと思いますが、少なくともこの国には、これに類するものはそれこそ山のようにあります。例えばこんな『言い伝え』を聞いたことはないでしょうか?

     『トイレ掃除すると安産になるとか、乳歯が抜けたら屋根へ投げろとか、新しい靴を夜に履くなとか』

    どうでしょうか?ここに挙げられた三つのうち、私は『トイレ…』以外はすぐにピンときました。というより、どうして?と思いつつも乳歯を屋根に放り投げましたし、そもそも今でも新しい靴を買ってきても夜には履きません(笑)。でも、どうして?と訊かれても私は共に答えることができません。改めて思うと全くもって意味不明な事ごとです。『言い伝え』とは考えれば考えるほどにこう言った意味不明なものが多いように思います。そして、この物語では六つの短編それぞれにおいて、そんな意味不明な事ごとを上手く物語に絡めながら展開していきます。では、もう少し具体的に見てみましょう。これもご存知の方が多そうに思われる〈第二話 縁側の縁〉で登場する『言い伝え』です。

     『どうして花嫁は、玄関ではなく縁側から出たのだろう』。

    〈第二話〉で主人公を務めるのは〈第一話〉で主人公を務めた吉住由梨の母親の遼子です。集落のある家の前を通った時に偶然に『家で着付けして出ていく』『白無垢の花嫁』の姿を見かけた遼子は幼き日に『祖母に連れられて、近所の』家の庭で『縁側から出てくる』花嫁を見たことを思い出します。家へと帰り祖母にそのことを訊いた遼子。

     『出戻ってこないようにってことだよ』、『お葬式のときも、縁側から出棺するからね』

    そんな風に答える祖母。私は花嫁が縁側から出るのを見たことはないですが、『お葬式のとき』に縁側から出棺される様子は見たことがあります。何も考えずにそういうものとその光景を受け入れてしまいましたがよくよく考えると意味不明です。『出戻ってこないように』という説明は分かるようで今ひとつ意味不明です。物語はそんなモヤモヤした思いを分かりやすく補足してくれます。

     『縁側は家の縁、開け放されてても正式な出入り口じゃないからね。道につながってないんだから、一旦そこから出ていったら、ちゃんと戻れるかどうかわからない。だから、死んだ人の場合戻って来たりしないように、縁側から出すんだよ。ちゃんとあの世へ行けるようにね』

    『花嫁』が『出戻ってこないように』という意味合い以上に、この『出棺』のイメージは豊かだと思います。物語はそんな『縁側』=『境界』という意味合いの先に遼子の日常に起こる出来事に上手く重ね合わせながら展開していきます。日常を生きていく中でこのような事ごとは数多ある一方でその理由について気に留めることのない私たち。この作品はそんな事ごとの意味合いに新鮮な発見をもたらしてくれるもの、なかなかに目の付け所の鋭い物語だと思いました。

    では、そんな六つの短編の中から私が特に気に入った三つの短編についてご紹介しましょう。

     ・〈第二話 縁側の縁〉: 集落の家から『白無垢の花嫁』が出てくるのを見た主人公の遼子は幼い頃に『花嫁』が縁側から出たことを思い出し、『どうして花嫁は、玄関ではなく縁側から出たのだろう』と思います。そんな遼子は『かつての同級生、香代』と久々に再会し愚痴をこぼします。そんな時、香代の電話が鳴り『あ、直史くん?』と話す香代に動揺する遼子。医者になったという直史は遼子が高校時代に付き合っていた相手でした。『離婚して、小学生』の子供と暮らしている話す香代。まもなくそんな直史がやって来ると聞いて『幻滅したくないでしょ、お互いに』と慌てて立ち去ろうとする遼子。しかし『車に乗』る際に出会ってしまった二人。そして会話する中に別れた妻が『縁側から出ていったんだよな』と語る直史…。

     ・〈第四話 絡まりほどける〉: 学校帰り『駅前の書店』の『手芸本のコーナー』で中学のとき『一番仲がよかった立花芽依とばったり会った由梨は、成り行き上、手芸の話をします。そして、別日に家へとやってきた芽依という中に『さがし物』をするひいおばあちゃんの姿がありました。『糸切りばさみが見当たらなくてね』と言われ、『わたしがさがすよ』と返す由梨。そんな由梨に『おまじないをやってみるよ』と言う『ひいおばあちゃんは正座し、目を閉じて両手を合わせ』ると『清水の音羽の滝は尽きるとも~、失せたるハサミの出でぬことなし~』とつぶやきます。『一呼吸置』き『目をカッと見開いて、周囲をくまなく見回す』ひいおばあちゃんは『散らかった座卓の上』から『糸切りばさみ』を見つけます。『おもしろい呪文』と興味を抱く二人…。

     ・〈第五話 虫の居所〉: 『昨日の夜遅く、祖母である山田セイの家へやってきたのは』奈菜。突然訪れたこともあり、そこに『いとこである遼子の一家が住んで』いることに驚いた奈菜は、『家出の原因を話せずにいます。そんな中に『けたたましく泣き始め』た一歳の紗和をなんとか泣き止ませた奈菜は、現れた遼子に『機嫌が悪いときはもう、手に負えない』と話します。そんな奈菜は『わたしの育て方がよくないから』と夫に言われていることを遼子に話します。そして、『紗和が泣いたらうるさいって怒鳴られて』家を出たことを話す奈菜。そして、朝食の中に、『セイが紗和をじっと見て』『疳の虫がいるんだね』と言います。『あたしもよく、子供らの虫出しをしてもらったよ』と続けるセイの言葉に驚く奈菜は…。

    三つの短編を取り上げてみましたが、それぞれ、『花嫁は、玄関ではなく縁側から出た』、『清水の音羽の滝は尽きるとも~、失せたるハサミの出でぬことなし~』、そして『疳の虫』という昔から伝わる”風習や言い伝え、おまじない”が物語に提示され、その言葉の意味を考えていく中にその言葉に納得させられる物語が展開していきます。一方で、そのような言葉が登場する六つの短編に共通して登場する言葉があります。それこそが書名にも含まれる『神さま』です。『子供は、神さまのもの?』、『ねえ、神さまって何なの?』、そして『ひいおばあちゃんによると、どこもかしこも神さまだらけよ』と主に由梨の言葉の中に登場する『神さま』。〈解説〉の藤田香織さんが書かれていらっしゃる通り、私たちのこの国は、宗教というものに極めて希薄な人が多いように思います。しかし、その一方で『日本には八百万の神がいるともよくいわれ』ることからも分かるように、『神頼み』をしたことのない方はいらっしゃらないと思います。ここが他の国々と大きく異なるこの国ならではの信仰の形なのだと思いますが、この作品で光が当たる昔から伝わる”風習や言い伝え、おまじない”というものはそんな考え方に極めて相性が良いものなのだと改めて思いました。何か困ったことがあると、『神頼み』をする私たち。一方でそんな『神頼み』をする先の対象が漠然とこの世の至る所に存在すると信じているからこそ、昔から伝わる”風習や言い伝え、おまじない”に何かしらの畏怖や敬意の感情を抱きます。そして、そういった事ごとが主に口伝えによって連綿と受け継がれていく、それが私たちの日常なのだと思います。この作品では、父親が会社を辞め、農業を始めることになった事で結果的にひいおばあちゃんと暮らすことになった由梨の家族の姿が合わせて描かれていきます。そこには、世の中に当たり前にありそうな関係性、父親を穢れたものと見る娘を中心に見る家族の姿、そしてそんな娘が初めて抱く恋心とその展開など、決して突飛ではない一つの家族の物語が土台として描かれてもいきます。そう、この作品では、家族の当たり前の日常の中に、”風習や言い伝え、おまじない”を自然に受け止め、自然に引き継がれていく様が描かれていたのだと思いました。

     『ひいおばあちゃんが知っている、古くて忘れかけられているいろんなことを知るたびに、友梨は新鮮な驚きを感じている。とても貴重なものに思えるのだ』。

    父親が会社を辞めたことをきっかけに、ひいおばあちゃんとの暮らしを始めた家族四人の姿を描いたこの作品。そこには、ひいおばあちゃんが語る昔からの”風習や言い伝え、おまじない”に接していくひ孫の由梨が感じる新鮮な思いを読者も体感する物語が描かれていました。普段疑問に思うこともない”風習や言い伝え、おまじない”に改めて感じ入るこの作品。この国の『神さま』という存在の独特な立ち位置を思うこの作品。

    『古いものを残していくって難しいよね』とつぶやく由梨の言葉に、私たちがこの先も残すべき大切なことに思いを馳せる、そんな作品でした。
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    投稿日:2024.04.10

  • dende_bookshelf

    dende_bookshelf

    おまじないとか占いとか、あまり信じないたちだけど、昔からの言い伝えとか、おまじないとか、瑛人くんが友梨に教えた「結び目理論」の話のように、現代の科学で根拠のようなものがちゃんと説明できるものもあるのかも。

    解説にも書かれていた「どちらにしようかな、神様のいうとおり」だったり、人の中にすむ“虫”だったり、言霊だったり、今を生きている自分にとっても案外身近で、信じるとも信じなくとも、時に委ねてみることで気が楽になったり、上手くいったりするのかもなぁ。
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    投稿日:2024.03.23

  • m.cafe

    m.cafe

    お父さんが仕事を辞めて農業をやりたいと言い出したので、お母さんの実家に引っ越して、そこでひとりで暮らしていたひいおばあちゃんと一緒に住むことになった友梨。
    友梨は幼い頃遊んだ田舎の友人たちとすぐにうちとけ、ひいおばあちゃんから不思議な言い伝えを聞かされる。

    専業主夫となった父に、いまひとつ寄り添えないまま過ごしている友梨たち家族だけれど、ひいおばあちゃんがそっと教えてくれるおまじないや風習を聞くと、しだいに心が和んでいきます。
    窓の外には田畑が広がり、川が流れ、稲荷神社もある、そんなのどかな環境の中で、縁側のある日本家屋で暮らし始めた吉住家の人たちが、新しい場所に少しずつ馴染んで、絡まった糸がほどけるように、家族や友人との関係も良い方向に向かっていきます。

    私自身も知らなかった風習や言い伝えが出てきて、とても新鮮な気持ちになれました。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.10

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