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薬丸岳 / 幻冬舎単行本 (126件のレビュー)
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総合評価:
ABAKAHEMP
心に芽生える無数の「もしも」
ある日を境にして、それまでの日常が一変していく過程がとても丁寧に描かれている。 被害者だけでなく、彼らを取り巻く周りの人たちの心の中に、無数の”もしも”が芽生えて止まなくなる状況も、多くの人から共感…をが得られるのでは。 「もし、自分がああしていたら」「もし、彼が一つ前の列車に乗っていたら」など。 だから、通り魔事件をきっかけに揺れ動く人間模様が実に真に迫ってきて読ませるのだ。 「わたしはもう‥‥航平が知ってるわたしじゃない」と、以前とは別人のようになってしまうかもしれないと焦燥を覚える明香里。 そんな彼女を思いやり、これ以上傷つくのは見たくないと、やんわりと恋人に翻意を促す母親。 それでも以前のような笑顔が見たいと希望を捨てない航平など、家族であるからこそどんなことがあっても寄り添い続けるのだという覚悟をめぐる葛藤が切ない。 それと被害者である明香里の、退院後の心の変容も実に丹念に追っている。 最初は、母親を含め周りの家族に対して感謝で胸いっぱいの状態なのに、やがては助力の申し出を断りはじめ、ついには突き飛ばし暴言を浴びせるまでに至る。 「これ以上嫌われないうちに、家族を傷つけないうちに、ここから出て行ったほうがいいのではないか」。 トラウマで満足に夜も寝れず、万引きしてまで手に入れた酒を飲み、日中に公園の多目的トイレで一人寝入る姿など本当に痛ましい。 ただ、一部のキャラが非常に類型的なのが気になる。 複雑な深みもなく、お決まりの設定で、ある人物は主人公たちを仲違いさせるためだけ、あるいは近づけるためだけの登場にもなってしまっている。 「終」 - 読み終えて感じるのは、懐かしい昭和の日本映画のラストに近い感覚。 続きを読む
投稿日:2023.11.15
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本
通り魔殺人事件で 身も心も深い傷を追いながら、 強くならねばと、自分自身に 叱咤激励し裁判に挑む被害者。 とても感動した。ここまでは。 しかし、最後はえっ? そうなる? それに、この犯人は 母親に会…いたかっただけ? それが理由? クエスチョンの多い話でした。 ただ、この本を読んで思った。 平凡な毎日を送っていても、 いつ何が起こるかわからない。 思いは生きている内に伝えようと 続きを読む
投稿日:2024.05.05
ひらめちゃん
子どもへの虐待の連鎖のせいか、読むのに時間がかかった。 逃げるのも必要やけど、もっと周りの人に頼ってもいいんじゃないかと思う。 明香里が立ち直れたこと、小野寺のお母さんの愛情が最後にわかったのが救い…。続きを読む
投稿日:2024.04.14
つーたか
このレビューはネタバレを含みます
無差別通り魔事件の加害者、 加害者の生い立ちに興味を持ち調べる記者、 事件により命を落とした被害者 3者には幼い頃から母に虐待を受け成長したという 共通点があった。 そして、なぜある者は罪の境界を超え、 ある者は超えなかったのか、 被害者の1人 明香里が犯人への問いかけるシーンでわかったような気がする。 一生懸命、生きるということが何よりも 変えがたい大切なことだと思った。
投稿日:2024.04.13
magusa2885
この作家の作品は、今まで読んだことがなかった。面白い作品が多く、熱烈なファンも多いと聞いていたが、江戸川乱歩賞受賞者と知っていたので「推理」に重きを置いた小説が多いのだろうなと思い、ちょっと敬遠していた。推理小説は嫌いではないのだが、ここ近年は軽すぎる推理小説が多いような気がして、よほど評判の良い小説でないと読まなくなっていた。 この小説はネットを見る限り評判が良かったので、図書館で見付けた時はラッキーと思ってすぐに借りた。 読み始めて十数ページ目で事件が起きる。渋谷駅前スクランブル交差点で、若い男が20代半ばの女性に斧で襲いかかり、助けようとした中年の男性を殺し、最初の女性に十数ヶ所切りつけ、もう1人の女性にも重傷を負わせた通り魔事件。加害者は「小野寺圭一」という26才の男。動機は「誰でもよかった。」但し「自分より幸せそうな奴なら。」そして「刑務所に入りたかった。」但し「死刑は嫌だが、無期刑で。」という自分勝手なもの。勿論フィクションであるが、現実に有りそうな事件である。現に、「自分より幸せそうな奴なら」という言葉や「死刑は嫌だが、無期刑で。」という言葉こそ無いが、同じような動機を言っていた殺人犯はいた。 この小説は端的に言って、被害者である「浜村明香里」が恋人「東原航平」の助けを借りて命の恩人である「飯山晃弘」の経歴を、3流週刊誌の風俗ライター「溝口省吾」が自分と重なって見える加害者「小野寺圭一」の「真の動機」を探していく物語だ。そこには「浜村明香里」の苦しみ、悲しみが、そして「溝口省吾」の苦痛、足掻きが、色々な登場人物の感情と絡み合い、複雑な人間模様を描き表している。 この小説の本題は「怒り(いかり)」だと思える。少なくとも私にはそう感じた。世間に対する怒り。司法に対する怒り。何より自分に対する怒り。 被害者「浜村明香里」が苦しみに耐えかねて、周りの人達に向ける憎しみと苛立ち、そして自己嫌悪。何より立ち直るための「飯山晃弘」の経歴を知るたびに涌き出る加害者への怒り。フリーライター「溝口省吾」が「小野寺圭一」の経歴を記事にして示そうとした己の罪に対する弁明、その行為をしなければ生きられなかった状況になるまで放置していた世間への怒り。そして罪の境界を越えた加害者「小野寺圭一」への怒り。 読んでいる此方に「この怒り」をどう思うか?問いかけてきているような気がする。 でも気になる事が1つ、2つ。 「小野寺圭一」の母親「恵子」の言い分が気に入らない。如何なる理由があれ幼児虐待、育児放棄は許されない犯罪である。罪の境界があるとしたら、その犯罪は間違いなく小野寺圭一の言う「こちら側」のそれだ。「恵子」が責任と言うのなら「圭一」を「あちら側」に戻し「真の償い」をさせる必要が有るのではないか。心から悔い改める事が出来るように。 それともう1つ。人の心や世間の評価評判に「罪の境界」など有るのか?と言うこと。他人に無関心も、見て見ない振りも、臭い物に蓋も、1つ間違えれば犯罪となる。「罪の境界線」を越えるか越えないかは、単にその時々の心や評価評判の振れ幅によるだけではないか。なら人の心や世間の評価評判に「罪の境界」など無いのではないだろうか。 まぁ色々な感想があるだろうが、読んで良かったと思える作品だった。
投稿日:2024.04.08
ハルめめ
虐待を受けて育った子供たちが皆、犯罪者になるわけではない。罪の境界を越えるのはやはり自分自身の問題。踏みとどまる力が足りなかった、と思うし、本人が悪いことは十分に承知しながらも、虐待の連鎖、負の連鎖に…、親を選べない子供たちの運命にやり切れない気持ちが残る。自分が虐待されて育ったのなら、なおさら我が子には愛情注げよ、と思うのだけれど、そんな簡単なものじゃないんだろうな。続きを読む
投稿日:2024.03.26
uu
犯罪者の生い立ちは、掘り下げて行けば、どうしても同情のような気持ちが芽生えてしまいますが、決して、犯した罪の前では、許されることではない、言い訳に過ぎないと、理解しておかないといけないと思います こ…の本を、読んで特に思いました 大事な事は、そうならないよう、辛い生活をしないといけない人達を、どう導いてあげるかだと思いました続きを読む
投稿日:2024.03.20
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