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久松達央 / 光文社新書 (22件のレビュー)
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総合評価:
ABAKAHEMP
大淘汰時代の農業の弱者の戦略とは
読んでいて無性に野菜を噛りつきたくなってくる。 著者が理想としているのは、味と香りと食感のある季節の野菜を育てること。 おやつのようなフルーティーなトマトより、酸味の強い青くさいトマトを、冬の甘い…春菊より、茎が太く齧ると香りが鼻に抜けるような春の春菊を作りたい。 チンゲンサイに間違われるほど太い株の小松菜や、大根菜ほど肉厚なルッコラなど、パッと見て分かりにくいんだけど、食べれば納得の野菜。 「ずこく美味しかった」と言う客に対して、「ありがとう」ではなく「でしょ!」とちょっと上からなところも心意気を感じさせる。 著者は畑の中で、触って匂いを感じながら齧った味の記憶を、いかにして食卓に届けるかを絶えず模索している。 直径2cmくらいの小さなピーマンを齧った時の強い苦み。 それが出荷直前の熟した時に齧るとはるかに味が立体的になっている。 収穫時期を少しズラしただけも、甘みや酸味などがどれだけ変化することか。 味だけではなく、翌日家に帰って食した時には失われてしまう濃厚な香りもある。 ニンジンの強く甘い香りも、収穫時に嗅ぐ土の匂いと混じりあっていて、胸をざわつかせるものがある。 「野菜は畑で生きている状態が100点です。それをいかに損なわずに食べる人のもとに届けるかこそが私たちの仕事」と語るように、鮮度が命。 生鮮野菜は収穫した瞬間から、味と香りが損なわれていき、特に香りは一日経つと、生きた状態の鮮烈さが失われてしまう。 そのため農園では早朝から収穫し、箱詰めまでほとんど野菜に触れないように心掛けている。 著者の農園は有機農業を実践しているが、これは農薬という武器を封じるゲームとしての有機農法に魅力を感じているからにすぎないと主張する。 日本の農薬が危険だからではなく、武器を放棄した上でいかにして病気が広がる要因をつぶしていくかにやりがいを感じているだけ。 農薬の危険性で不安を煽る一部の生産者や流通には辟易していて、業界のガンだと考えている。 有機であることをフックにしてものを売ろうなんて考えてないし、単に道具のひとつにすぎないとも思っている。 いまなら様々なセンサーを使った統合環境制御技術で、同じ目的を実現できるようになっているので、やめたって構わない。 だから、「有機で作っているのに高く売れない。秘訣はあるか」と聞かれると、因果関係が逆だと答えるようにしている。 「有機だから高く売れるのではなく、高く売れる人だから有機でできる」のだと。 有機マンセーから手作業万歳の風潮にも一刀両断。 何かと「最後は手作業なんですね。スゲー」と持て囃されるが、手作業=丁寧なものづくりではないと釘を刺す。 千葉の人参造りの名人が、著者の種まきの様子を見て一言。 「タネは何センチの深さで蒔いてる? 1~2センチ? 7ミリで揃えて」と。 それを聞いて著者は、忍者になって畑をブレなく歩くことを目指そうかとも思ったが、素直に機械を導入する。 農業機械も、一般的な栽培規模に合わせた設計になっているため、いつまでも小規模のまま我流ではいられず、償却できるだけの規模にシフトする必要があるし、標準的な最新のモジュールを学ぶ必要もある。 ・農家数が昨今激減しているが、減っているのは売上500万以下の零細農家。 農業で食っているわけではない層が退場しているだけで、売り上げ3000万以上のプロ農家層は規模を拡大している。 ・米作りは本来、スケールメリットが利きやすく、作付面積が増えれば増えるほど儲かるはず。 なのに、一定以上で頭打ちになっちゃうのは、赤字農家の退出スピードが遅いから。 おまけに高齢者がせっせと「縁故米」として無償で配ったりするから、高齢者の生き甲斐が市場を荒らす結果に。 ・農家の8割以上が赤字で、それがほぼ常態化している。 赤字でも農業が続けられているのは補助金があるから。 日本の農業はすでに、どう補助金をとってくるかを競うゲームになっており、一生懸命やっても手を抜いても一緒。 ・だから零細農家はもっと減っていい。 ただそれもカウントダウンが迫っていて、あと数年で一気に離農が進むXデーは目前だ。 しかし著者は絶滅すべきと主張しているわけではない。 皆が同じものを同じ規格で作る時代は終わったのだから、棲み分けをして、個農の皆さんは消費者の愛着にすがる「最愛戦略」にシフトしましょうと語っている。続きを読む
投稿日:2023.11.04
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puntabathe2nd
刺激的なタイトルではあるが、自身農園を運営される中で農に対する考えを記した一冊。今の農における課題やあふべきふがたが展開される。読み進めるうちに興味深く感じたのは、書かれている内容が決して農だけに当て…はまることばかりではないこと。これはビジネス書としても成立しているような印象を受ける。後半になるとよりその印象を強く受けるようになり、仕事に対する取り組み姿勢や、マネジメント論にもに通じるエッセンスが入っているように感じられた。あれ⁈これってつまるところアート思考のアプローチだよな、と思わされる一節などもあり、信じるものや想いが自身の野菜づくりや農園運営に表れている。冷静に俯瞰して事態の理解と打ち手を考える中で、ぶれない自分軸をもって動かれているのだなと感じさせられる。 農のことも理解が深まったが、それ以上に得たものがあった、いい意味で期待を裏切られた一冊。続きを読む
投稿日:2023.12.05
PONTEN design
■ Before(本の選定理由) なかなか刺激的なタイトル。JAの闇など暴いてくれるのだろうか。 ■ 気づき 農業経営者が著者の本。成功されていて、自分なりの哲学を持っている。主張が甘え農業者は去れ…!というのが、やや勿体無いように感じた。 ■ Todo 補助金やJAの仕組みの弊害も大きいのだと思う。そうした、経営としての農業の課題・展望みたいなものをもっと教えてほしい。続きを読む
投稿日:2023.10.29
komoda
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334046248
投稿日:2023.09.10
あるふれっと
面白かった。もっと減っていいという過激なタイトルだけでなく、内容も充実していた。時代は、機械化情報化近代化が進んでいるので、一人当たりの作業面積は増えていくべきだが、近代化を十分に享受できていない農家…が多すぎる。その原因は農協にある。IT革命によって農業革命は可能と期待できる。続きを読む
投稿日:2023.08.14
だにえる
現実を正確に把握する 大規模農家と同じやり方をしてはダメ 小規模なりの闘い方。 どちらにせよ、厳しい。どこも同じ。農業だけが特別では無い。
投稿日:2023.07.07
浅利
漠然と農業に興味があった。 もし何かの巡り合わせがあったらやってみたいけど、自分から進んで農家を職業としてやるまでのチャレンジ精神もなければ、知識もスキルも経営戦略もないしなぁと思ってたけど、 やっぱ…り軽い気持ちで手を出す職業ではないと思った(笑) バイトで経験してみたり、趣味で家庭菜園レベルが私の理想かなぁ。 採れたての、畑の野菜を経験してみたいなぁ。 大量生産、スーパーで売られるような規格に合った野菜としか接してないからなぁ… ものづくりに対しては強い憧れがあって、 そういうロマンは農家にも詰まってるなぁと思った。 自分が美味しい、美しいと思うものを作って、その良さが分かる人に売る。 自分が仕事に求めるものはこれだ!と思った。それは農家じゃなくても。 でも残念ながら、そこまで思い入れられる何かがないから、もやもやうだうだしてるんやけど。 大規模で売れるやり方より、 小規模に狙いを定めてっていうやり方のほうが私好みで、 そういう考え方のヒントは農家に限らず得られたかな。 農家の8割がプロではない、という現実。 なんか腑に落ちた、というか納得感。 家業をなんとなく継ぐとか、都会での競争社会からの逃げとか、そんなのらりくらりじゃやっぱり稼げんよねー。 道楽ではなく職業として発展させるには、やっぱり苦労も試行錯誤も必要やし、当事者の意識改革と世間の偏った見方を正すことも必要なのね。 新規参入が甘くないと思ってたのは正解で、 事業計画ちゃんと練らんと、 始めることはできても続けることは難しそうやと感じた。 でも軽い気持ちで足を突っ込む人も多くいるんやろうなぁとも感じた。 人口が減ってくこれからの未来、 やっぱり個として何ができるのかをしっかりと考えていかないとなぁ。 農家の世界もしっかりとした競争の中で、より良いものづくりが、より良いマーケットが出来ていきますように。 続きを読む
投稿日:2023.05.29
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