【感想】5000日後の世界

ケヴィン・ケリー, 大野和基, 服部桂 / PHP新書
(28件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
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  • AIがすべてのものを意味付ける世界

    来るべき「ミラーワールド」とはどのような世界か。

    それは、スマートグラスなどを通して覗いた現実の風景に、バーチャルの映像や文字が重ねられた世界で、これにより人間ははじめて機械を通して世界を認識し始める。
    世界中の情報はすでにインターネットによってデジタルに変換され検索可能になっている。
    身の回りのモノはIotだなんだとネットにつながっていたけれど、意味付けまでは行なわれてこなかった。

    しかし今後は、あらゆるものが、電池の入ったチップを介して電気的にモノ同士がつながるという形ではなく、意味的につながりはじめる。
    つまり、電流によってではなく意味による接続だ。

    じゃあ誰が、その意味付けを行なうかというと、AIが私の部屋を覗いて、個々のものを認識し、ブランド名や製品番号なんかを認識する。
    単に冷蔵庫の中の食品の種類や賞味期限が把握されるだけではない。
    このモノがここにあるということは、という位置づけによっても意味付けがなされる。

    いゃーん、便利というか、それって大丈夫かと心配になる。
    別に監視社会で、中央に集中的に管理されるということがではなく、意味付けをAIが行なうこと、そのものが。
    意味の持つ豊穣さが失われるのではないか、と。
    意味ってそんな簡単にラベル貼るみたいに簡素なものでもなければ、中立的なものでもないぞ、と。

    「大丈夫、大丈夫、私は楽観的です。なぜなら、テクノロジーが引き起こした問題を解決するのもテクノロジーだから。絶対にテクノロジーをやめましょうとはならなくて、必ずそれよりも優れた、より多くのテクノロジーで対処しましょうとなるんだから。
    ただ、"預言者"だなんて言われているけど、何が起こるかなんて見通せないよ。だって発明者にさえ、自分の発明品がどんな使われ方をするか予測するのは難しいんだからね。インターネットなんて、最初は図書館での検索や研究に使えると言われたのを思い出してみてよ。
    いまネットの利用用途の大部分は、ゲームとポルノでしょ。闇サイトによる無差別殺人やイジメなど、発明者の意図を超えて、こうした最下層での使われ方を見て行くことでしか、テクノロジーの進む先を見通すことはできないよ。
    しかもこうした変化は加速するだけでなく、変化の変化という連鎖まで起きている。だからいま事象に対応するために学んだ知識は、すぐに陳腐化してしまい、無用の長物になっちゃうから、我々は何度でも学び直し続ける必要がある。
    だったらあらかじめ対象を限定してしまうより、幅広く網を広げ、学び方を学ぶスキルが必要となってくるんだ」

    まあ、ざっと著者の言いたいことはこんなところで、この本もスティーブ・ピンカーに代表される「世界はより良く進歩しているし、そうなりうる」という信念に連なる著作だった。
    わかるんだけど、いまいち釈然としないものが残るというか、それでいいんだろうかという気にもさせられる。
    コラムで紹介されたアーミッシュの人たちって、最新のテクノロジーも追わず、本もろくすっぽ読んでないんだけど、いざ仲間が困っているとなったら、全力で皆が協力して助け合う。
    変化や刺激は皆無で退屈かもしれないけど、コミュニティ内の安心感が凄まじい。
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    投稿日:2022.06.04

ブクログレビュー

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  • みたらしだんご

    みたらしだんご

    ミラーワールドについてわかり易く説明。
    私の頭では理解し難いが、素晴らしい世界だと実感。
    総じて、楽感的なのは共感できる。

    投稿日:2023.12.27

  • nobu2kun

    nobu2kun

    『#5000日後の世界 すべてがAIと接続された「ミラーワールド」が訪れる』

    ほぼ日書評 Day668

    iPhoneが世に出てから…が、ちょうど5000日ほどなのだそうだ。

    通常、「年」単位で時の経過をはかる我々が、それを「日」単位に置き直すと、今日という日の大切さ、愛おしさが、いや増すということだろう。

    テクノロジーには51:49で期待を感じている。その差はすぐにわかるものではなく、時が経ち、1%の差が大きな違いになってきた時に、初めて実感できるもの。
    そうした意味でテクノロジーが実現する世界はユートピアではなく「プロトピア」(progress、進歩のプロ+topia、場所)と呼びたいものである。

    愚かな、あるいは有害なテクノロジーへの適切な対応は、それを減らす、やめにすることではなく、より多くの良いテクノロジーを考え編み出すこと。

    何かものすごい「結論」が導かれる内容ではないが、思考の幅を広げるにはオススメである。

    https://amzn.to/3Msd5Rj
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    投稿日:2023.05.14

  • Mkengar

    Mkengar

    新書でインタビュースタイルなのであっと言う間に読めました。理想を言えばケヴィン・ケリー自身が時間をかけて執筆した本を読みたかったとは思うのですが、本書からもケリーの主張が良くわかるので、その意味では良書だと思いました。率直な印象を述べると、内容自体については60~70%共感したという感じではあったものの(これは読者によって大きく違うでしょう)、議論の進め方、読者の印象に残るような語り口は本当に秀逸だと思いました。

    ケリーは5000日(約13年)という単位を一区切りに歴史を語りますが、これが記憶に残りやすい。いまから5000日前を振り返ると、SNSがよちよち歩きをし始めた時期であるという話をします。そして今後5000日の間に次のプラットフォームである「ミラーワールド」が全盛期を迎えるだろうと言うことで、彼の大きなコンセプトが提示されるわけです。ミラーワールドは、もう少しなじみのある言葉でいうとデジタルツインと言ってもよいかと思うのですが、ではミラーワールドの世界では人々の働き方はどうなるのか、企業組織あるいは新たなコラボレーション組織が生まれていくのか、といった議論が次に展開されます。「ミラーワールド」という概念自体に共感するかは別にして、このような議論展開は非常に頭に残りやすく、さすがケヴィン・ケリーという印象を持ちました。

    インタビュー本ですので、深くは記述されていませんが、確かに表紙に書かれている「すべてがAIと接続された・・・」という箇所が最も重要ではないかと感じました。すべてがAIに接続されると、経済や社会はどう見えるのか、人間の行動・価値観はどう変化するのか、どんな拒絶反応が生まれて規制が行われるのか、そのあたりは読者のみなさんがさらに想像力を膨らませてください、ということかもしれません。知的好奇心と想像力を刺激される良書でしたが、本人の執筆本ではないので星は3つとさせていただきました。
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    投稿日:2023.05.08

  • Taichi Okamoto

    Taichi Okamoto

    このレビューはネタバレを含みます

    雑誌「WIRED」を創刊した
    著者による、5,000日後の世界予測。
    5,000日=約13.6年前、
    スマホが普及し始めた。
    そこから加速度的に、指数関数的に
    爆発的に技術は進化している。
    ここからさらに5,000日後、どうなっているか。
    IBM→マイクロソフト→Google→フェイスブック、
    の次に覇者となる企業とその在り方を解説。
    ビジネスを日数でカウントすると、
    より計画的になれる。

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    投稿日:2023.04.24

  • ezamax

    ezamax

    久しぶりにケヴィン・ケリーの書籍が出たということで、楽しみに読み進める。
    ケヴィンの基本的な思考である「テクノロジーに耳を傾ければ未来がわかる」に基づき、テクノロジーの未来における変化を予測している。
    一つ一つは興味深かったが、第5章以降のケヴィンの思考と経験についての内容が面白かった。
    特異な考え方を持つ著者に学ぶことは多い。

    以下、参考になった点。
    ・テクノロジーが持つ自然の方向性
    ・どうやって学ぶかを学ぶ
    ・テクノロジーは良い面が51%、悪い面が49%
    ・イノベーションを起こしてきた人たちが世間的に最高峰を極めている時には、カオスの底にいた(カオスの縁にいて完璧な秩序にも縛られないと感じている状態が良い)
    ・人生に満足している人は「自分が何者であるか」という疑問を持っている
    ・人の仕事は、問いを投げかける、そして不確実性を扱うものになっていく
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    投稿日:2022.10.28

  • yasz

    yasz

    今年(令和4年)のGW明け頃に読んで衝撃を受けた本ですが、レビューを書くのが今になってしまいました。この本の著者の作品は初めて読むと思いますが、彼は今まで数々のことを言い当ててきた預言者のようですね。インターネット、ソーシャルメディアが、5000日毎に現れて現在の生活に変化をもたらせてきた事実をベースに、今後の5000日で「ミラーワールド」が主流となるそうです、それは「全てが人工知能(AI)と接続された世界」だそうです。

    インターネットから発展してきて今があるように、この流れは止められないのでしょうね。その一面として、今騒がれている、電動車・自動運転・メタバース等も含まれるということでしょうか。このような抽象的な概念を述べることができる、この本の著者(ケヴィン・ケリー氏)は凄いなと思いました。

    私個人的には、インターネットの前は、ワープロ・パソコンでした。タイプライターとは異なり、自分が行った作業を保存し、その後、自由に編集できるのに感動したのを覚えています。これから私たちは「ミラーワールド」に触れることで、かつて初めて触れたインターネットや、SNSを通じて気軽に多くの方と情報交換ができる別の嬉しさを知ったような経験をすることになることでしょう。5000日後(13年後頃)が楽しみですね。それまでは私も元気で、その世界を味わってみたいと思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・インターネットが商用化されてから5000日後(約13年)ソーシャルメディアという新たなプラットフォームがよちよち歩きを始めた、そして現在はその始まりからさらに5000日が経ったところである。その2つは我々の暮らしに多大な変化をもたらしている、次の5000日後には何が起きるのだろう。それは、全てのものがAI(人工知能)と接続され、デジタルと溶け合う世界で生まれるA R(拡張現実)の世界「ミラーワールド」である(p4)このプラットフォームは、働き方や政府のあり方にも大きな影響を与える。地球のどこにいても誰とでも仕事ができる世界になれば、会社とは異なる形態の組織が生まれる。バーチャルが発展すると同時に、リアルで顔を合わせることによる価値はますます高まる、そして都市は産業毎に特化する(p5)

    ・ミラーワールドの基本的な説明は、現実世界の上に重なった、その場所に関する情報のレイヤーを通して世界を見る方法、VRはゴーグルの中のバーチャルな世界だが、ARは、スマートグラスなどを通して現実世界を見る、すると、現実の風景に重なる形で、バーチャルの映像や文字が出現する(p24)三次元空間に時間の要素を加えた4Dの世界である(p26)

    ・これまでの勝者、1期はIBM(ハードウェア)、2期はマイクロソフト(OS)、3期はグーグル(検索機能)、4期はフェイスブック(ソーシャルメディア)、次の5期はまだ知られていないAR企業で、富の源泉は拡張現実である(p36)1−4期の勝者はARの世界で主導的地位に立ちたがっているが、彼らは自分の成功に囚われてしまうので成功は難しいだろう(p37)

    ・長期的な観点から、仕事と遊びの区別がなくなる、テクノロジーや富の区別ができなくなり、それが仕事であるかどうかを区別するのが難しくなる。(p53)

    ・AIがもたらす巨大な変化として、これからは「没入型コンピューティングの時代」となる、我々を取り囲む環境全てがコンピュータ化して、いわゆる「ユキビタス・コンピューティング」とも呼ばれる時代が始まりつつある。コンピュータを持ち歩いたり、置いたりするものではなく、どこにでもあるものになり、我々がコンピュータに取り囲まれ、それらが反応する世界に没入して、まるでコンピュータと生きている環境ができる(p57)

    ・多くの人が気づいていないようだが、大会社を規制すると結果的に彼らの力を強化してしまう、その結果、競合企業が戦えなくなってしまう、大会社は規制によるコストを負担できるが、小さな会社にはそれができない(p73)

    ・これまで人間用に非常に手の込んだインフラを作ってきたが、それは自動運転車用には使えない、自動運転の車が大勢を占めるまでには25年はかかるだろう、自動運転車と人間のドライバーを混在させるのが最大の障壁である(p94)

    ・5年以内に新車はほとんど電気自動車になるだろう、フォードは最も普及しているピックアップトラック(F-150)の電気自動車を販売すると発表した(p117)

    ・未来の教育の変化は3つあり、1)利用者が作るコンテンツ、2)ARやVRを使った学習、仮想世界に没入しながら空間的な要素を加味して運動感覚を働かせて、読書とは異なる脳の部分を活性化する、3)プロジェクト方式の学習、グループで何かを作る(p121)

    ・10年以内にiphoneに相当するような欧米人も含めて世界中の人達が欲しがる中国製の製品が出てくると予想する、誰もが欲しがる高品質で格安のスマートグラスを開発して、ARやデータを牛耳ることになったら、アップルのような地球規模の企業になるだろう(p132)

    ・思考を止めないためには、残りの人生の長さを年単位ではなく、日数で考えるようにする、20年は7000日余りである(p182)ほとんどの計画は思いついてからそれが終わるまでn期間は5年である(p183)

    ・これから起きるほとんどの変化は精神的なもので、我々どうしの関係性や善かの過ごし方、自分というものの捉え方や人生観、他人や色々な対象とどうか変わるかなどの意味を変えていくだろう。我々がどういう存在であるか、どうやって物事を理解するのか、科学を変化させてどのように真理を追究するかなどの点での変化である、そういう点での変化が5000日の間に起きる(p194)

    2022年5月29日読了
    2022年10月15日作成
    続きを読む

    投稿日:2022.10.15

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