【感想】Humankind 希望の歴史 上 人類が善き未来をつくるための18章

ルトガー・ブレグマン, 野中香方子 / 文春e-book
(74件のレビュー)

総合評価:

平均 4.5
40
25
3
0
0
  • 生来の善良さを素直に喜べない複雑さ

    読み物としては面白い。
    一人ひとりの脳の大きさや賢さで比べると、MacBook Airの性能しかない人類が、MacBook Proのネアンデルタール人を差し置いて生き延びることができたのは、我々の方にはWi-Fiが付いていたからだという説明など、非常にキャッチーでわかりやすい表現を多用している。
    ただ、生来の善良さを擁護するために、何人もの大物学者の著作の粗や汚点を暴きたて反証を試みる様は、どこか法廷で陪審員の心に疑念の目を植え付けようと躍起になってる弁護士に似ていて、その醜悪なやり口に鼻白む思いを感じた。

    「正直言って、わたしは当初、ミルグラムの実験のいかさまを暴くつもりだった。数ヶ月も調べれば、彼の遺産を片づけるのに十分な攻撃材料が集められるだろうと思った」。
    彼に狙い撃ちされたのは、ミルグラムの他にも、リチャード・ドーキンス、ジャレド・ダイアモンド、フィリップ・ジンバルドなど。
    スティーブン・ピンカーは『21世紀の啓蒙』の中で、自らと同じく、世界は過去より良くなっていて、今後もさらに良くなりうると考える楽観論者の同士として紹介していたほどなのに、本書の中で見事に著者の的になっている。
    十年後に、どちらの主張が忘れ去られているか、本当に興味深い。
    そもそも、アルバムのジャケットのような、ランニングシャツ姿の横顔を写した著者近影を目にした時点から、相性は良くないだろうなという予感はあったのだが...。
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    投稿日:2021.12.05

ブクログレビュー

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  • 1876806番目の読書家

    1876806番目の読書家

    人間社会は、人間の根源を悪であるとみなしたがる、ということが如実にでていた。マスコミも、人間の悪が現れるようなことを報道したがる。
    本質的な善なのかはわからないが、歴史や報道を真実して受け取るのが最善ではなさそう。
    そして人間の良い面を気持ち重視しても、良いのではないだろうか。
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    投稿日:2024.04.12

  • rafmon

    rafmon

    本著を読んでユヴァルノアハラリが価値観を変えたという位だから、新たな視点が得られるのだろうと期待して読み始めたが、期待通り。乱暴に言うと、人間の「性善説」的な本質を証明しようという試みの本。戦争の歴史を歩む利己的な存在という価値観を一変させる。

    ー 人間は本質的に利己的で攻撃的で、すぐパニックを起こすと言う根強い神話。薄いベニヤのような道徳性ということから、ベニヤ説と呼ばれもするが、真実は逆。災難が降りかかった時、爆弾が落ちてきたり、船が沈みそうになったりしたときに、人は最高の自分になる。

    『蝿の王』という小説があり、私も読んだ。しかしあれはフィクションであり、無人島で人間は憎しみ合い傷つけ合う事はない。実際に、アタ島に漂流した青年たちは、互いに助け合って生き延びた。アタ島の漂流の話はインターネットで検索すれば、当事者の顔写真つきで閲覧する事もできる。これを知っただけでも、本書を読んで良かった。

    画面操作による実験で、人間とチンパンジー、オランウータンを比較した。空間認識、計算、因果性認識を調べたが、チンパンジーやオランウータンと2歳の人間の子供ではテスト結果が変わらない。しかし、社会的学習では、人間の子供が楽勝だった。つまり、人間とは、超社会的な学習生物であり、学び、結びつき、遊ぶように生まれついた。人間だけが赤面するのは、本質的に社会的な感情表現。他人の考えを気にかけていることを示し、信頼をはぐくみ協力を可能にする。また、目を見る行為だが、人間の目には白い部分がある。他者の視線の動きを追える。更に面白かったのは、ネアンデルタール人とホモサピエンスの対決の話だが、「天才族vs模倣族」の例え話で理解ができるというもの。

    …しかし、オキシトシンの影響は、グループ内に限られる。これが人間の負の歴史を生む。下巻は、この負の歴史の真相に挑む。
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    投稿日:2024.02.28

  • tktk0720

    tktk0720

    めちゃくちゃおもしろい。
    今まで信じていた理論って何だったんだろう。
    人間不信というかいろいろなものに不信になってしまう。
    派生していろいろな本を読みたいが、巻末の注記では文献を探すのがちょっと難しいな。
    今最も読み続けたい本であり、著者です。
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    投稿日:2024.02.05

  • しお

    しお

    面白かったー!スタンフォード監獄実験に疑義が出されてるのはなんとなーく聞いてたけど、他にも聞いたことある「人間の本性、ってさ…」な「科学的」論拠をそれぞれ当時のデータ等再び見直して、実験としてどうなのか、解釈はそれで正しいか、前提として性悪説を論証したかったんじゃないか…などを見ていく。文明崩壊も暴力の人類史も読んだことがあったので、データの扱い方の検証で「えっあれはなんだったの!?」になることも。
    ただ、この本で検証されたもとの話はすっと無防備に信じて納得したのに、この本については「これを信じて本当に大丈夫かな…」の疑念が湧く。まさに文中で指摘されてる通り、「現実的」と我々が見做すのは性悪説の方なんだよな、を地でいく状態。たまたま偶然飛行機の事故が直近にあって、まさに現実が(少なくともあの件に関しては)冒頭の惑星Aの方だったのを知ってるのにね。
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    投稿日:2024.01.21

  • atsuwo3

    atsuwo3

    これは希望に満ちた本である。
    そして、真実というのはとても見えにくい事がある

    ・ほとんどの人は本質的にかなり善良だ
    ・ルソーの思想が正しいのでは?
    ・過酷な環境になると人は善良に動く
    ・本当の「蝿の王」はびっくり、本と真逆であり、とても心暖まる話だった。
    ・協調が重要
    ・「利己的な遺伝子」はホッブズ流
    ・アーレントの重厚な哲学(人間は善を装う悪に惹かれる)
    ・コミュニケーション、対決、共感、抵抗が重要
    ・人間の本性についてのわたしたちの見方が間違った方向に進みがち
    ・ジャーナリストは、扇情的な話を売るために容易に世論を操る
    ・緊急事態において、いかにわたしたちは互いを頼りにできるか 
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    投稿日:2023.12.11

  • すう

    すう

    目からウロコが落ちるとは、このような本のことだろう。
    今まで自分が「常識」として疑わなかったことが、ほとんど否定されている。しかも、そのことが新たな道を発見することにつながる。これは、全世界の人が読むべき著作である。
    日本語訳もすばらしい。
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    投稿日:2023.11.13

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