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幸村誠 / アフタヌーン (10件のレビュー)
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総合評価:
ABAKAHEMP
かたくなに剣をとらず、多弁になったトルフィン
物語は、ギリシア遠征中のトルフィンたち一向が、ヨーム戦士団の内紛に乗じたバルト海戦役に巻き込まれる展開が続くが、ますます先が見通せなくなってきた。 アシェラッドの死によって、物語の核となるトルフィン…とクヌートのパーソナリティが180度入れ替わる。 無益な戦争を終わらせ世界を変革するという最終目標を共にし、クヌート王は血と鉄で、トルフィンはそれ以外の手段で、それぞれの立場から仕事を分担していくことになった。 クヌートの場合、仮にもデンマーク王国を背負い、それまでの軟弱で心優しい性格が一変し、「共喰いをさせればいい」と冷酷非情な采配で暴力を押さえ込もうとする。 一方のトルフィンは、それまで口数も少なく、狩られる側の弱い人間を蔑み、力のみを信奉し、敵討ちの機会だけに心を支配された男が、過去を後悔し、人生を賭けて罪を償おうとする。 しかも「まだ死ぬわけにはいかない」「誰も死なせないし オレも死なない」「もっと優しい人間に 強い人間になりたい」と、打って変わって能弁に自分の心情を周りに打ち明ける。 改心すればここまで変わるものかと唖然とするが、案の定、急に堅気になりますと言ったって、周りがほっといてくれない。 「どうせ羊の群れの中では暮らせない」とばかりに、バルト海戦役になかば無理矢理トルフィンを引きずり込む。 それでも、ヴィンランドという未開の新天地に、戦争と奴隷制のない平和な国をつくるという見果てぬ夢のため、怒りを抑え、獲物もとらず空手で、向かってくる敵に対峙していく。 友を助けるため、仕方なくどうしても人を殺めなければならない状況も起こりそうだが、「戦争だから仕方がないとは言わせない」と、狩人ヒルドが常にトルフィンの背後から彼の変心に目を光らせる。 物語が、暴力の否定に向かうのは、当然だし自然の流れだとは思うのだが、せっかく「戦いたい時に戦い 死にたい時に死ぬ」と豪語するヴァイキングたちが跋扈する歴史を甦らせたのに、当時のリアリティから離れ、奇麗事やおためごかしに終始しては、つまらない。 当時は、並外れて衝動的で、苛酷なほど不条理で、辛酸を極めた暴力の時代だ。 いまでは不道徳で野蛮で残酷だと見なされる決闘が、英雄的で勇ましく、すべてを浄化する神聖なものと考えられた時代である。 なのにトルフィンは、丸腰の彼に獲物を差し出す相手に対し、諭し、逃げ出し、それでも向かってくれば、仕方なく素手で戦いを挑む。 徹底的に非暴力を貫き、誰も傷つけたくないと「生きて償うための時間を」と躊躇なくひれ伏すが、都合よく亡霊が現れて、相手の怒りが静まる展開をこの先も続けるわけにはいくまい。 ガルムという新キャラも用意されているが、「オラ、強い奴をみるとワクワクするだ」と、悟空ばりの登場人物で、戦いはすでに神聖なものというより、スポーツと化している。 しかもトルフィンと同じ属性の、俊敏・運動神経抜群キャラなので、トルケルと戦わせてみたものの、同じことの繰り返しになりそうなので、戦いのシーンは大幅にカットされ、痛み分けとする有り様。 決闘や暴力を賛美するわけではないが、少なくともそれらの正当性が信じられた時代を描いているのだから、あまりに現代の価値観で主人公を縛っては、物語のダイナミズムがますます失われかねない。 かつてオスカー・ワイルドがいみじくも予言した通り、「戦争は邪悪なものと見なされる限り、その魅力はいつまでも消えない。だが野蛮ものと見下されれば人心は離れていくだろう」から、もう少し物語の方向性を修正してもらいたい。続きを読む
投稿日:2018.02.04
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小豆
トルケルが滅茶苦茶すぎてフローキに同情してしまった。 トルフィンは苦労すればするほど面白い。ヒルドさんに圧を掛けられるシーンも笑うところではないのだろうけど笑ってしまった。
投稿日:2023.04.06
sudah makan?
トルフィン、どうやったら戦わずにやり過ごせるんでしょう? いつも楽しく読んでます。 重厚な物語の幹がある一方で、キャラクター其々もとても魅力的で素晴らしい。
投稿日:2019.03.21
あさひ
このレビューはネタバレを含みます
戦時は役に立っても、平時は厄介者の傭兵団。 強い=偉いが染み込んでる連中に転職を勧めても、職業訓練を施しても、まぁ無駄だろう。 嬉々として共食いをする奴らの戦に巻き込まれたトルフィン。 殺さずの誓いは守れるのか??
投稿日:2018.05.05
clamamus
混迷を極めるヨルムボルグでの戦争にトルケルが現れた20巻である。 ガルムが人質に奪っていった仲間を取り戻すためには、誰かを殺さないといけない。その覚悟を引き受けながら、その道に堕ちることを許さないヒルドの監視との間にトルフィンは揺れている。 戦地ではレイフとエイナルが敵方のキーパーソンであるバルドル(トルケルの父の暗殺を命じた陰謀家フローキの孫息子)の助けによって脱出に成功した一方、巡り合わせの悪さでグズリーズは脱出に失敗し、ヨムスボルグの砦に取り残された。レイフもまた戦場で矢を受けてしまう。 トルケルとの一騎打ちに満足したガルムは物語から一度姿を消し、トルケルに見込まれたシグルドは鎖使いとして戦地に参加し、トルケルは頭髪と髭をチリチリのパーマにする。 自体は混迷の一途をたどっている。そこにトルケルが現れた、という形である。 いまだヨルムボルグの情勢は読めず、このエピソードがあと何巻を費やすのかも見えない暗中模索の状態である。 物語は少しずつ前進しているが、あくまで間の巻としてここでは星四つ半相当と評価している。
投稿日:2018.03.14
北風
シグやんがギャグ担当になっている。それだけど、何でも無い人たちがちょっとしたエピソードをつかの間見せてあっという間に死んでいく。死んで行くったら死んでいく。小さなバルドルも板挟みされているけれど、トル…フィンはもっと板挟みされてる。なんか収集着かなくなってるけれど、どこでどう転がって収まるのか、おさまらないのか、どーなるんだろう?続きを読む
投稿日:2018.01.01
ヤマスカ
海賊漫画、ついに20巻の大台に。 切っても切れない逃げても逃げられない過去の因縁が集約しているー、という感じではあるので、あー、なんでそうなルノー、と言う展開もなんとか耐えられる。
投稿日:2017.11.27
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