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大和和紀 / デザート (1件のレビュー)
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総合評価:
てげてげ読書ノート
恋とユーモア、クライマックスを見逃すな!
突然ですが、新装版6巻です。 いやあ、「はいからさんが通る」面白いですよね。でも、5巻あたりから、当初と空気が変わってきたのを感じませんか。「牢名主さんとかはちょっとな…」と、読み続けるか迷う人もい…るかもしれません。 しかし、ここで止めてしまうのはもったいない!ここからが「花の東京大ロマン」のクライマックスです。 では、「はいからさん」終盤のポイントを整理していきましょう。 (1)職業婦人の輝きと挫折 「はいからさん」のアイコンは、矢がすりの着物と袴でリボンを結び、自転車に乗る女学生姿。 しかしこの6巻までくると、紅緒も髪を切って洋装です。給料日には札束を数え、友人と会えば居酒屋でくいっと(げへへ)。職業婦人ぶりがすっかり板についています。 親にも老いが見え始め、夢ではなく生活のために働く様子が描かれます。 物語冒頭、強い印象を与えた環。しかしその後は活躍が見られませんね。 家を支える役割がある紅緒はいつも楽しく働いているのに、自由なはずの環はなにやら複雑そう。流行の服を着こなしつつ、思う通りにいかない不満も漏れてきます。恋愛でも素直になれません。 しかし彼女は後に、自分の道を見つけます。とはいえこの道、昭和の日本がたどった運命を知っていると…。格好よく生きるのは大変ですね。 (2)どちらを選ぶ?少尉と編集長 肝心の、紅緒の恋はどうなるのでしょうか。 少尉には、特定の生き方へのこだわりはありません。成り行きで外国の侯爵になるなど、変幻自在に周囲の状況に適応することが、彼の個性なのです。 軍人という、組織の中で命令に従い、仲間とともに勇敢に戦うキャリアは、彼の天職といえるでしょう。 状況に流されやすく、ラリサなど現在目の前にいる人に善くしてしまうため、大金を稼いで実家を建て直すような甲斐性は期待できません。 しかし、即断即決、臨機応変に対応する力は、突発事態に頼りになります。やっぱり軍人さんですね。 また、周囲の人を必ず笑顔にする、明るい性格も魅力です。 編集長は、自分の世界をもつ男です。あの顔で、会社に付けた名前が「冗談社」!ただ者ではありません。 彼は安定した自己像を基盤に、相手をよく観察して、しっかり見守ってくれます。最初は冷たいように見えますが、それは真剣に深く状況を見定めているから。いったん心を決めると、苦労して築いたものを全て投げ出し、救いの手を差しのべるような激しいところもあります。 不器用で、少尉のような小回りは効きませんが、変転する時代の中で、皆の苦境をひっくり返す大変なパワーを振るいます。紅緒と共にライバルまで助けてしまうのは、人がいいというか…。器の大きな人ですね。 彼は笑うより笑わせるのが得意な人。どちらかといえば、伴侶になってからの後半生で真価が発揮されるタイプです。本作は「初恋が実るまで」のストーリーなので、二番手になるのも仕方がないといえるでしょう。しかしそれでも、実力は大したもの。一度は紅緒に…これは6巻を読んでのお楽しみです! 少尉と編集長、どちらを選ぶのが正解ということはありません。 若き日の一度きりの恋の奇跡を信ずるなら少尉と、結ばれた後もじっくり関係を深めていきたいなら編集長と。どちらも幸せな人生でしょう。 このため本作は、読者の年齢が上がっても、新鮮な楽しみが味わえる作品となっています。 資料によると紅緒は獅子座、少尉魚座、編集長蠍座、蘭丸乙女座だとか。これはぴったり!よく出来てますねー。 (3)最後までズッコケにはこだわります 「はいからさん」では、徹底して「シリアスの直後にズッコケ」を貫いており、ユーモアも魅力の一つです。 特にこの6巻では、大正時代の東京を描くうえで、避けて通れない大イベントが発生します。その「瞬間、各芸人たちは!」って、なんじゃこのコラムは!? これぞ「はいからさん」の冗談社精神ですね。大好き!! 大団円の最終話は7巻に収録されています(7巻後半~8巻は、番外編や資料集)。最後まで、お見逃しのないように!続きを読む
投稿日:2017.12.03
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