【感想】日本人のための日本語文法入門

原沢伊都夫 / 講談社現代新書
(31件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
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2
1
0
  • 勉強になりました

    外国人としての感想はこの本は本当に助かります。テキストで教わっていない日本語のニュアンスがいっぱいありますから。絶対おすすめしたいです。

    投稿日:2018.04.26

ブクログレビュー

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  • ますく555

    ますく555

    「日本語文法入門」だなんて、義務教育時代の国語授業を学び直す内容なのだろうな、と簡単に推測して買った本です。しかしながら、どうやらそういう中身ではなかったのでした。「どうやら」なんて言い方をするのは、僕が義務教育時代に、どうやって文法を教わったのかを、ほとんど覚えていないからです。「連用形」だとか「体言止め」だとかといった言葉は覚えていますが、文法といえば、どちらかというと英語文法のほうが頭に残っているほうです。

    さて。
    これまでみんなが国語で習ってきたものって「学校文法」と呼ばれていて、「日本語文法」とは区別されている、とあります。それでもって、日本語文法のほうが正しい、と。なぜか。学校文法は古文と現代語との連続性を考え、あえて論理的矛盾に目を瞑り、言語感覚を養っていくようなところがあるようです。日本語文法は、まるで外国語の仕組みを研究するように日本語を扱い、どういった論理で言語が成り立っているかを学術的に研究したうえでの論理的文法解読。

    日本語文章は、「主語述語と装飾する言葉たち」というとらえ方ではなく、「述語とその他の装飾する言葉たち」というとらえ方がほんとう。述語以外は文の成分になります。主語は重要ではないのでした。述語こそが重要なのです。

    初めて知った言語学の言葉に「ボイス」「アスペクト」「テンス」「ムード」がありました。とくに「ボイス」を見たときの日本語の見え方がとても面白いです。「ボイス」とは、受動文、使役文などといった用法をいいます。そんな、受身形、使役形のほか、もうひとつ重要なものに「やりもらい形」があり、これこそ日本語の特徴的な形であり、そして、この言語を使用する日本人の心に表したり影響を与えたりしているわけでした。

    「やりもらい形」は「~~してあげた」「~~してくれる」「~~してもらった」といった使い方がそれにあたります。たとえば、「教える」という言葉をあてはめて、「A君がB君に日本語を教えてあげた」「A君が私に日本語を教えてくれた」「B君がA君から日本語を教えてもらった」という三つの分があるします。「やりもらい形」を外すと、「A君がB君に日本語教えた」「A君が私に日本語を教えた」「B君がA君から日本語を教わった」ととてもシンプルな形になるのですが、日本人はそこに物足りなさを感じやすいといいます。なぜか。

    「やりもらい形」は日本人の思いやりの心が込められているからだと著者は書いています。さっきの三つの文章に戻ります。どう思いやりが込められているかというと、「A君がB君に日本語を教えてあげた(A君がB君に日本語を教えるという思いやりをあげた)」「A君が私に日本語を教えてくれた(A君が私に日本語を教えるという思いやりをくれた)」「B君がA君から日本語を教えてもらった(B君がA君から日本語を教えるという思いやりをもらった)」という以上の例文のようになるのでした。著者も、なんともまどろっこしいのだけど、どうしてこういう表現をするのか、と問いかけつつ、つづけて解説をしてくれます。

    日本人は和を尊重します。そこでは助け合いが必要で、必然的に他人とのやりとりには思いやりのやりとりが重なっていった。著者は聖徳太子の憲法十七条にある「和をもって尊しとなし」を引用して、日本人らしさはこういうところにあるといいます。現代の日本人もこういった言語の仕組みの影響を受けながら、思いやりの心を育むのかもしれないですね。これが英語だと、自我中心の言語なのでこうはいきません。他の章でもあるのですが、日本語は自然を受け入れるかたちの用法に満ちていて、自然中心の言語だと言えるのだそうです。

    というように、このような日本語文法の本を読んでいると、言葉たるものがどれだけ心に影響するか、また、日本語が心の細やかな動きにどれだけよく対応する言語か、ということが行間または文章の奥のほうから立ち現れてくるのを感じるのでした。

    ふだん、あまり意識せずに使っている日本語を、客観的に学問するように眺め直してみると、なかなか頭が柔軟に対応してくれませんでした。過去に学校文法を学んだ時の脳の部位がかちかちになっていて、なんだか変化を拒むかのようでした。それでも、用法の細かいところはさておき、英語とは違った構造による人の心理への日本語の影響をうかがい知ることができたのはよかったです。

    あとがきに「サピア・ウォーフ仮説」という言語理論について述べられています。言語の構造は、その言語の話し手の認識や思考様式を条件づけるというものです。社会や環境、遺伝子のみならず、言葉なんていうものからも、人間の心理や精神構造、思考様式は大きな影響を受けているのではないか、ということなのです。こうやって日本語についてちょっと詳しくみただけで、僕はもう、この仮説を受け入れたい気持ちになってくるのでした。
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    投稿日:2023.02.20

  • meep

    meep

    日本語の文法についての説明。学校で習った文法とは少し異なる視点で日本語文法についての見方がかわる。

    主語と述語、の捉え方が違って見えるようになった。相手がわかるだろう言葉は省略されるとか。

    堅苦しくなく、さらっと読めるのがよい。

    また言語学者では有名な「象は鼻が長い」が引用されていた。

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    投稿日:2023.01.23

  • スナギモ

    スナギモ

    なんとなくもやっとしか捉えられていなかった日本語の諸現象を解釈する枠組みが得られた感覚がある。

    諸所に若干の疑問を抱く部分もあったが、改めて日本語について、その背景にある思想を含め考えるとても良いきっかけをもらえた。

    今後日本語学習者に質問をされた際には、再度読み返したいなと思えた。
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    投稿日:2022.06.06

  • レオナルド

    レオナルド

    学校の国語で習う文法が大得意だった私。どこかで「『は』は主語に付ける助詞だから、『カレーは昨日食べました』のような文は誤りで、『カレーを昨日食べました』が正しい」と学び、今までそれを守ってました。でも、世間では主語以外にも「は」を付けて話すし、ずっとモヤモヤしていました。そんなとき出会ったのがこの本。学校の文法とは違った切り口から日本語が解説されていて、「は」の使い方を始めとした、学校文法では納得いかなかったところも理解することができました。続きを読む

    投稿日:2022.05.04

  • おて

    おて

    言語は使用している国や地域の文化を表している。
    日本の自然と調和・共存するような言い回しが、他言語と比較するとはっきりと浮き上がってくるのはとても興味深かった。
    2章(だったかな)の「日本語文法はコト+ムード(本書参照)で完成する」と言うのは初めのうちは何を言っているんだ、コトだけで文法上は成立するだろう、と思っていたが、7章で著者がその言わんとしていることを理解できた。

    「〜は」=主題、「〜が」=主格という、三上章氏の主語廃止論も納得のいく理論だった。格という成分(主格・所格・共格・対格など)は全て主題となり得、その主題をどの格にしようが文章は変化しない。

    【太郎がカフェで次郎とケーキを食べる。】

    ①主格が主題
    太郎はカフェで次郎とケーキを食べる。
    ②所格が主題
    カフェでは太郎が次郎とケーキを食べる。
    ③共格が主題
    次郎とは太郎がカフェでケーキを食べる。
    ④対格が主題
    ケーキは太郎が次郎とカフェで食べる。

    主格と述語の関係性はいずれの格が主題となろうとも変わらないため、述語が「食べられる」というような受身の文とならないのだ。

    またこの他にも「〜は」と「〜が」の違いを説明する情報の新・旧という問題があり、これは英語の冠詞に類似するという。さらに一般論を説明する場合と中立描写文を説明する場合に分けられるという違いがある。

    今までは無意識のうちに発していた日本語が、このように理論的に分かるとなんだか楽しい。他にも多くの理論を学べた。日本語って面白い。
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    投稿日:2021.11.01

  • 中尾

    中尾

    日本人でも(日本人だからなのか)細かい部分まで理解しようとすると、説明が難しい問題に直面する。仮に外国語として習得するとなったら、結構大変そう。特に語尾とか格助詞のニュアンスや語法は理論的に説明するのは難しい。(今ここでサマリー書くのも難しい、、)

    結構印象的だったのが、言語体系は思っていた以上にその国の文化の影響を受けていたこと。「思いやり」の表現、「ウチ」と「ソト」の発想は確かに日本語独特。
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    投稿日:2021.05.15

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