【感想】ISの人質~13カ月の拘束、そして生還~

プク・ダムスゴー, 山田美明 / 光文社新書
(9件のレビュー)

総合評価:

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  • コンサルタント会社の活動の一端も解ります

    ISに拘束され、解放されたデンマ-ク人のドキュメントで、その経過はもちろんですが、セキュリティーを専門とするコンサルタント会社の活動にも、記述があります。まえもって、コンサルタント会社に相談することにも驚きですか、交渉人の仕事の進め方にも、興味を覚えました。人質解放の陰には、報道されない、色々な人の関与があるものだとも、改めて認識しました。続きを読む

    投稿日:2016.10.10

ブクログレビュー

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  • 大前 徹

    大前 徹

    2016年に刊行された作品だけれども最近になって知ったので手にとってみた。イスラム国(IS)には欧米人が多数、そして日本人も拘束され、中には処刑され人達もいた。特に首を斬られて殺される動画が公開された米国人ジャーナリストのジェームズ・フォーリーという人がいたが彼と同じ時期に拘束されて時に同じ施設に閉じ込められていたデンマーク人について書かれた作品。自己責任の議論が日本でもあったけれど本作品で取り上げられているデンマーク人もそうで、元々はデンマーク代表の体操選手だったのが靭帯損傷で体操の道を閉ざされ、好きなカメラの道に進もうとしてろくに中東や紛争の知識もなく言わば無邪気にシリアに出かけてしまい国境を越えた翌日には武装組織に拘束されてしまう。本作品の凄いところは拘束されている状態の悲惨さとともに残された家族がいかに武装組織にコンタクトし交渉を行い結果、どのようにして借金と募金で身代金を作りそれを支払って人質を取り戻したのか、を克明に描いているところ。理不尽な暴力に晒される人質の悲惨さはいうまでもないのだけれど正体が分からない連中から法外な身代金を要求され、その道のプロフェッショナルに依頼し開放の交渉と集金を行う家族の対応についてはこれまであまり描かれてこなかったと思うのだけれどこんな苦しいことになるのか、という印象。ちなみに同じ欧米人でもその当時はフランスやスペインは国が身代金を払ってくれる、ドイツやデンマークは国は基本的にノータッチだけど家族が身代金を払う事については支援する、アメリカ、イギリスは国はもとより家族であってもテロ支援になるので身代金を支払うことすらできない、という違いがありそれが人質の待遇にも反映されてしまうといったところも分かって非常に興味深かった。楽しい作品ではないけれども一読に値する作品かと思います。続きを読む

    投稿日:2021.11.27

  • mmcmio

    mmcmio

    信じがたい拘束時の状況が淡々と綴られており、無理なく読み進められる

    これが創作ではなく、経験に基づいて書かれた、しかもこの時代に起こっている事実なのだから恐ろしい

    こんな悲惨な状況下で13ヶ月もの間、精神を保ったまま生き延びられたのは、生きて家族の元へ帰ると希望と、拘束期間中少なからず人との交流?があったからか

    身代金には一切応じないという徹底したデンマークという国の姿勢とジャーナリズムの意義には考えさせられた
    続きを読む

    投稿日:2021.03.01

  • shimu2

    shimu2

    【生き延びられるかどうかは、自分の苦しみを忘れ、自分より苦しんでいる人間を助けられる人がいるかどうかに左右される場合もある】(文中より引用)

    デンマークでカメラマンとして仕事を始めたダニエルは、戦場の実態を伝えたいという思いで戦乱が広がるシリアへ入国する。しかし、現場に不慣れであった彼は「イスラム国」(IS)へとつながる男たちに拉致されてしまい、そこから地獄のような13ヵ月を過ごすことになり......。著者は、デンマーク放送協会の中東特派員を務めるプク・ダムスゴー。訳者は、英語とフランス語の翻訳家として活躍する山田美明。英題は、『The ISIS Hostage: One Man's True Story of 13 Months in Captivity』。

    一人の人間が絶望をくぐり抜けてどのように生還に至ったかという観点から読み進めることが有意義であるのはもちろんのこと、テロ組織が関与する国際的な誘拐事件に関する貴重なケース・スタディーを提供してくれる作品。政府のスタンスやコンサルタントの使用など、認識を深める上で非常に参考になりました。

    痛々しい描写もありますが☆5つ
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    投稿日:2019.10.30

  • DaiSugi

    DaiSugi

    ノンフィクションだけど
    人質、家族、仲介人それぞれの視点で
    時間が経過していくから映画を見てるみたいだった。
    拘束されている時の状況は悲惨だけど
    同じ場所に拘束された仲間たちがいたから
    なんとかなっていたんだと思う。
    現地では知らない人にはついていかない、保険に入る、
    などは現代社会で安全に暮らすために
    必要なことと同じに思える。
    ウソをつかず、日課を作り、相手の言うとおりにする、
    という誘拐された時の心得も
    働いている環境によっては参考になるかもしれない。
    続きを読む

    投稿日:2018.12.06

  • 波瀬龍

    波瀬龍

    【期待したもの】
    ・拷問の実態。アサド政権の対応の実際。

    【ノート】
    ・帯広出張の列車の中で読了。読み始めると止まらなかった。

    ・本書は人質と、その救出に奔走する側という2つの軸で進行するのだが、救出側の話が興味深かった。なお、佐藤優の解説はかなりおざなりな印象。

    ・人質側パートで、なかなかに陰惨な拷問の様子が描かれているが、描写としては抑えられてる印象。もしかしたら人質の性質(外国人人質とか敵兵捕虜とか)に応じて拷問のレベル設定が行われているのかも知れないが、元SAS隊員であるアンディ・マクナブの「ブラヴォー・ツー・ゼロ」や、同じく元SAS隊員のクリス・ライアンの「戦場の支配者」(こちらは小説)で描かれている様子はもっとひどい。また、UNHCR主催の映画祭でシリアを舞台としたドキュメンタリー映画を見たのだが、そこに映されていた遺体の拷問痕の凄惨さたるや...!
     上に列挙した例の拷問者は政府機関(軍や警察)であったり反政府機関(ISなど)の所属だったりするが、拷問技術は共有されているらしい。本書で言及されている車のタイヤを使った拷問は、UNHCRの上記の映画で、軍が行っている場面が映されていた。

    ・ところで、半年ぐらいメガネのない生活を送れば実は近眼って治せるんじゃないかと考えてたのだが、本書の主人公は13ヶ月拘束されて近眼のままだったらしいのでダメみたい。
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    投稿日:2018.10.28

  • pippin55joy

    pippin55joy

    事実だから怖いですね・・
    淡々と、拘束されてからの毎日が綴られている感じですが、本当にこれが事実なら、怖い・・・という内容でした。
    ジャーナリストの方々は、そんな危険があるのも承知の上で取材に赴いていらっしゃるのですね。
    生還された方も、精神的なトラウマはずっと出てくるんじゃないかなぁ・・と思ってしまいます。
    私達はそんなこととは程遠い、平和で贅沢な生活をしています・・・
    でも、事実を知ることができたことに感謝します。
    続きを読む

    投稿日:2018.09.01

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