【感想】水力発電が日本を救う―今あるダムで年間2兆円超の電力を増やせる

竹村公太郎 / 東洋経済新報社
(14件のレビュー)

総合評価:

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  • 国土の7割を占める、山間地を利用してのエネルギー発生は理に適ったソリューションだ

    環境問題を考える上で、単に自然を守ろうという言葉は、すでに時代遅れの考え方であろう。

    と言うのも、少なくとも高度経済成長期においても、自然環境破壊は理解され、それと経済的メリット発展のバランスをとろうとしていたのである。残念なことに、その時代は経済発展を優先することが多かったのである。

    上記も軽く触れられながら、本誌では何よりも日本の地形を最大限活用するためには、水力発電を活用することが望ましいことを、様々な面から説いている。

    説明されている内容は実に納得がいくもので、国土の約7割が山間地域で有り、年間降水量が3000mmmという条件は正に水力発電に向いているといえる。

    水力発電を広げていくためには2つの課題があると思える。

    1.水は誰のものでもなく共有財産であるという理解を構築すること
    2.共有利用できるための法整備
    3.これまでのダムの改修

    これらが一部でも解決出来ると、そこからできる改善策を打つことができるはずである。これから、永遠には無いと分かっている、地下埋蔵資源に頼り切るのではなく、どこにでもある水力発電を活用することが良いと考えています。
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    投稿日:2016.10.01

  • 池井戸潤さんが小説化しそうなアイデアがいっぱい

    本書で詳しく紹介されている小水力発電の取り組みは、水源地域の地元自治体に活力を与える良いモデルプランだと思う。
    池井戸潤さんに小説で取り上げてもらえば、さらに全国の注目を集めそう。

    少しダム技術者の就職斡旋的な面も感じないわけではないが、先日の新潟での観光放流での事故のニュースを聞くと、こうしたOB人材のノウハウや経験がうまく次世代に継承されていくことは愁眉の急だと感じた。

    ダムは壊れず半永久的に使えると太鼓判を押していたり、人口はエネルギーによって決まるといった少し強引な仮説など、鵜呑みには出来ない面もある。

    治水と利水という2つの矛盾する目的から、多くのダムで発電に適した満水の半分くらいしか水を貯めておけないのは、次世代のエネルギー活用を考えると理不尽で、それなら河川法の条文を変えればよいというのは、いかにも元建設官僚らしい発想だ。

    昨今はダムを観光資源として見直す動きが進んでいるが、そうした中で新潟のような放水事故が起きてしまうのだから、よくよく自治体の職員は注意してかからなければならない。
    単純に資源開発だ、これだけ儲かると前のめりになっても、地域の人々の「我々の川」という意識の前では、慎重な配慮が必要だ。
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    投稿日:2017.12.09

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  • akinoki

    akinoki

    とても分かりやすい主張で理解しやすかった。
    既存水力発電の運用面の課題や、ダムの改修を加える事で、化石燃料に頼らない世の中を作り上げることが出来る気がしたが、再エネが普及しない今の電力業界の根本の課題が薄い。ダムの活用促進だけでなく、系統の増強などもセットで考えないといけないと思う。続きを読む

    投稿日:2020.02.24

  • すた

    すた

    なんだろう、このいらいらする感じ。
    「私はダム(水力)の専門家、3つも作ったような人は珍しい」とか「私たちダム技術者にはこれぐらいわかる(簡単なこと)」とかいった、パターナリズムが強い。
    まさに昔の官僚ってこんな感じだったのであろうか?(笑)

    河川法の目的に「最大限発電」と書くだなんて、バランス感覚のかけらもない。
    ましてや「それが今求められている」とまで言うとは。
    そんなに言うなら、なぜ自分がしなかった(外野になってから評論されてもねぇ…)。

    事前放流を(予測のしやすい)「台風上陸」でしか説明しなかったり、
    電力ダムでなく多目的なら堆砂は排砂できるから問題ないと言ってみたり、
    イタリアのアーチダムより日本のダム(重力)は分厚いと言ったりしていて、論理もひどい。。

    「位置エネルギー」への視点は妥当、だが、それのみを繰り返し、紙幅がもたなくなると人口や文明をエネルギーとの関係の歴史でのみ語る章が突然登場するのみ強烈な違和感。
    なんというか、こんな人が局長がやったんだなぁ、、やったとはなぁ、、
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    投稿日:2019.06.28

  • ぶるーらいおん

    ぶるーらいおん

    これからは再生可能エネルギーの時代だが、その中でも「水力発電」が最も有望であることが非常によくわかった。

    投稿日:2018.12.01

  • boompanch

    boompanch

    ◯ダムを増やさず水力発電を2倍にする
    ・家庭や工場、農業、発電に水を使うのが「利水」、川の堤防の決壊から守るのご「治水」、双方の目的を果たそうとするのが多目的ダム。
    ・国土の小さい日本のダムは2つの矛盾した目的を持つ多目的ダムが多く、これは河川法で半分しか貯められない。雨量の多い時期は放水してわざと貯めない。

    ◯日本は資源大国
    ・多雨で山岳地帯のため雨を集めやすく、河川の高低差があるため水力発電の適国
    ・既に過去に作った大量のダムがある。
    ・大都市は難しいが、地方は水力を中心として太陽光や風力を組み合わせて発電するかたちが良い。

    ◯日本のダムは200兆円の資産
    ・ダムは壊れない、震災でも本体が壊れたダムは皆無だった。
    ・鉄筋なしで、セメントと砂と石だせでできているため錆びない。これは石灰岩で、天然の岩と同じ。
    ・風化している表層の岩盤を取り除いた上で直接頑丈な岩盤と固定するため、揺れが非常に小さい。
    ・ダムの壁が極めて厚い。
    ・新設ダムの工事費は総工費数千億円の1/3以下、大半は水没村の補填費用。
    ・嵩上げすると、発電量を倍に増やしても、新設の工事費用分でまかなえる。
    ・日本に降る雨や雪の位置エネルギーを全て電力に変えられると70%賄える。現実的には潜在力を発揮すれば総需要の30%を賄えると試算。
    ・落差10mクラスの小さな砂防ダムでも100〜300kw程度は発電できる。
    ・30MW未満の開発可能箇所は2万箇所以上あり。その合計は14000MW。

    ◯地形からわかるエネルギーの将来
    ・昔からエネルギー(木材)が政治を左右してきた。奈良から京都への遷都、家康が江戸を選んだのも木材の確保のためだと考えられる。
    ・ペリーの蒸気船をきっかけに石炭が使われるようになる。当時国内で産出できた。
    ・石油へ移って問題は輸入せざるを得なかったこと。当時ほぼアメリカが産出していた。石油が無くて戦争し、石油がなくて負けた。
    ・人口もエネルギーの変遷とともに急拡大している。

    ◯水力発電のオーナー
    ・水力発電の建設には小型であっても流域地域の住民の合意が重要。
    ・川は基本的に国のもの。
    ・持続可能な発展のための公共的プロジェクトと割り切り、水源地域の利益のために。
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    投稿日:2018.10.07

  • aya00226

    aya00226

    多目的ダムの矛盾=利水と治水。半分くらいしか水を貯められない仕組み。
    グラハムベルはナショナルジオグラフィックの編集責任者だった。

    ダムは半永久的に壊れない。鉄筋を使っていない。岩盤と一体化。コンクリートは100m。

    多目的ダムは砂が溜まりにくい。砂を流す穴がある。電力ダムはない。
    水路式発電ならダムはいらない。ただし減水区間が生じる。
    逆調整池ダム=下に30mくらいの貯水ダムを作って、余った電気で揚水する。
    かさ上げ工事をすれば、容量が増える。

    奈良盆地から京都への遷都はエネルギー不足。
    江戸幕府は関東のエネルギーが魅力だった。
    幕末は文明の限界。石炭がエネルギーであることを知らされた。太平洋戦争は、インドネシアの石油が目的。

    文明あるところ環境破壊あり。メソポタミア文明による砂漠化、黄河の砂漠化=黄砂の原因。
    今回の人口減は、エネルギーの限界からくる?という仮説。
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    投稿日:2018.09.05

  • advicekiyomidosu

    advicekiyomidosu

    副題が
    今あるダムで年間2兆円の電力を増やせる

    元国土交通省河川局長 竹村公太郎著
    何も今更大きなダムを作ろうなんてことではない。
    今あるダムの運用を
    最新技術を使ったシステムに変えれば
    年間2兆円分の電力が生まれると言う話。

    ダムの運用に関わる法律は昭和32年(1957年)に
    制定されて以来、根本的には一度も改正されていない。
    59年前の社会事情のまま、運用されていると言うこと!

    原発問題、温暖化問題、、、。そして最近のゲリラ豪雨のような
    かつては考えられない規模の大雨!
    それらに役だつダムの運用方法。

    かつては治水、利水という観点からダムが作られてきた。
    電力を作り、水がないときに利用する利水。
    洪水が起こらぬために、、の治水。
    本来、一つのダムで完璧なこれら二つの利用を
    こなすのは矛盾点も多くなるが、
    昔はそれができなかった事情も確かにある。

    が、今はどうだ。ドローンも使える時代、
    遠隔操作でのダムの貯水の加減も可能。
    そのソフトパワーをもっと使えば、
    時代に即した利用法ともなろう。

    官庁というところは、著者の竹村氏の経験からも
    『予算の獲得』が第一義で
    ハードには目を配っても、
    その利用法を改良するソフトには
    なかなか目がいかない体質なんだとか。。。

    プロデュースが下手と言われる日本人だが、
    昨今新しい人々が、ネットも使い地方の埋もれた技を
    世界的に広めたり、資本がないが優秀な技術や社会貢献できる
    小さな会社に、金を集めることもできるようになっている。

    官庁という巨大なバケモノの中に
    収まらない若く清新な人材が、集まって
    こういう提案を実行してほしいものだ。
    続きを読む

    投稿日:2017.10.05

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