【感想】赤と白

櫛木理宇 / 集英社文庫
(35件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
6
13
11
1
1
  • 絶望少女×2

    「ホーンテッド・キャンパス」シリーズで有名な著者による、小説すばる新人賞受賞作。同じホラーでも、本書には幽霊も怪奇現象も出てきません。代わりに人間の心に潜む闇が描かれているのですが……正直「ホーンテッド~」の数倍は怖いかと。全体的に雰囲気も暗く、負の感情てんこ盛りの絶望系ホラーとなっています。
    明るい話じゃないことは冒頭から想像がつくのですが、それでも引き込まれて読み進んでしまうだけの魅力が本書にはあります。端正な文章に、作り込まれた人物造形、丁寧な情景描写……。特に雪の描写は印象的で、新潟出身の著者ならではだと思いました。
    弥子と小柚子の境遇に関しては読むのが辛いシーンもありましたが、意外にも読後感は悪くありません。救いのあるラストが、それまでの苦しさを和らげてくれた気がします。
    「ホーンテッド~」みたいなにぎやかホラーもいいけど、個人的にはこういうのも好きです。
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    投稿日:2016.10.01

  • 後半の怒涛の展開に読むのが止まらなくなりました。

    ホーンテッドシリーズで櫛木さんの作品に入って、重めのホラー作品も読んできました。

    本作では、わりと普通の女子高生(一部おかしな人もいますが)が登場人物です。でも、家庭環境は普通…ではなく、大人でも頭を抱えたくなるような問題をはらんでいます。

    しんしんと降り続く雪のように、静かに物語は進みます。そして、降り積もった雪の重みに耐えかねたかのように、一気に破局がおとずれます。運命の分かれ目となる夜、次々に巻き起こる感情のうねりに圧倒されてしまいました。

    遠からずこうなることはわかっていたんです。重みに耐えていただけで、問題は何も解決されていなかったのだから。でも、どうすることもできない。そのやるせなさが物語の底流に常に流れています。

    櫛木さんの小説では、勧善懲悪の懲悪の部分は結構きっちりしていて、悪行(意識的か無意識に課は問わず)を重ねていた人たちは、ほぼ破滅します。中には過酷すぎるんじゃないかと思う登場人物も。個人的には、レクサスの男にもなにか天誅が下るとよかったのですが…。

    終章のやりとりもあり、読後感はそれほど重くはないです。でも、胸の底に重いものが残る、そんな小説でした。楽しくはないかもしれないけど、丁寧で面白い小説だと思います。
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    投稿日:2018.01.17

  • 危うい世代の揺れる深層表現が見事でした

     物語の冒頭、ある新聞記事が掲載されます。うんうんこういう手法あるよね、と思いながら読み進めていったわけですが、ホラー小説、いやミステリー小説であることを忘れてしまうくらい、登場人物達の行動、深層心理に魅せられていきました。これは残酷な青春小説であるかもしれません。
     ラストはたまっていた物が爆発する感がありますが、男はあそこまで残酷にはなれないかもしれないなぁとも思いました。
     ウィキペディアを見ても作者の好きな作家には名前が挙がっていませんが、私の愛読書でもあります夢野久作が物語の中に出てきたことに、ちょっと驚いたかな。しかし、少女に夢野久作を読めと言われたら、ちょっとひいてしまうかもなぁ。
     タイトルの赤と白は、燃える赤と、新潟の雪の白だと思いますが、閉塞感溢れる境遇と思春期の不安定な心情とが引き起こしてしまった悲劇なのかもしれませんね。litsのレビューにもありましたが、私もレクサスの男にも鉄槌を下したいですな。
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    投稿日:2018.05.01

ブクログレビュー

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  • eriko310

    eriko310

    読後感、なんだろう。
    小柚子と弥子と、苺実、京香と慎くん。
    それぞれのキャラクターをあまり好きになれないまま読了してしまった。

    最初のニュースで、どうなるかは知っていたけど、小柚子の家で亡くなった友人が誰か、とか、小柚子がどうしてそうなったか、とか、少し謎のまま終わってしまったのが残念。

    小柚子と弥子が今後どうなっていくのかが一番気になるところかな。
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    投稿日:2022.04.28

  • kaorukaeru

    kaorukaeru

    女子高生二人の視点で物語が展開していた
    その他何人かの女子高生が登場して
    母親との関係がみなそれぞれだがそこに
    いろいろ問題が・・・
    最初に新聞記事があり
    物語はそこへ向かうんだろうなとはわかりました
    精神科医の解説も興味深かった
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    投稿日:2022.02.09

  • LUCKY

    LUCKY

    このレビューはネタバレを含みます

    雪国の雪は美しいものではない。そこに暮らす者を苦しめる白だった。
    小柚子と弥子は仲良しだった。二人の関係のバランスを崩したのはクラスで目立つAグループからあぶれて弥子達Bグループに拾われた苺実。そして、突然現れた二人の幼なじみ、京香だった。小柚子も弥子も母親との関係性で互いに明かせない秘密がありその負い目がすれ違いを加速させてゆく。
    母と娘の関係は逃れられない呪縛であり、それは憎しみの赤い炎となって焼き尽くす。
    新潟を舞台に女性の業が渦巻く暗い物語である。

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    投稿日:2021.09.08

  • yokovic

    yokovic

    このレビューはネタバレを含みます

    思ったよりテンポ良く読めた。

    4人の少女の心の闇(苺実は種類がちょっと違うが)。

    それにしても、小柚子はあまりにも救いが無くて辛い…。

    性暴力のトラウマから逃れるために
    衝動的とはいえ「母殺し」という手段を選んだのに
    結果、また性暴力の被害に遭うなんて。

    心を失った小柚子に、弥子はどう寄り添うのか。
    その後が気になります。

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    投稿日:2021.08.25

  • 紅手鞠

    紅手鞠

    閉鎖的なコミュニティでの少女達の日常、葛藤、絶望…
    親によって支配を受け続ける少女達の心理描写
    、閉塞的な空間でのリアルが生々しい
    それぞれの抱える背景が胸くそ悪い
    突如現れた旧友の存在によってそれぞれの形で完遂する親殺し
    一番やべー奴に見えた苺実も、親によって成長と自立の機会を奪われ続けているというのがが面白い
    冒頭に繋がる最後の展開は急展開過ぎてちょっと笑ってしまった
    ほったらかしな辻井君が割と可哀想
    多分一番まともだから頑張ってほしいと思う
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    投稿日:2021.05.02

  • NORAxx

    NORAxx

    皆様、お気づきでしょうか。そうです、ふとした思いつきから始めた女性作家メドレー、早いもので5作品目となりました。知らんがなでしょう、そうでしょう。

    前置き

    胸糞悪さに耐性のある私だが、決して人の不幸を見て成長する悲しいモンスターという訳では無い。良く言えば、見たくない物を見ないフリで素通りするべからずの精神だと思っている。自信は無いが。
    問題定義の投げ掛けとしてのフィクションを自己満にはなりますが好んで追えるのです。

    その前提でこの作品を手に取り、彼女等の抱える負の背景とそれに繋がる母親の存在、その中ですれ違う友情と決定的な一撃を振り下ろした歪み。
    ...中々重たいお話で期待を持って読み進めたものの、残念ながら読了後に大きな変化は無かった。

    若者ならではの直進的な思考回路に、今でいう「毒親」のブレンド。混ぜるな危険信号が鳴り響いている。解説のお言葉を借りて、「母親殺し」が最終的なテーマとなる確実に手に取るべきではない重たいお話でしたが、一概に「なんて悪趣味な話を書くもんだ」と言えない、確実に現実に起こっているであろう闇に、額の皺がドンドン深くなっていった。

    だが、この読了後の何も無い感は何だろう。救いようがない...なんか悲しい気持ちになった..というものではなく、纏まりきるまえにシャットアウトされた着地点と浮遊したままの伏線が気持ち悪い。数々の疑問が残る終わりを迎え、居心地が悪い。
    なにより悲しいのは血が通ったキャラクター達から途端に失われる「らしさ」だ。

    心理的描写が細かかった分、読了後に「彼女達」、そして現実に起こっているであろうこの現状について果たして自分はどう感じるのか。と心の底から楽しみ...と言うと語弊がありますが、この短い読書の先に産まれる自身の感情の未来に期待していた。
    しかし途端に彼女達は「物語の中の人」となり愛着は薄れ、日をまたげは彼女達が過ごしたあの日々はフィクションの世界となり、私の記憶から話の全容以外の全てが抜け落ちていった。

    心を持ち人間らしさを築き上げた「ピノキオ」の魂を抜き取り、心の通わない人形を破壊して楽しむ様を見せつけられただけのようで、とても残念。
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    投稿日:2021.03.19

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