【感想】世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち

マイケル・ルイス, 東江一紀 / 文春文庫
(47件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
21
13
6
0
2
  • 金融市場に興味のある人は必読

    住宅バブルからリーマン・ショックへ至る顛末は、興味のある向きには大筋だけなら周知のことと思うが、そのとき実際に現場で動いていた群像劇は圧巻。ドラマがある。世間では「バブルは予見できるか?」なんて、ややアカデミックな議論などあるが、そんな理屈が吹き飛ぶような迫力だ。これはウォール街を占拠したくなる気持ちも分かる。

    本書の主人公たちはサブプライム債(を材料に合成されたCDO)をショートしていた面々。いずれもウォール街の主流からはだいぶ外れたアウトサイダー。こういう独立独歩の人が利益を求めて行動した結果、首尾よく価格発見に至ればまさに効率的市場仮説どおりだが、簡単にそうならぬのが現実の難しさ。本書でも再三指摘されているが、債券市場の不透明性(+その不透明性を最大限に利用した強欲)がひとつの原因だろう。

    また主人公たちの「敵方」として、第9章で取り上げられるモルスタの特殊部隊の話がきわめて興味深い。サブプライム債がクズであることを十分承知していながら、トリプルBのCDOショート、トリプルAのCDOロングで見事に飛んでしまう。後知恵で何とでも言えるのだが笑うしかない。投資銀行、CDOマネジャー、機関投資家といった「敵方」の様子は本書でもハッキリとは分からないのだが、こうしたカオスが多々あったのだろう。

    金融市場についての箴言あり、主人公たちの人間ドラマありで、マイケル・ルイスの皮肉な筆致も絶好調。ただ、ある程度は金融市場に興味・知識のある人でないと十分には楽しめないかもしれない。
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    投稿日:2016.10.10

ブクログレビュー

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  • arasanta

    arasanta

    CDOを取引するために努力した人たちの話や、AIGがリスクを負っているため証券会社は悠々と取引を売っていた話、何億ドルの取引をしても全然動かない取引値といった個別の内容は面白かったが、詳細な内容は書かれていないし、全体的にわくわくする部分が少なめ。それでも読ませてしまうのは原作者と翻訳者の腕な感じがします。
    当時の雰囲気を知るために読むような本。
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    投稿日:2024.03.20

  • レイコ

    レイコ

    映画を先に見ていたので、話が理解しやすかった
    事実は小説よりも奇なり...!
    ビル・ミラーとアイズマンが話すシーンとか、そんな出来すぎたことが起こるかねっていう気持ちになった

    マイケル・バーリが気の毒すぎた、懸命すぎた余りに非難されるなんて、現代の魔女狩りじゃんね

    金融業ってひっどいなあと思ってしまった、、、
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    投稿日:2024.03.14

  • Mkengar

    Mkengar

    マイケル・ルイスの本、はじめて手に取りましたが、予想をはるかに超えて面白かったです。2008年に引き起こされる世界金融危機の発端となるサブプライム・モーゲージ債。これが貸し手の金融機関と借り手(所得の低い米国人)の間だけでしたらここまで被害は大きくならなかったのでしょうか、いわゆる投資銀行と呼ばれる連中が、錬金術をはじめるわけです。しかもタチが悪いのが、錬金術をはじめた投資銀行のトップが、事態を全く理解しておらず、S&Pなどの格付け機関もその金融商品(CDSやCDO)について理解していないのです。

    本書では、この錬金術に気づいた極めて少数派の人々が、その人物像も含めて丁寧に描かれており、とても興味深く読みました。また複雑な金融商品についても、素人にもわかりやすい説明がされているので、すらすら読めました。本書にも書かれていますが、金融機関の人々は、あえてわかりづらいネーミングをします。ですから金融商品の名前は額面通りに受け取るのではなく、自分で名称をつけてしまう方が賢いやりかたでしょう。米国の投資銀行、そして格付け機関も共犯者と言っていいと思いますが、世界経済を破綻寸前においやった人々の実話と、それに立ち向かった(逆張りした)少数の人々(本書の主人公)の物語は、これからも語り継がれていくべきだと思いました。
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    投稿日:2023.05.04

  • コタロ

    コタロ

    GFCの爆心地がどこだったのか、なぜあそこまでの金融危機となり得たのか、世間に逆行して住宅市場をショートできた賢人たちがどのようにその決断に至ったのか…
    それらが非常にわかりやすく、かつ飽きずに読み続けられる良書だと思います。

    市場が間違っていて自分は正しいと確信できるだけの分析力と、莫大なショートポジションを維持したその胆力は想像を絶するものがありました。
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    投稿日:2021.06.26

  • nur1202

    nur1202

    サブタイトルに「賭け」の文字が見えるけれど、実際に読んでみると賭けでも何でも無くて常識的な行動をしていたんだなぁという印象を持ちました。
    結局、原因をつくった人たちが破綻後も得をしていたというのもちょっと意外。みんなそろって損していると思っていたのに。
    時系列で描かれているので、登場人物の出入りが激しい印象が有り、登場人物一人一人の行動の把握が難しいと思いましたし、サブプライム関連の用語が一部難しくて理解できていないところもありましたが、全体的に見れば楽しめたと思います。
    結局あの経済危機は何だったのかを把握するには良い本だと思いました。
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    投稿日:2020.10.11

  • pokorit

    pokorit

    まだ記憶に新しい、2008年の金融危機 (日本でいうリーマンショック) を扱うノンフィクション。 好況に沸くウォール街で繰り広げられるマネーゲームを冷静に分析し、その先行きを正確に見通した男たちがいた。彼らはどのようにして、サブプライム・ローンのまやかしを見抜き、その破綻に賭け、そして巨額の利益を得ることができたのか。なぜ多くの人々が、破滅の瀬戸際までこのローンの危うさを見過ごしていたのか。 3組のグループの足跡を追いながら、金融危機に至るまでの顛末を描く。

    まさに小説より奇なる展開と、解説の分かりやすさで、一気に読んでしまった。 ローン発行会社、銀行、投資ファンド、格付け機関、それぞれがライバルを出し抜き、利益を生み出すためのトリックを駆使したあげく、作り上げた複雑なシステムは現実と乖離してしまう。 ウォール街からは、実際にローンを借りている人々の姿が見えていなかった。 渦中にいて外からの視点を失うことの危険性。 それが忘れられた頃に、バブルは何度でも繰り返され、その度に破綻に至るのだろう。
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    投稿日:2020.05.30

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