【感想】ノックス・マシン 3/4 電子オリジナル版

法月綸太郎 / 角川文庫
(40件のレビュー)

総合評価:

平均 3.2
2
10
18
1
3
  • 表題の3/4の謎

    上海大学のユアンは国家科学技術局からの呼び出しを受ける。彼の論文の内容について確認したいというのだ。その論文のテーマとは、イギリスの作家ロナルド・ノックスが発表した探偵小説のルール「ノックスの十戒」だった。科学技術局に出頭したユアンは、想像を絶する任務を投げかけられる…。

    ミステリ要素はありますがこれはSFです。しかもおバカSF。でも面白い。話は小説を人間が書かなくなった未来、数理文学解析が発達してコンピューターが小説を書く「オートポエティクス」が全盛の時代。ここである国家プロジェクトの実験にミステリ界では有名な「ノックスの十戒」が重要なキーとして登場します。小説が構文解析され数式に置き換えられるという設定であるからこそできる仕掛けになっており、だからこそその後のSF的展開がばかばかしくも面白い。かなりニヤニヤします。オチも予測できるのですが最後にきれいに収まる様はおみごと。ただミステリーファンには不評を買うかも。(笑)

    ※さて表題の3/4ですが、本来の紙媒体の「ノックス・マシン」には「バベルの牢獄」という話が収録されていて「ノックス・マシン」と「論理蒸発 - ノックス・マシン2」、「引き立て役倶楽部の陰謀」の合わせて4編の短編集となっています。ところが「バベルの牢獄」は物理的な本の構造や構成を理解していないとわからない内容になっている為、電子版には収録できないとの事、なので本来は4編のところ3編しか収録してませんという意味で3/4。

    確かに読んでみる書物愛に溢れた物語(相変わらずのおバカSFですが)であり、そうか・・・確かに電子化には不向きかとは思うのですが・・・。ここでこんな事を言うのは不本意なのではありますが「バベルの牢獄」を読みたいのであれば今のところ紙媒体の本を購入するしかありません。
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    投稿日:2015.12.01

  • 法月綸太郎によるミステリにまつわる話をSF仕立てにした短編集

    本作はいろんなところで言われているように、決して万人向けではない。むしろ、クリスティやクイーンといった古典ミステリをこよなく愛し、かつSFもある程度読みこなしている人が、そこかしこに仕掛けられた遊びを楽しむ、という側面がかなり強い。そういった意味で、「このミス」一位という評価だけによって本書を手にするとなんだこりゃとなる可能性も高い。かくいう自分も、古典ミステリはかじる程度しか読んでいないため、ネタ元がわかるものとわからないものがある。様々な作品に触れた後で読み返すとおそらく今とは違った感想を持つだろう。
    古典ミステリへの愛が如実にあふれた作品として「引き立て役倶楽部の陰謀」が収録されているが、ミステリの歴史の体系的なまとめとも言える作品で、それと知らずに読んでも非常にコミカルな作品でもある。
    また、本作は「紙の書籍」への愛着もそこかしこに感じられる。残念ながら電子書籍版には収録されていない「バベルの牢獄」はその最たるもので、絶対に電子書籍化できない仕掛けが仕組まれている。
    表題作とその続編もふくめ、よくもこんなことを思いつくものだと感心することしきりで、ある意味論理の煙に巻かれたような読後感もあり、そういう意味でミステリにも通じるが、あくまでも本作はミステリではなくSFテイストの作品集だ。
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    投稿日:2016.06.28

  • 読者を選ぶかも

    SF的な要素に関心の持てない人は無理。
    さらに,推理小説の系譜にある程度知識(有名な作家がどんなタイプの作品を描いてきたか)がないと,何のことやら,という感じかも。
    それなりには楽しめましたが。

    投稿日:2016.01.11

  • 古典ミステリーとSFの融合

    古典ミステリーの知識と、現代物理学への興味。その両方を求める非常に読者を選ぶ作品です。正直、クイーンとアガサ・クリスティを数冊読んだことがある程度の私ではついていけない部分もありました。しかし、そこはさすがノリリン。特に表題作である「ノックス・マシン」ではその特殊設定をうまく活かして最後まで興味深く読むことができました。なお、書籍版では4編収録されていますが、電子版では「バベルの牢獄」がフォントの関係もあってか収録されていません(内容も紙媒体でないと分かりにくい)。他3編との絡みもなく、実験的とも思える作品なので無理して読む必要はないと思いますが、折角なら書籍版を手に取ってみるのもよいかも知れません。続きを読む

    投稿日:2016.02.10

ブクログレビュー

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  • ganchan41

    ganchan41

    ミステリー好きが書いたSF。
    ノックスマシン2は量子力学のホーキング理論とブラックホールの情報理論をアレンジしており、科学的にもっともらしい法螺話になっている。ノックスというミステリー作家を知らないので、面白さが半減したかも。ミステリーに精通していると、更に面白いと思うが、そこまでマニアではないので、内輪落ちが判らないので3点。
    バベルの牢獄は電子書籍が難しい鏡文字を扱っており、読めるのは紙の本好き読者の特権です。
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    投稿日:2023.11.20

  • bishop-ms

    bishop-ms

    SF短中編を4編による作品集
    表題作も面白かったが、収録作の中ではバベルの牢獄のギミックが楽しめた
    囚われの身の主人公による一人称で語られており、監視者の目を潜り抜けて脱出を試みる物語
    読み進めると監視者は読者だと気付く
    つまり主人公の考えを含めて監視者に全て読まれている状況
    最後に小気味良い仕掛けで監視の目から逃れ脱出するのだが、全編通して脱出準備が進められていた事に後から気付かされた
    そしてその仕掛けにより、当作は電子化不可能という点も面白い
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    投稿日:2023.04.28

  • じゅう

    じゅう

    法月綸太郎の中篇作品集『ノックス・マシン』を読みました。
    ここのところ国内の作家のミステリ作品が続いています。

    -----story-------------
    「このミステリーがすごい! 2014年版」国内編1位!珠玉の中篇集。

    上海大学のユアンは、国家科学技術局から召喚の連絡を受けた。
    「ノックスの十戒」をテーマにした彼の論文で確認したいことがあるというのだ。
    科学技術局に出向いたユアンは、そこで予想外の提案を持ちかけられる。

    本格ミステリ、本格SF、両ジャンルの歴史に残る必読の傑作
    ――大森望(「本の旅人」4月号)

    まさに“血(知)湧き肉踊る”エンターテイメントだ
    ――村上貴史(「ダ・ヴィンチ」6月号)

    中でも「論理蒸発――ノックスマシン2」は、“感涙すら誘う恐るべき傑作”
    ――千街晶之(「SFマガジン」6月号)
    -----------------------

    2013年(平成25年)に刊行された本格ミステリとSFが融合した中篇集で、以下の4篇が収録されています。

     ■ノックス・マシン
     ■引き立て役倶楽部の陰謀
     ■バベルの牢獄
     ■論理蒸発-ノックス・マシン2
     ■あとがき
     ■解説 杉江松恋

    2058年4月、上海大学で20世紀の探偵小説を研究していたユアン・チンルウは、国家科学技術局から呼び出される… 博士論文のテーマであるイギリスの作家ロナルド・ノックスが発表した探偵小説のルール「ノックスの十戒」の第5項「探偵小説には、中国人を登場させてはならない」が、史上初の双方向タイムトラベル成功に重要な役割を担う可能性があるというのだ、、、

    その理由を探るべく、実験に参加させられた彼が見たものとは―― 発表直後からSF&ミステリ界で絶賛された表題作『ノックス・マシン』、名探偵の相棒たちが暗躍する『引き立て役倶楽部の陰謀』、空前絶後の脱獄小説『バベルの牢獄』などを含む中篇集。

    本格ミステリファンなら、読みながらニンマリしてしまうネタが満載の物語でしたね… それだけに一般受けするのが難しいし、科学的な理論の解説も難解なので、好き/嫌いが分かれる作品だと感じました、、、

    そんな個性的な4篇が収録されていますが、イチバン愉しめたのは『引き立て役倶楽部の陰謀』ですね… ワトスン博士やヘイスティングズ大尉等、名探偵の助手たちが集うクラブの面々が本格ミステリにおける名探偵の助手という立場を護ろうと暗躍、アガサ・クリスティの失踪事件の真相も絡めて印象的な作品に仕上がっていました。

    『ノックス・マシン』と、その続篇の『論理蒸発-ノックス・マシン2』は、SFとミステリを巧く融合させた作品で、ロナルド・ノックスが発表した探偵小説のルール「ノックスの十戒」やエラリー・クイーン作品の定番「読者への挑戦状」をネタにした愉しい展開が印象的ですが、科学的な理論が理解不能なのでその部分は流し読みして、オチを愉しんだ感じかな、、、

    いずれにしても、海外古典ミステリについて一定の知識がないと愉しめないので評価が難しいですね。
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    投稿日:2023.03.29

  • JINTA(じんた)

    JINTA(じんた)

    作者の推理小説好きが顕著に現れた作品。海外ミステリをあらかた読んでいる人はニヤリとするかも。ただ少し設定が難しいところもあった。

    投稿日:2023.01.02

  • くろぶた

    くろぶた

    法月綸太郎はすごいなあ。
    内容よりロジックだけでない部分がふんだんに盛り込まれていて、圧倒されてしまった。

    投稿日:2021.12.06

  • はるたろう

    はるたろう

    2020/03/07読了
    #このミス作品16冊目

    ある程度有名どころのミステリを
    読破してから読むことが前提の本です。
    私のようなにわかミステリ好きだと
    完全に置いてけぼりを喰らいます。
    もっと知識を得てから再戦したい本。続きを読む

    投稿日:2020.03.07

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