【感想】ジヴェルニーの食卓

原田マハ / 集英社文庫
(399件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
95
169
88
12
1
  • 印象派の巨匠たちの物語

    静物画のセザンヌ,踊り子の絵のドガ,いまひとつ私にはピントこないマチス,そして私がもっとも好きなモネの,それぞれ史実に基づいたフィクションです。
    印象派はいまでは日本でも人気のジャンルですが,当時は本当にひどい扱いであったこと,そんな中でも画家達はいきいきと,しかし問題も抱えながら生活していたことが読み取れます。
    この作家はさすがキュレータでもあるだけに,読みながらその絵画が本当に美しく浮き上がってくるように感じられます。これを読んでから美術館に行きたくなること間違いなしです。
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    投稿日:2015.07.08

  • 知識がないと、難しいかも・・・

    短編集です。
    著名な画家のお話を当時の知り合いに教えてもらっている気持ちにさせられます。
    でも、私に絵の知識がなくて、多分、お話の半分くらいも理解できていないかもしれません。
    そういう意味では、楽園のカンヴァスのほうが読みやすかったと思います。続きを読む

    投稿日:2016.06.05

  • 西洋絵画に興味ある方は是非!

    この本を読んで美術展に行くと、面白さ倍増します。
    「ああ、そうそう。この作者と誰々は親しかったんだよね」とか、時代背景などがスムーズに浮かんできます。

    絵画好きの主人にも薦めてます!

    投稿日:2016.09.21

  • いまひとつでした

    全体的に情緒に流されすぎているような気がして、残念ですが、この作品には感情移入できませんでした。
    でもこの作家の他の作品は好きですので、あえて厳しい星2つにしました。

    投稿日:2015.09.10

  • 巨匠たちの姿

    実は,絵画に関しては疎く,描くのはおろか,鑑賞もあまり得意じゃない。鑑賞するのが嫌ってことはないんだけど,これといってすごくいいというものがわからない。
    そんな自分でも,この小説は一気に読んでしまった。マティス,ドガ,モネといった印象派の巨匠たちの生き方,苦悩などが鮮やかに描かれている。今では,非常に人気のある巨匠たちだが,当時は異端で,絵画界からはなかなか受け入れられなかったようだ。そのような中でも,自分たちの新しい絵画の世界を切り開いていった画家たちは非常に魅力的だ。続きを読む

    投稿日:2015.09.17

  • 印象派ファンにはたまらない物語です

    マティス、ドガ、セザンヌ、モネ、印象派の4人の画家たちの素顔が女性視点で生き生きと描かれている。
    彼らの絵を知っている人なら、その絵の由来が色々わかって、かなり面白いはずだ。
    ただ、画家たちの生き方よりも、むしろゴッホが描いたタンギー爺さんに感銘を受けた。
    この爺さんただ者ではない。
    世間の評価や損得勘定を全く気にしない信念のある生き方といい、芸術の本質や才能を見抜く眼力といい、ただただ恐れ入るばかりである。
    彼の持っていた絵は今なら数百億円の資産だろうに…。
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    投稿日:2016.07.07

ブクログレビュー

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  • はな

    はな

    芸術家たちの生きた日々が綴られていて、生きた時代でもないのに鮮明さのある一冊。

    短編で話が分かれているが、共通してお金よりも自分達の表現したいものを追いかけ、お金面での裕福よりも幸せなど心の裕福さを持った人たちだった。
    壮絶さを感じる場面がありながらも、自分にとっての幸福感を持っている人は強いと感じた。
    世間一般的な幸せと個人の幸せ、お金面での裕福と精神面での裕福…考えればキリがないけれど、自分が大切にしたいのは何かを一度見直しても良いのかもしれないと思わせてくれた一冊だった。
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    投稿日:2024.05.06

  • みん

    みん

    原田マハさん縛りで最近図書館で借りて読んでる中で、これは本棚に置いておかなきゃと思った。
    あくまで小説ではあるけど、美術館で名前の字面だけを追っていた作者たちが、具体的なイメージを伴って頭の中に存在し始めてきた。それが嬉しい。
    色々語りたいところはたくさんあるけど、特にモネが良かった。前から好きだったけど、どこが好きなのか、自分の中でくっきり輪郭を持ってきたような。
    自分でも色々調べてみたいと思うし、有名なんだなぁぐらいしかなかったマティス、ドガも改めてしっかり観たいと思った。海外の美術館に行きたすぎるのに時間もお金も足りなすぎる…!!

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    投稿日:2024.04.28

  • 1941503番目の読書家

    1941503番目の読書家

    芸術とか難しくてよく分からないと思ってたけど、この本はすっごく面白かった。
    どんな絵なのか調べながら読んだ。

    芸術家は自分とは違う世界に住んでる奇才の持ち主だと思っちゃうけど、同じように家族がいて生活があるんだなぁ、と思った。
    前々から印象派の絵は柔らかくて温かい気持ちになれるな、と感じてたけど、どんな経緯で世の中に認められるようになったのか知れてよかった。

    今年はモネ展へ行こうと決意した!
    原田マハの他の本も読もう。
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    投稿日:2024.04.24

  • 読むOL

    読むOL

    私はアートに詳しくないので、マハさんの作品から教わることが多い。印象派の画家が変えたのは芸術だけでなく、周りの人たちの人生をも変えてしまった__鮮やかな描写が印象深く、創造ではなくこの世界が存在していて欲しいと願ってしまう。続きを読む

    投稿日:2024.04.19

  • Izumi

    Izumi

    このレビューはネタバレを含みます

    印象派の画家たちが、周辺エピソード含めて大好きな私にとっては、天国のような作品。
    しかも、大好きなオムニバス形式でした。

    同業者だったり、家族だったり、協力者だったり、いわゆる“ミューズ”と言われるポジションでは無いけれど、美しい絵に繋がる暮らしを支える人達の画家に向ける気持ちが、またひとつの芸術だった。


    私のお気に入りは第三章の「タンギー爺さん」。
    セザンヌの愛されエピソードと共に、同じ原田マハ作品の「たゆたえども」に描かれたゴッホ兄弟のエピソードとか、他の画家たちの人間模様も垣間見えて面白かった。
    やはり、人によって生まれ取り巻く人達のエピソードがあるからこそ、名画は名画になるんだと改めて感じた。

    表題作「ジヴェルニーの食卓」も、勿論最高。
    人生のなかで、人を愛し慈しみ、そこで味わった喜びも悲しみも筆に込められているからこそのモネの作品の叙情性なのかもしれないと思った。


    そして、やはり生前に作品が評価される人って珍しいのだろうな、と思い、評価される人は、その人の才能に加えて支えてくれる様々な方面の人の努力も大きいのだろうな、と思いました。

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    投稿日:2024.04.15

  • Macomi55

    Macomi55

    「この花をこの花瓶に活ければ、先生が恋をなさるのではないかと」
    アンリ・マティスの家にマグノリアのマダムからマグノリアの花を届けるよう、使いに出された家政婦のマリアはマティスに好きな花瓶に活けるよう言われた。目に止まった翡翠色の花瓶に活けてマティスの前に置いたところ、「君はどうしてその花瓶を選んだのかね?」と質問されたのだ。言ってしまってからマリアはおかしな事を口にしたと恥ずかしくなった。けれど、マチスは微笑み、その場でマリアを自分の家政婦に決めたのだ。
    マティスは一目惚れする人だったのだ。窓辺の風景に、そこに佇む女性に、テーブルの上に置かれたオレンジに、花瓶から重たく頭を下げるあじさいに。ふとした瞬間にそのもの、その構図を好きになってしまい、その一瞬の気持ちを消える前にカンヴァスにコンテで書き写し、構図を考え、じっくりと配色を決め、それからゆっくりと、慎重に、絵の具を載せていく。まるで、恋を育み、やがて変わらぬ愛情に塗り替えていくように。
    そして、マティスの側に家政婦として使えたマリアもそんなマティスの手から生まれる作品に恋をして、マチスの死後はマチスが作ったヴァンスのロザリオ礼拝堂で修道女になった。
    「芸術作品に恋をする」という経験は美術作品では私はまだない。けれど、音楽なら、しょっちゅう経験している。ハイティンク指揮のオーケストラの演奏だと、その音の中にふんわりと抱かれている気持ちになる。ローリング・ストーンズの演奏にはずっと寄り添っていたくなる。
    恋愛と同じように芸術作品を好きになる気持ちを原田マハさんは表現されている。原田さん自身が恋するように美術作品を好きになられるからだと思う。

    画家エドガー・ドガとメアリー・カサットはお互いの才能を認め合っていた。パリの美術界の登龍門である「官展」の絵はどれもこれもつまらなく見え、「印象派」と当時の画壇からはけなされる自分達の新しい画風を武器にこれからの美術界を渡っていこうとする二人は良き戦友だった。けれど、ドガがたった14歳の踊り子に裸でポーズをとらせ、大作「十四歳の小さな踊り子」のためのスケッチをしているのを目にしたとき、メアリーは複雑な気持ちになった。
    何のために少女はドガのためにヌードモデルになることを承諾したのか。「僕の作品はきっと売れるから、モデルの君はエトワール(星)になれるよ」とドガが言ったのだ。その頃、貧しい家族を助けるために踊り子になり、エトワールを目指す少女は沢山いた。いつしかバレエよりもドガの前でポーズを取ることに熱中してしまった少女にドガは、「明日からはもう来なくていい」と言った。作品がほぼ出来たから、「君はレッスンに戻りなさい。本気でバレエに打ち込みなさい。私も闘い続けるから、この命のある限り」と。
    ドガはメアリーからも踊り子の少女からも遠い所に行ってしまったようだった。けれど、ドガにとっては初めから二人とも戦友だった。
    「印象派」とけなされる新しい作風で堂々と美術界を渡っていくため、作品作りはドガにとって遊びではなく「闘い」だったのだ。
    世の中の逆風と闘ってものづくりをする同士にふっと愛を感じる瞬間はあるのだと思う。だけどそこにとどまらず、涙を拭いて各々の道を突き進んだ先に「芸術」が花開くのだろう。そこには「切なさ」を含んだ愛ある芸術が生まれるのだと思う。

    今は売れないがきっと花開くと信じる若い画家たちを応援したくて画材屋になったタンギー爺さん。絵の具代金が払えず代わりに絵を置いていく画家が多いので、いつしか画材屋兼画商になってしまった。絵の具の代金が入らないことと、画家たちの絵が売れないことで店が潰れかけているのに、ちっとも気にせず、画家たちと芸術談義に花をさかせ、応援し続けるタンギー爺さんは生き方が彼独自の作品のようなもの。画家だけではなく、理解ある画商も画材屋も画家と二人三脚で新しい芸術を作っていったのだ。

    美術界で成功し、ジヴェルニーに睡蓮のある庭のある邸宅に住むモネ。家族の度重なる死を経験し、波乱万丈の人生でありながら、庭を愛し、食事を愛し、太陽の下の「アトリエ」で光溢れる絵を描き続けてきたモネ。その傍らには、助手であり、義理の娘であるブランシュがいた。モネは妻と息子、ブランシュは母と夫と死別するという悲しみを乗り越えて、「絵」という絆で結ばれた二人。ブランシュの作る料理もモネの丹精した庭も生き生きとしていた。

    社会的にも怒涛の19世紀末。芸術が市民のものになり、それまでのサロンでもてはやされた形式的な暗い、よそよそしい絵から脱却して、自分達が生きている「今」の瞬間を切り取った作品を作ろうと闘っていた印象派の画家たち。裕福な家庭に生まれていても、親の理解も世間の理解も得られず貧しい生活を強いられた者もいた。彼らの作品には命が感じられ、力があり、愛があった。彼らを支えた人々に血が通い、愛があったように。

    この本で、メアリー・カサットという今まで知らなかった画家やマティスの「ロザリオ礼拝堂」という建築作品のことを知った。Googleで調べてみると不思議なくらい魅力的だ。
    カサットの作品もロザリオ礼拝堂も観に行きたい。美術に初恋するかもしれない。

    続きを読む

    投稿日:2024.04.15

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