【感想】目の見えない人は世界をどう見ているのか

伊藤亜紗 / 光文社新書
(278件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
73
113
41
3
4
  • 彼らに「見える」もの、私たちに「見えない」もの。

    本書は、美学とリベラルアーツを専門とする著者が、4人の視覚障害者との対話や行動を通じてその身体論を解釈し、まとめたものです。

     健常者が身体障害者について語るとき、ある種の遠慮が生じたり、言葉ひとつひとつのニュアンスにナイーブになりすぎたりして、真に伝えたいものが見えてこないことがままあります。その点で、著者は非常にフラットで、冒頭から身体障害者に「好奇の目を向けること」が大切だと言い切っています。視覚障害者がどのように世界と対峙しているのかを好奇心でもって理解しようと努めている様子や、健常者にはない感覚や物事の捉え方をする視覚障害者への驚きと感動を素直に表していることに、とても好感を覚えます。

    さらには、視覚障害者による特殊な感覚器官の使い方から「目=見る」というあたりまえの構図にもメスを入れてくる著者。私たちの信じているものは、いかに一面的で狭義的なものであるかということを考えさせられます。
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    投稿日:2016.10.13

  • 衝撃を受けました

    目の見えない人が見ている「世界」に衝撃を受けました。
    特に、目の見えない人が見ている三次元の世界には驚愕を覚えました。

    投稿日:2018.01.14

  • 視覚障害者対応マニュアルではありません

     目から鱗が、ボロボロ落ちる本でありました。まず章立てが独特で、空間、感覚、運動、言葉、ユーモアとなっています。
     正直申し上げて私自身、単純な興味本位で読み始めたのでありますが、読み進めていく内に、全く新しい未知なる世界が広がってきました。
     障害者とは、「健常者が使ってる物を使わず、健常者が使っていないものを使っている人」という定義が、まずなされます。ここまでは、まだ障害者のお話という雰囲気でありましたが、その内、「見えない人にとっての富士山と、見える人にとっての富士山」の違いの話あたりから、全く新しい世界観が眼前に広がってきます。そして、ボルダリングが視覚障害者にとって大変人気があるとか、ソーシャルビューの話題、また印象派絵画への言及になってくると、私は何を見てきたのか、いや見ているのか、と自問自答したくなりました。
     そして最後にもう一度、障害者の定義がなされます。それは、大量生産、大量消費の画一的な労働が求められる時代、「それができない人」というレッテルを貼られた人ということであります。つまり逆に言えば、画一的な労働が出来る人は、誰しも交換可能な労働力の一員と言うことであり、十把一絡げということです。
     排除の論理から、悲惨な事件もありました。しかし一方、東京パラリンピックの開催により、また脚光を浴びることにもなるでしょう。
     誰もがオンリーワンなのだという事を、再度肝に銘じるきっかけとなる一冊でありました。
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    投稿日:2018.01.31

  • 変な気を遣って固くなるよりユーモアを

    視覚障害者との突っ込んだ対話を元にして、美学を修めた方らしく「情報と意味」「客観と主観」を切り口に、視覚抜きで成立している世界のあり方を晴眼者へ提示する試み。
    そもそも「障害」概念がなぜ生じたかを考えても、変な気を遣って固くなるよりユーモアをもって柔らかく受け止めればいいんだな、と楽になった気がします。高齢化社会は多様な身体の時代になるので、当事者と社会の関係がいっそう重要になると心します。続きを読む

    投稿日:2021.11.16

ブクログレビュー

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  • ひろ

    ひろ

    目が見えないということがどういうことか少し理解したように思う。

    聞かされて「そうだったのか」と思うこともあれば「やっぱりそうなんだな」と思うこともあった。

    例えば触覚に関して、点字を読むのは触覚ではないと言われていて、それは想像するとすぐに納得できた。
    ただ、目が見えない方の点字の識字率が13%程度と少ないことは知らなかった。大人になってからでは覚えるのがなかなか大変だそう。もっとたくさんの方が読めるものと思ってたので気を付けたい。

    他に聴覚に関しては以前読んだ「目の見えない白鳥さんとアートを見に行く」の白鳥さんも出てきて、思いだしながら読み進められて理解が深まった。

    触覚や聴覚以外にも章ごとに人間の五感について書かれていてその各感覚の使い方の違いが面白くかった。
    意識して視覚意外も使って生活すると新しい見方や発見がありそうに思えた。

    障がいに限らず、自分と違う感覚を持った方の生活や仕事、話を聞いたりするのは面白い。

    いい読書体験になりました。
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    投稿日:2024.05.11

  • みお

    みお

    めっちゃ面白い 
    ただ、「福祉」は「健常者が障害者をサポートする」ことを指すのか、ちょっと勉強不足でわからんけど、少なくても本書では「変身」を前提としたアプローチも分けて使用されている。 福祉の現場での実践的な取り組みについても知りたい続きを読む

    投稿日:2024.05.03

  • peroperosarenai

    peroperosarenai

    こういう本は、インタビュー→その内容を消化→既存の研究内容とすり合わせて昇華、という構造だと思うのだが、昇華の部分が特に物足りなかった。
    インタビューの内容はかなり良い題材だと思う。しかしそれで辿り着く考察が「はぁ普通やな」みたいな話で、イマイチ感動がなかった。
    筆者の考察が面白くなくて、インタビューの方が面白いねということになっちゃえば、最早インタビューをそのまんま載せた方が役に立つことになってしまう。
    続きを読む

    投稿日:2024.04.28

  • 大日方信春

    大日方信春

    美学のうちの身体論として視覚障害者がどんなふうに認識しているのかを言語化したもの。見えない体になってどんな感じかを想像できる。「障害」の表記にも著者の見解あり。個人の「できなさ」としての障害のイメージは産業社会の発展とともに生まれ、「障碍」「障がい」との表記には個人ができないことへの配慮があるとのこと(障害学では障害の個人モデル)。しかし障害とは個人が〇〇の状態にあることではなく、社会の側の壁によってそうした個人を不自由な状態に置いてしまっていることである(障害の社会モデル)。そのことに自覚的になるように「障害」と表記するべきであるという(2011年の改正障害者基本法もこの趣旨の下で障害者を定義)。続きを読む

    投稿日:2024.04.27

  • kaname15

    kaname15

    「目の見えない白鳥さんと…」の白鳥健二さんも登場します。あっちは感性鋭いノンフィクション作家、こっちは美学(芸術や感性的な認識について哲学的に探究する学問)の専門家による本。きっと違った視点で語られているのだろうなと手に取りました。

    不勉強で美学という学問分野そのものを全く知らなかったけれど、なかなか興味深い学問のようです。ただし本書は専門書ではないので表面的な面しか触れていません。それでも、点字を読む能力と文章を読む能力の比較とか、点字を読める人の触覚が特に優れている訳ではない事とか、なかなか面白い内容でした。

    個人的には昨今のSDGsやバリアフリーでの支援疲れを感じていたので、最終章の「善意のバリア」や「つかえ」の話が腑に落ちました。
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    投稿日:2024.03.29

  • Anne

    Anne

    私は目が見える人のはずだけど(まぁ、かなりの近視ですが)、今まで見えてなかったものが、見えてきそうな気がした。

    「牛乳は噛んで飲め(それくらい感覚を研ぎ澄ませよ、ということ)」と教えてくれた大学の恩師を思い出したな。

    ヨシタケシンスケの『みえるとかみえないとか』も、優しさがあっていろんなことに気づかせてくれる絵本だったけど、この本の優しさも好きだった。

    この著者の経歴も、なんか面白そうで気になる。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.20

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