【感想】ウィンブルドン

ラッセル・ブラッドン, 池央耿 / 東京創元社
(11件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
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  • 最高のスポーツ小説であり、最高のサスペンス小説

     今回の配信で「うぉっ!」と声が出た。実は再版のアナウンスは知っていて電子書籍が出るかどうか分からなかったので文庫版で買ってしまったのだ。それでも改めて電子版でも買ってしまうぐらい、本作はすごい。
     私が初めて出会ったのは今を去ること20数年前。当時コバルト御三家の一人と呼ばれていた久美沙織の書いた書評からだった。当時はテニスをやっていたので「面白そうだな」と何気なく買ったのだが、一気に作品世界に引き込まれたのを良く覚えている。そして、一度でも本作を読んだことがある人は今回の再版に関して私と同じ感想を持ったであろう。

    「やっと返ってきた」
    と。

    実際、http://www.excite.co.jp/News/reviewbook/20141112/E1415724218274.htmlにも熱い思いが語られているし、他のサイトでも再版を喜ぶ声がいくつも上がっているのだ。

    あらすじは、、、
    テニス世界ランク2位のオーストラリア人ゲイリー・キングは全豪オープンの前哨戦で17歳のソ連(本作の出版時は冷戦期だったのだ)の天才プレーヤー、ツァラプキンと出会う。言葉も通じない二人だがテニスを通じて心を通わせる。
    だが、そこは冷戦期。キングと仲が良くなったこと自体がソ連幹部の不興を買い、その後のわずかな誤解からツァラプキンはオーストラリアに亡命することになる。
    やがて2人はウィンブルドンの決勝を戦うことになるが、その舞台の裏では卑劣な犯罪が計画されていて、、、
    と言う話。

    とにかく、あらゆるシーンが圧巻。ランキング1位のアメリカ人プレーヤーの罠により怪我をさせられたキングの復讐をツァラプキンがもくろむシーンなんか、最後の犯罪とは全く関係ないのにすごい迫力があるし(これだけでひとつの小説にして良いぐらい)、もちろん最後の決勝戦やそれに絡む犯罪も恐ろしいほどの迫力がある。ツァラプキンは今日のプレーヤーで言えばロジャー・フェデラーを彷彿とさせる美しいテニスを展開させるし、キングはキングで片手打ちのバックハンドから豪球を叩き出してくる。

    錦織圭の活躍でテニスに興味を持った人はもちろん、スポーツ好き、サスペンス好きのあらゆる人にお勧め出来る最高の小説である。
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    投稿日:2014.11.20

ブクログレビュー

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  • kikyo

    kikyo

    1977年発表、プロスポーツを題材としたサスペンス小説の名編。テニスの国際大会「ウィンブルドン」を舞台に犯罪の顚末を描くのだが、本作がメインに据えているのは、若き天才テニス・プレイヤー二人が切磋琢磨し、頂点へと上り詰めていく過程だ。
    豪快且つ正攻法のプレイで魅了するオーストラリアの俊英ゲイリー・キング23歳、天賦の才を持ち華麗な技術と純真な人柄で誰からも愛される亡命ロシア人ヴィサリオン・ツァラプキン17歳。この二人が図らずも出会い、テニスを通して友情を育んでいくエピソードを主軸にしており、何よりも青春小説として味わい深い。
    ウィンブルドン決勝。時には相棒として数多の強敵を倒し、互いに待ち望んでいた日を迎えたキングとツァラプキン。一方、同日に向けて計画を練っていた犯罪者グループが脅迫を決行。試合が終了するまでに要求が満たされない場合、観覧する英国女王と勝者は殺される運命にあった。ゲーム開始後、ツァラプキンはその事実を知る。敬愛するキングを決して殺させはしない。勝つか、負けるか。すべては、自分自身のプレーにかかっていた。師弟関係にあり、最大のライバルでもある二人が、クライマックスとなる最終戦で熾烈な戦いを繰り広げていく。タイムリミットが迫る中、最終戦のボルテージは最高潮に達し、劇的なゲームセットへと至る。

    読みどころは、当然のこと全編にわたり展開する白熱のゲームだ。ルールを知らずとも楽しめるように配慮されているが、テニスファンなら二倍も三倍も試合のダイナミズムを堪能できるだろう。
    会話で辞書が手離せないツァラプキンの設定を、犯罪者との攻防で生かし、結末でのツイストに繋げる伏線も見事だ。中盤から一気に緊張感を高め、終盤へと自然に流れていく構成も巧い。極めて過酷なスポーツでもあるテニスの魅力を存分に伝える稀少なミステリである。
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    投稿日:2019.11.06

  • winder

    winder

    テニス、ほぼやったことないし興味もなかったので、ずっと積読状態だったんだけど復刊されて字も大きくなったので読んでみることに。面白いじゃないですか!食わず嫌いはダメですね。

    投稿日:2018.12.25

  • mayun

    mayun

    40年ほど前に書かれたウィンブルドンを舞台に企てられた犯罪を描いたミステリー。
    五年くらい前からテニス観戦にはまった身として試合中の心理描写はとても楽しかった。
    ただ、ミステリーとしてはそんなに大した仕掛けも感じず、途中から単調に感じた。続きを読む

    投稿日:2018.07.30

  • 69hach

    69hach

    名作。
    前半はキングとラスタスの蜜月…友情?(笑)
    後半がほぼ二人の1試合のみと云う大胆な構成。
    邦訳小説の中でも、読み難い部類かも知れないと思いました。無駄な説明を削いでおきながら、機知にとんだ文章で、ささーっと読み進めてしまうと、誰の台詞だったか覚束無くなったり、急に場面が変わっていたり。
    しかしこの文章のお蔭で後半のテンポが素晴らしい出来になっている事も否めません!

    解説にも有りましたが、テニス全く分からない人間でも楽しめました。とにかくヴィサリオン…ラスタスが可愛くて萌え苦しいです。はっはっは。
    続きを読む

    投稿日:2017.08.11

  • bvbo

    bvbo

    最初から二人がすごい仲良くて、どんな事件が起こるのか…と心配になってしまった(笑)35年ぶりの復刊ということで、時代背景(ソ連とか)が歴史を感じる…内容は今読んでも大丈夫でした。

    投稿日:2015.12.26

  • ニコル

    ニコル

    ウィンブルドン大会男子シングル決勝戦。
    ライバルでもあり親友でもある人気プレーヤーの両人が雌雄を決する試合の最中、要求を飲まなければ観戦中の女王と試合の勝者を殺害するという脅迫状が届く。

    勝敗が決する前に犯人を取り押さえなければならない警察、お互いを守る為に終わらせられない試合。
    緊迫と情熱の名勝負が熱い!

    デッドリミット型のサスペンスとしては少々物足りなく緊迫感もイマイチ。しかし、その分テニスの試合は白熱します。ラスタスとゲイリーという二人のテニスプレーヤーの友情が描かれる前半が丁寧にあるからこそ、後半の試合がおもしろいというものです。

    大観衆の中、自分を含めた人命とプレーヤーとしての名誉がかかる壮大なスケールで、しかしどんどん自分の内に収縮していくような集中力に息を飲みました。
    ミステリ部分はちょっとした味付け程度で、まさに命懸けの試合が素晴らしいスポーツ(ミステリ)小説。
    続きを読む

    投稿日:2015.08.21

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