【感想】21世紀の貨幣論

フェリックス・マーティン, 遠藤真美 / 東洋経済新報社
(19件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
4
7
3
1
0
  • ものすごく迂遠

    著者の経歴を見ても経済官僚であり、学者ではないのでそのつもりで読む必要がある。2008年を受けて2013年に書かれた本であることも留意が必要。

    前半の基本的な態度は「現在の不兌換紙幣の貨幣論で過去の通貨をかたる」なので、内容的には相当の不備がある。が、学説ではなくエッセイのようなものなので気にしてはいけない。
    この経歴の人がこんなことを書くのかと言うのが随所に出てきて本当に衝撃を受ける。まあ、専門外はみんなこんなもんだよね、と言うところ。

    不兌換通貨を前提に語るので、なぜ「悪貨は良貨を駆逐する」のか、江戸期前の日本のような通貨非発行国はどうなるのか、中国や日本のような計るタイプの通貨の定義、「お金が存在しない」とするメソポタミアの諸国でどのように産物を分配していたのか、とかご意見を伺ってみたいものが次々出てきます。「マネー」と「通貨」が混在して語られているのも原因と思うのですが我田引水。引用も「19世紀の経済学者の何とかさんが言うように」とかです。で、論証は無しと。
    また、西洋人だからか東洋や東南アジアについての貨幣史は知識が無い様で、その面からも「あれれ」と。
    まあ、褒められたものじゃないなと。鵜呑みにせずチャンと消化できればそれなりに面白いですけどね。

    後半はおそらく筆者の信念や体感に近い部分でできている。正直後半だけで良いのでは。別に古い貨幣論を否定しなくても経済学の素養があれば読者も不兌換通貨の概念や信用の概念から逸脱しないと思う。
    で、本当に著者が否定したいのは現在の経済運営そのもので、その運営の下敷きになっているのが営々と組まれてきた経済理論でその一部として貨幣論があると。すごく迂遠な構成になっている。

    ただ、中央銀行を含む銀行制度を否定しつつ、信用創造制度を社会的に維持する必要があるといわれると、新しい用語はともかく、対策は無いんだなぁとよくわかる。
    最終的には新たな公平で豊かな社会を生み出す経済運営を実現するには、一人一人の日常生活が大事だよとなって腰砕けする締め。

    何か身になるものと言うことなら、金貨銀貨から兌換通貨へのパラダイムシフト、兌換通貨から不兌換通貨へのパラダイムシフトに気をつけつつ後半だけ読めばいいんじゃ無いかな。ただ、自分だけが納得しているような文章です。せめて抽象概念についてはもう少し説明がほしい。前半要らないから。
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    投稿日:2019.07.16

ブクログレビュー

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  • gatumaruhahaha

    gatumaruhahaha

    マネーとは何か?に対して興味深いインサイトを感じる一冊。市場部門に近い経験かつ経済に深い興味がないと読むのはちとしんどいかも。

    投稿日:2021.07.04

  • AYA

    AYA

    『マネーはモノじゃなく、社会的技術である。』
    貨幣が物々交換から生まれたと思い込んでいたが、そのような記録は見付かっていないらしい。
    現代のマネーの在り方に至るまでの歴史的背景も大変興味深いものでした続きを読む

    投稿日:2021.04.11

  • ロップー

    ロップー

    貨幣は自然発生的に生まれたものではなく、社会的な技術である。その標準を決めるのは社会であるはずだが、ジョンロックのところで経済学は道を誤った。貨幣経済において銀行の果たしてきた役割は殊更に多く、モラルハザードを防ぐためにどのような規制を作るかなどは大いに議論になってきた。解決策としてナローバンクが挙げられる。だが結局、貨幣の本質を中央銀行や影響力のある人たちが知れば良いのではなく、貨幣経済に暮らす我々が知らなければ意味はないのである。

    かつては物々交換で、それをより便利にするために貨幣が作られたと思っていたがそうではなかった。正統派経済学は脇道にそれてしまったとのことだが、貨幣経済の発展と富の社会への分配はもはや一致せず、かつての恐慌のようなことが起きないようにするには銀行といった金融機関の果たす役割は大きいのだと思った。少し難しかった。コロナショックにおいては、金融危機は起きてないように思われる。そのとき貨幣経済にできることは何なのであろうか。
    続きを読む

    投稿日:2020.08.01

  • okonjo

    okonjo

    物々交換からマネーの誕生してきたというのは間違った理解なのだそうです。
    信用に関するはじめの章と後半のロンバート街の話は面白かった。
    中世ヨーロッパの話は関心なし

    投稿日:2020.03.22

  • Treasoner

    Treasoner

    古代文明以来の経済・金融システムの概要や経緯をうまくまとめており、自由資本主義経済が支配する現代システムの問題点にまで至る内容。 各論も総論も扱って多くの章がテーマごとに連なっていく内容のため読み物としても面白かった。
    経済学や金融会社が欠陥だらけである理由が良くわかる。
    度重なる金融危機のリスクを内包し、超格差社会となった現代を暗黒時代としており、貨幣思想の変革で金融システム抜本改革が必要との主張である。 解決する方法としてナローバンク構想が挙げられているが、今後の方策に取り入れられていくのか注目したい。
    経済・金融から紐解く歴史解釈として、なぜ欧米が覇権を制したか、なぜ英国で金融革命(産業革命)が起きたかをイメージできるという意味で、帯にダイアモンド級と謳ったのであろうと想像。
    続きを読む

    投稿日:2019.06.01

  • kuwataka

    kuwataka

    このレビューはネタバレを含みます

    国際資本を理解するための本。

    マネーとは何か、なぜマネーに翻弄されるのか6000年の歴史を紐とき解説。資本主義の未来を問う。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2019.05.09

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