【感想】天地明察(特別合本版)

冲方丁 / 角川文庫
(12件のレビュー)

総合評価:

平均 4.4
6
5
1
0
0
  • めんどくさい×めんどくさい=おもしろい

    江戸時代の学者が暦をつくる話である。それの何がどうすごいのか。というか面白いのか。

    歴史学を学んだ者として、日本で、いや、漢字文化圏における「暦」のもつ意味は知っているつもりだったし、本書の内容もだいたいその範囲内であったと思う。
    暦は農業だけでなく、実は政治的にも非常に大事なこと。そうなんだが・・・

    正直、あまり興味のない分野だった(笑)
    歴史に興味を持つ人の多くはそんな地味なところよりももっと華やかな(?)ところにいくではないだろうか?

    が、読んでみるとなかなか面白い。
    良い意味で「歴史小説」らしくないのだ。

    主人公・安井算哲は数学オタクの碁打ちで、幾何学の問題なんかが本文に出てくる(笑)
    自分は数学の問題を解くことに喜びを覚えるたちではないし、むしろめんどくさいので、幾何学の設問は軽く飛ばして読んだのだが(笑)、
    科学者の探究心というものには何だか心を揺さぶられるものがある。

    で、科学者のピュアな探究心と、東洋史で習った「暦」の持つ意味がパシーンと合わさったとき・・・

    「数学」(めんどくさい)×「暦の歴史」(めんどくさい)=面白い

    という感じになったのだ!負の二乗は正になるというやつか?
    こういうのがこの小説の良さなんだなあ。

    派手な事件をコテコテに盛るのとはまた違う面白さ。

    ちなみに合本版には文庫本の上・下に加え、「日本改暦事情」という本編の原型となったものも収録されていてお得。
    カバーしている内容は本編と同じ範囲であるが、かなり短い。
    何が原案としてあって、どこを膨らませていったのか、というのを知るのも面白い。
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    投稿日:2014.10.15

  • 素直に面白く読める。

    和算を大成した関孝和のことは学校で習ったことをある程度覚えていましたが、安井算哲という人物については、正直、この本を読むまでほとんど知りませんでした。日本独自の暦を作成するにあたり大きな貢献をした偉大な学者と言えそうです。もともとは江戸城で将軍の前で御前囲碁試合を行う当時としては最強の碁打ちの一人だったようです。現在のプロ棋士に数学者のような理論派の棋士が何人かいますが、安井算哲という人もそんな頭の構造を持っていた人なようで、碁所としてつとめる傍ら、精密な測量と複雑な算術を必要とする暦学を修得しています。
    この小説の特徴は、作者が登場人物各人にそれぞれ思い入れをいれるというか、公平な目配りをしているというか、軽く扱われている登場人物がいない点にあるように思います。ですから、関孝和や徳川光圀のような脇役も実に生き生きと動いていて、読者を飽きさせないだけでなく、(一つ間違えば主人公をくってしまうような)独特の緊張感を醸し出しているように思います。
    映画は見ていませんが、結構ビジュアルな描写が多いので、自分なりのシーンを思い浮かべながら楽しく読める小説だと思います。本屋大賞受賞作品に外れはほとんど無いといえますが、この小説も個人的には「当たり」でした。
    すべての本読みにおすすめです。但し、冲方丁ファンには、この冲方丁はややおとなしく感じるかもしれません。
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    投稿日:2014.12.23

  • 面白く心に響く

    碁打ちにして算術好きの渋川晴海
    そしてえんとの出会い
    算術好きが高じて改暦へとのめりこむ
    天と地が明察とは良い響きですね。
    長い年月をかけ暦を解明する心に響きます「からん、ころん」

    投稿日:2014.08.09

  • くじけても諦めなかった、その先に…

    まさに天命。暦を作ることは、新しい世の中を作ること。天文学、算術、あらゆる学問と政治的根回し…すべての才覚が整ったそのときだからなし得た改歴。多くの人の想いを背負い、成し遂げたのは幕臣の肩書きを持たないひとりの碁打ち算術暦学者。挫折を繰り返しながら、自分の弱さをさらけ出し、周囲の素晴らしい人格者に支えられ邁進した春海の人間らしい強さと弱さがとても魅力的。辞書を作ることに生涯をかける人を描いた『舟を編む』に通ずるものを感じた。続きを読む

    投稿日:2014.10.16

  • 泰平の江戸時代に行われた歴史的変革

    暦と言うものがここまで国を揺るがすとは.....。読めば読むほどこの時代での改暦が宗教、農業、政治までも揺るがす一大事な事業なのだと、読んでてどんどん引きこまれます。たまにはこう言う歴史小説もとてもたのしい。続きを読む

    投稿日:2016.01.10

  • 失敗してもあきらめない勇気、10代20代の若者に読んでもらいたい

    割引になっていたので特別合本版を購入。上下2冊分を一気に読み切ってしまいました。
    渋川春海の名前は日本史で習って知っていましたが、その時代、その後の江戸の文化に与えた影響を知り、そうだったのかと納得するとともに、春海の失敗してもあきらめない勇気に感動しました。
    歴史小説であるとともに、一人の人間が1つのことに打ち込んで悩み、成長していく姿を描いたさわやかなストーリーです。10代20代の若い人にお薦めです。
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    投稿日:2014.09.13

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