【感想】いのちの食べかた

森達也 / 角川文庫
(38件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
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16
6
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  • 食卓と自分との関係性

    昨晩食べたお肉は、どこから来たものなのか?
    肉が食卓に並ぶまでの過程を、ドキュメンタリー監督の森達也が平易な言葉で辿っていきます。

    魚も、肉も、生き物の命をいただいているもの。しかし、本書はそうした命への感謝という話だけでなく、工場ではどのように動物たちが処理されていくのか、それにはどんな人たちが従事しているのか、表立って語られることの少ない事実に目を向けます。

    動物たちは、屠殺場で肉へと姿を変えます。そこで働く人たちは日本の歴史上、差別的に扱われることが少なくありませんでした。人間は、どのようにして同じ人間にレッテルを貼っていくのか? 肉の生産現場から始まった話は、自然と社会問題、戦争といった話題に繋がっていきます。

    一筋縄ではいかないテーマだけれども、子供たちに語りかけるような語り口のおかげで気負いなく読み進めることができる本書。食と自分とがどのように結びついているのか、その関係性を改めて考えてみませんか?
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    投稿日:2016.01.05

  • 良い意味で、

    以前読んだ本のコメントに、本のタイトルと中身が違うことに少々苦言を呈したことがありました。
    本書でも、タイトルから受けた印象と内容に差異を感じましたが、このことが本書では私にとって良い印象につながりました。
    どうか、本書のタイトルと表紙を見て受けた印象のままこの本を手に取ってみてください。
    すると皆さんが、これまで気にしていなかったけど大切なこと、悪気がなくても目をそらせてしまっていたことに心を傾ける良い機会になります。
    本書は子供向けの本のように分かりやすく書かれています。ですが、ぜひ大人の皆さんも読んでみてください。
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    投稿日:2016.05.12

ブクログレビュー

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  • ヒヤマトモヒロ

    ヒヤマトモヒロ

    食卓にのぼるお肉。それはもちろん生きていた牛や豚や鶏だった。のは誰でもわかる。では、生きていた動物はどうやってお肉になるのだろう。食卓から見つめる構造的暴力。

    いわゆる食育的な、「いのちの授業」的な本を、森さんが書いたんだろうか?という疑問と、森さんなら食肉の問題をどういう視点で書くんだろうか?という好奇心があって手に取ったのは、実はこちらより前に出版されたよりみちパンセ版。
    半分は予想通りで、森さんは食肉加工業者の歴史をたどって現代まで生きる差別に切り込んでいて、森さんを知らない人が読んだらけっこう頭を殴られたような衝撃なんじゃなかろうかと思った。この本で語られる差別というのは、実は非常に根深くて今でも生きているんだな、と気づいたのは時折関西方面に行くようになったごく最近のことだ。それまで差別というものに関して、実感する機会もじっくり学ぶ機会もほとんどなかったといっていい。それは、こういったことがこの国ではアンタッチャブルの扱いを無言の圧力の内に受けているからだろう。でもその同調圧力の中で、この問題が無かったことになるならば次に起こるのは同じ歴史だ。だから、森さんが口を酸っぱくしてこの本に書いているように、「知ること」はこの国や人を理解しようとする上でこの上なく大切なのだろう。穢れを誰かに押し付けて、それを見なかったことにして平然と生きることに、私たちは慣れすぎている。
    ところでこの本のカバー、五十嵐大介さんだ。となると「リトル・フォレスト」といっしょにお楽しみください。
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    投稿日:2023.08.08

  • あいぼん

    あいぼん

    小学生高学年前後のこどもたちにぜひ読んでほしい。
    難しい漢字にはふりがなが添えてある。

    食べ物がどうやって、私たちの食卓に届いているのか、なかなか表に出てこない、リアルな工程を知ることができる。
    めて、自分のいのちをつなげるために、他者のいのちをいただいているのだと、痛感させられる一冊。
    そして食べ物だけでなく、人間の矛盾、様々な差別や戦争についても話は広がる。
    結局、人間は、人を傷つけたり傷つけられたりしながらしか、生きられないのだ、と。

    いのちはかけがえのないものなんだということを自覚し、真剣に生きていこう。
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    投稿日:2023.05.02

  • 司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    お肉が僕らのご飯になるまでを詳細レポート。おいしいものを食べられるのは、数え切れない「誰か」がいるから。だから僕らの生活は続いている。“知って自ら考える”ことの大切さを伝えるノンフィクション。

    投稿日:2023.03.23

  • nuuupy

    nuuupy

    知ろうとするきっかけをくれる本。この年始に読めてよかったと思う。誰もが何かの犠牲で生きている。ことを知る。知った上で考える。

    投稿日:2023.01.04

  • fishbowl

    fishbowl

    中学生の心にも響きそうなノンフィクションは、なかなか見つからないものです。食肉に始まり、命の価値を考え、そこから差別にまで話を広げる話術の巧みさは素晴らしいです。と畜のリアリティに向かい合う必要性も感じつつ、その勇気が足りない私は、せめて命の価値だけは忘れないようにしようと、あらためて感じました。続きを読む

    投稿日:2022.09.09

  • chanaobook

    chanaobook

    お肉がどのような過程を経て、食卓にあがるのかを分かりやすく書いています
    子供の食育にも良いですし、大人になってから改めて食べ物について学ぶのにもおすすめです!

    と場についての話や、部落差別についての話まで深く取材されているのが伝わりました。
    過去の事実である部落差別や戦争での植民地化など、暗い歴史は腫れ物のように扱われます
    著者は、事実を受け止めた上で自分達がどのように生活や食事していくのかを諭してくれます

    ときをみて読み返したい本です。
    YOU ARE WHAT YOU EAT
    心に留めておこう…
    続きを読む

    投稿日:2022.07.12

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