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柴那典 / 太田出版 (25件のレビュー)
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総合評価:
yakitori
5
初音ミクとは何だったのか?
先日読んだ「プロジェクトぴあの」のリアルアイドルvsバーチャルアイドルのエピソードが面白く、バーチャルアイドルと言ったら「初音ミク」でしょうというわけで本書を読んでみた。アイドル論やオタク論が飛び出す…のだろうと思っておりましたが想像とは違い日本における新たなる音楽文化及び創作の場の誕生というマジメな、ですが非常に面白い話。 ボーカロイド発売会社クリプトン社の伊藤社長とヤマハの開発者剣持氏の談話で構成される「初音ミク」発売前夜の話は、音のサンプリング販売から始まった会社がボーカロイドの企画に至るまでの話やボーカロイド第一号は今程売れなかった事、DTMやMIDIなどの環境が整っていく中で肉声だけがどうしても再現出来ないなどの歴史と技術論が語られる。 そして奇跡の07年と呼ばれる「初音ミク」発売年。実はネット文化の定着や帯域の拡大、ニコ動とMAD文化、コミケでの同人音楽など正に「初音ミク」が受け入れられる社会的土壌が醸成されていたタイミングが2007年の夏だったのだという事がここでは語られる。 後半は「初音ミク」発売後、動画サイトでミクを使ってのカバー曲の投稿→オリジナル曲の登場→イラストの追加→アニメーション化→CG化→3D化と二次利用、三次利用されながらクオリティがアップされ「遊びの場」が提供されブームが拡大して行く様が語られる。そして「初音ミク」現象で他との決定的な違いが起こる。ボカロのオリジナル曲を人が逆に「歌ってみた」で投稿し出すのだ。実在のアイドルと同じ様にミクが認識された瞬間だった。この後、日本を席巻した「初音ミク」現象は、パリのシャトレ座で頂点を迎える。 最終章の伊藤社長の「ブームは去ってもカルチャーは死なない」は、これからの「初音ミク」のボーカロイド側面と音楽テクノロジーの側面からの未来話でナカナカ読み応えのある内容。 読み始めはバーチャルアイドルの話だと思っていたのですが、内容は「初音ミク」の音楽面をガチで取り上げた話であり、新しい音楽文化の誕生話。コレは以前読んだ「未来は音楽が連れてくる」という音楽ビジネスの本にノリに近い。本作を読むと日本の音楽シーンに彼女が与えた影響は計り知れないものだと感じました。 最後に私がオオッと来たエピソードを。 ヤマハ社内で歌声合成ソフトがまだ「Vocaloid」と呼ばれる前の開発コードネームが「DAISY」と付けられたのですが、コレはコンピュータが世界で初めて歌った曲「デイジー・ベル」にならったとの事。あの「2001年宇宙の旅」のクライマックスシーンでHAL9000が機能停止しながら歌った曲と言ったらわかってもらえるだろうか。 私はこのディープな話にやられました。このエピソードでピンと来た人なら本書を読んでも損はしないでしょう。 続きを読む
投稿日:2015.03.06
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yonosuke2024
「初音ミク史観」だけど、2007年のミクとニコ動でいきなりはじまったわけじゃないのにねえ。これはちょっと歴史館修正しておくべきではないか。
投稿日:2024.03.29
フラビオ
2020年12月1日読了。初音ミクに始まるボーカロイドがブームとなった2007~2009頃を「サード・サマー・オブ・ラブ」と定義し、その熱狂・熱狂につながる伏線と今につながる影響について論じた本。「ブ…ームはいつも大人が眉をひそめるところから始まる」とはご指摘のとおり、CDTVのランキングなどに「〇〇 featuring.初音ミク」名義の見知らぬ曲が多数ランクインしているのを見て「なんじゃこれ、訳わからん」と眉をひそめていた私はすっかり時代に取り残されたダサい大人なのか…。初音ミクの熱狂が、熱心なユーザーたちの創意工夫・その中で現れた才人たちの高品質な作品・環境を整えるためのメーカーの地道な努力と、何より「それ」が奇跡的なタイミングで起こったこと、たしかにこれは「サード~」と称するのにふさわしい音楽の大きな進化(革命、というのは少々大げさな表現だが、そう言ってもいいのかもしれない)ということが分かった。音楽には、まだまだ進化の可能性が残されているのかな。続きを読む
投稿日:2020.12.02
big3trainee
2020年「初音ミクはなぜ世界を変えたのか?」読了。ボーカロイドの開発から今ままでがとても分かりやすくまとまっていて、技術の発展や世の中の変化がよくわかる一冊。最後のインタビュー記事は、ボーカロイドの…話だけでなく、クリエイティブな活動の重要性が書かれていて、とても共感できる。(とりあえず紹介されていた曲のリストでも作ろうと思う。) <リスト作成予定> ●こどもと魔法(竹村延和) ●イーハトーヴ交響曲 ●恋するボーカロイド ●みくみくにしてあげる ●ストロボナイツ ●ラストナイトグッドナイト ●メルト ●恋は戦争 ●ワールドイズマイン ●ブラックロックシューター ●初めてのこいが終わるとき ●桜ノ雨 ●ODDS&ENDS ●千本桜 ●カゲロウデイズ ●初音ミクの消失 ●世界五分前仮設 ●表裏ラバーズ ●ハロープラネット ●アンハッピーリフレイン ●ひこうき雲(ユーミン、とりちゃん) ●deco27、八王子P、Kz、Supercell、黒ウサ、cosMo@暴走、buzz、ダルビッシュ、wawaka、ハチ ●2011年5月には、米国トヨタのCMに初音ミクが起用される。 ●MIKUNOPOLISinLOSANGELES ●キャッチコピーは「EverryOneCreator」。 ●THEENS(ボーカロイドオペラ パリでも公演)続きを読む
投稿日:2020.11.28
ハロルド
「初音ミク」が出始めの頃にパソコンの前で興奮した当時のことを、それから共に音楽や楽器を楽しんだ時間を、その時代背景や制作者側の意図と重ねながら読み進められました。 分量はだいぶ多かったですが、驚きと…納得、共感など様々な感情を抱きながら読めたので、飽きることはなかったです。 すごくまとまりがあって、かつ分野に富んだ1冊だったと思います。 続きを読む
投稿日:2019.11.15
sistlib
【所在・貸出状況を見る】 https://sistlb.sist.ac.jp/opac/volume/207075
投稿日:2017.10.03
ちえ
このレビューはネタバレを含みます
『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』 著者:柴那典 (著) 発行日:2014/04/03 評価:★★★★★ (所要時間:3時間) 読破冊数: 23/100冊 ■こんな人におすすめ ・初音ミクって何?オタクの好きな女の子?という人 ・60年代からの音楽の歴史を理解したい人 ・音楽というジャンルに関わらず、新しいものの誕生過程に興味がある人 ・0から1を生み出したいと思っている人 ■概要 2007年、初音ミクの誕生で三度目の「サマー・オブ・ラブ」が始まった。 気鋭の音楽ジャーナリストが綿密な取材を元にその全貌を描ききる、渾身の一作! ◆2007年8月に登場したボーカロイドソフト「初音ミク」。 ニコニコ動画を中心に「ボカロP」と呼ばれる一般ユーザーたちが大量の新曲を発表する原動力となった彼女は、 単なるツールやソフトウェアの枠組みを超え「音楽の新しいあり方」を示す象徴となった。 現在、初音ミクを使用した楽曲はオリコン/カラオケチャートにおいて上位を占め、 CDショップでは専用コーナーが常設され、海外展開も積極的に行われている。 ◆クリプトン・フューチャー・メディア株式会社伊藤博之氏・佐々木渉氏、 ヤマハ株式会社剣持秀紀氏など開発担当者、またニワンゴ株式会社杉本誠司氏など周辺関係者に多数取材。 さらには著者が長年続けてきたryo(supercell)氏、kz(livetune)氏、じん(自然の敵P)氏、とくP氏、 冨田勲氏、渋谷慶一郎氏らクリエイターへの取材を元に、 00年代の日本のインターネット発で生まれた熱気とエネルギーを描き出す。 ◆キャラクター文化やオタク文化、ネット文化、新たなビジネスモデルの象徴……。 様々な側面から語られてきた"初音ミク"の存在を初めて音楽の歴史に位置づけ、 21世紀の新しい音楽のあり方を指し示す画期的な論考である。 (amazonより) ■この本から学んだこと 音楽の歴史を60年代~現代まで振り返りながら 初音ミクについて紐解いていく、読み終わったらミクさん崇拝不可避な1冊。 ★『初音ミクは音楽業界の衰退を救った救世主である』 2007年、日本の音楽業界の見通しは暗かった。 CDが売れず、データは簡単に流出、盗用され 悪名高いコピーコントロールCDも発売されたものの 音質の劣化や再生機の故障など様々な問題をはらみ、2006年に完全に撤退。 「終わりの始まり」 「誰が音楽を殺したのか?」 そんなことがまことしやかに囁かれ このまま右肩下がりの落ち込みが続くのは、避けられないと思われた。 しかし、そこに登場したのが彼女「初音ミク」である。 結果、音楽は死ななかった。 彼女はただの、人間の代わりに歌うツールではなかった。 アマチュアの人々が彼女を使い 自由に曲を作り、ネットで発表し始めると(いわゆるボカロPと呼ばれる人々) それに触発された人が絵をかいたり、MMD(ミクミクダンスのこと。3DCG動画作成ツール)を使って プロモーションビデオを作成。動画投稿サイトにアップした。 さらにそれを観た人が彼女を主役に小説を書き、 ある人は彼女になりきり、コスプレしたり またある人は「踊ってみた」「歌ってみた」と自分たちで 音楽をプレイし始める・・・ 誰も想像しなかった、創造の連鎖が起こったのだ。彼女を使って。 彼女は現代の人々の『遊び場』を作った。 人と人とを繋げ、彼らの好奇心と可能性を広げて たくさんのクリエイターを、今も世に生み出し続けているのである。 ★『初音ミクは温故知新』 1960年代、つまり初音ミクが登場する40年前、日本では ヤマハがミュージシャンの登竜門としてコンテストを開催し、音楽学校を設立。 音楽家たちは皆、そういった『遊び場』で切磋琢磨していた。 この『遊び場』の提供こそ、現代で言うと初音ミクである。 それから20年、1980年代には次々と新しいデジタル楽器が普及し アマチュアミュージシャンの制作環境ががらりと変わった(①②)。 ①MIDIとDTMの台頭 (MIDI= Musical Instruments Digital Interfaceの略で、 1981年に策定された電子楽器同士を接続するための世界共通規格) (DTM = Desk Top Music(デスクトップミュージック)の略で、 パソコンを使用して音楽を作成編集する事の総称) MIDIでいわゆる打ち込みと呼ばれる音楽制作の手法が可能になり、 コンピューターで音楽を作るという今では主流のDTMも、この時期に徐々に広まっていった。 ②安価なデジタル楽器の発売 70年代までのシンセサイザーは 数百万円するようなプロ向けだったが、 80年代に入ると10万円、20万円と 比較的リーズナブルなものが発売されたのも、宅録が浸透するのに画期的だった。 この頃ヤマハから発売された「DX7」というデジタルシンセは 多くのミュージシャンが愛用し、 80年代の音楽シーンを象徴する名機として語り継がれているのだが なんと、これが初音ミクのキャラクターデザインに入り込んでいる。 彼女の左腕にある操作パネルに、エメラルドグリーンの髪の色。 それは「DX7」「DX100(廉価版)」のボタンや色を模しているのだ。 そもそも、初音ミクのエンジンである 歌声合成技術(ボーカロイド)を開発したのも 「DX7」「DX100」を作ったヤマハである。 つまり、DTMという文化の最も象徴的な機材の1つである「DX7」のデザイン要素を 彼女の体にちりばめることによって DTM文化に対する、リスペクトを示しているのだ。 このことからも解るように、彼女は『温故知新』である。 ある日突然、初音ミクが彗星のように現れて 世界を変えたのではない。 初音ミク誕生の背景には、 60年代から受け継がれてきた音楽の歴史があり 彼女は歴史の変容の結果そのものなのだ。
投稿日:2017.09.26
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