【感想】死都日本

石黒耀 / 講談社文庫
(73件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
35
22
11
1
0
  • これでもかっ!と日本が破壊されていく。斬新!面白い!しかも戦略的。一気読み必至です。

    1000ページ近い本ですが、これは一気読み必至の面白い本です。日本の自然災害をテーマにした本は数多くありますが、その中でも群を抜いた面白さでした。まず、科学的根拠がちゃんとしてるうえに、分かりやすい。日本の火山や地殻構造に一気に詳しくなれます。あと、伝奇要素が斬新。古事記を独自に解釈して古代の噴火イベントと関連付けていますが、それがすごく説得力がある。さらに、災害対策の視点が国際的で戦略的。従来の災害小説では個人のサバイバルに主眼が置かれているものが多い中、国家としてどう立ち向かうかを首相の視点で描いているのが凄い。しかもそれが非常に目から鱗的な戦略発想で書かれている。最後に、これでもかっ!と次々に破壊的な災害が起こるのが、悲惨や悲しさを通り越して爽快ですらある。災害は人知を超えた領域であるという割り切りが凄い。ちょっとでも興味を持ったならこの本は絶対楽しめます。超オススメ。続きを読む

    投稿日:2014.12.24

  • 息をつかせぬ展開とうんちく満載の災害シミュレーションノベル!

    石黒耀さんのデビュー作。もともと火山に興味があったという事もあり、先に読んだ「富士覚醒」ともかぶる内容や仮説がすでにこの著作の中で展開されている。
    内容は霧島火山が大昔存在していたとされる加久藤火山のなれの果てであり、その加久藤火山が大規模な噴火をしたらどうなるか、という災害シミュレーションと、その中で奮闘する主人公を含めた登場人物たちを描いていて、とても新人とは思えない息をつかせぬ展開とうんちくに富んだ脱線とが絶妙に絡み合い、先が気になって仕方ない。特に「神の手作戦」と名付けられた日本の命運をかけた作戦はある意味奇想天外なモノで、現実はこううまく事が運ぶか微妙だが、説得力のある筆致で防災と都市計画のあり方を見直すことに意識を向けられる。
    こんな面白い本を読まないまま過ごしていたのが勿体ないくらい、面白い本であった。
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    投稿日:2014.01.29

  • SFを超えたハザードノベルズの金字塔

     実はタイトルと書籍説明を見て、読んだことあるかもなぁと思いながらもダウンロードいたしました。そしたらば、案の定、昔読んだ記憶がありました。家中をまさぐれば本が見つかると思いますが、そのような事は、書店めぐりが好きな人にとっては、よくある話ですよね。その点、Reader Storeの場合は、ちゃんと警告してくれるので複数購入の心配もなく安心です。
     ま、そんなことはさておき。今回、書籍説明を見て読みたくなったのは、未だ進まない原発事故の後始末と、昨今多くなってきた火山活動が、どうしても気になってきたからであります。
     この小説は、20XX年。九州は宮崎沖で地震が発生し、霧島で破局的噴火が発生することから始まります。物語は、事態になんとか立ち向かおうとする人々を描いていくわけですが、かなり専門用語が飛び交うため、読みながらその詳細を調べたくもなりますし、また、私の様に九州の地理に詳しくないモノにとっては、主人公が車で逃げ惑う道筋を追う為に、傍らに地図も必要となります。最後はどうなるのか、どう結末をくくるのか、気になって仕方のない展開なのですが、気持ちがはやってもなかなか先に進めない状態が続きます。とは言っても、その内とにかく先が知りたくなって読み飛ばすことになるのですが。
     物語の展開は、個人的なサバイバルシーンと、国家としてどう対応するかを描くシーンが同時進行で描かれていきます。長編小説ではありますが、描いているのは、わずか1~2日間のことです。ラストは、微かな希望が遠くに見えてきたかなって
    所で終わります。仕方ないかもしれませんけど、ちょっと食い足りないかもしれません。また、「神の手作戦」なる政策は、グローバル経済に疎い私には、今一つピンときませんでした。勉強が足りませんね。
     作者はこれが最初の作品で、本業はお医者さんだそうですが、古事記や聖書の描写が沢山引用されるし、また地学的知識は半端ではありません。かくいう私も、卒論は土石流について書いておりますので、まんざら素人というわけでもないのですが、その膨大な知識量には感服いたします。
     また、かなり辛口な表現も多々あります。
     たとえば、大災害後の日本を、事実上の支配下に置きたいアメリカは、こう言います。「飢えた日本人が、餌をくれる国に忠実なのは太平洋戦争で実証済みです。」  あるいは、これまでの日本を評して、「(民主主義国家とは怪しいもので)議会とそれを支える官僚組織は、地方も中央も給与所得者層から効率的に搾取して支持組織に分配するグロデスクな集金機関化していた。」
     さらに大災害の後に、もし日本人が大挙して移住する場合を想定した大統領の感想として、「優秀な頭脳や技術を持つ日本人だけ一万人位なら大歓迎だか、ただ勤勉なだけの日本人が何千万人も我が国に来れば、アメリカの労働者が職を失ってしまう。断固そんな事態は避けねばならん。かといって中国に持って行かれては…。」
     そして極めつけは、物語上で先頃政権交代をして現首相となった人物の嘆きです。
     「こんなにも恐ろしい摂理の上に立国していることも忘れ、バブルに踊り、国中原子炉だらけにした挙げ句、言うに事欠いて『我が国は神の国』だと?経済が良かったときに国民の安全のために投資していれば、こんなていたらくにはならんかったろうに。下らんことに貴重な税金を遣いおって。」   
     ひょっとすると、筆者が最も言いたかったは、これかもしれません。
     物語の舞台が20XX年となっているのも、なんとも不気味です。そして、再稼働準備が進んでいるという川内原発が、物語の中ではいち早く燃料棒を抜き取り、災害に備えているのも皮肉なモノです。
     思えば、小松左京の名作「日本沈没」を読み、映画を見たのは中学生の頃だと記憶しています。勿論、その時も衝撃的でした。竹内均のプレートテクトニクス理論の本を、判らないなりに読みあさりましたっけ。あれから日本の国土にも色々ありました。
     調べてみると、この「死都日本」が発表されたのは、2002年。文庫になったのは2008年。阪神淡路大震災は1995年ですが、東日本大震災は、まだ起きておりません。出版された頃に比べ、世の中も変わってきました。SNSが発達している今なら、情報伝達の方法も物語の中とは変わってくるだろうし、木曽御岳の噴火では、現場における一般人の撮影映像が生々しく報道されました。そして何よりも、まだ東日本大震災の記憶が我々の脳裏には焼き付いています。
     我々の国土はどのような状態なのか、今一度、じっくり考えてみる一冊となることは請け合います。伊達に数々の賞を受賞しているわけではありませんよ。
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    投稿日:2015.07.18

  • 阿蘇山大噴火は勘弁!

    世界の10%の火山が集まる我が母国。多数のカルデラが集まる九州。その意味を本書は教えてくれる。作者の示す「神の手作戦」は奇天烈かもしれないが、私たちがこの国で如何にして生きていけば良いのか、そのヒントはしめされているのだろう。単なる災害物や、空想物とは言えない。舞台は南九州、霧島であるが、九州の問題でもない。多くの人たちに読んで、そして考えてほいいと思わせる一冊。続きを読む

    投稿日:2014.12.13

  • これは凄い!!

    同じ作者の火山もので、「富士覚醒」がありますが、おすすめは断然こっち、「死都日本」です。
    描写がむちゃくちゃリアルで、読んでて本当に怖くなります。
    あくまで火山噴火が中心で、そこに徹して展開しているので、現実感が増します。
    怖い・・、だけど、面白いですよ。
    続きを読む

    投稿日:2014.05.01

  • 驚異の描写力

    火山の破局的大噴火によるディザスターパニック小説。

    もちろんフィクションなのだが、過去の歴史や伝承、火山学に基づいた予測と考察により、まるで実際起こった現場を見てきたかのような緻密な描写と桁違いの災害シミュレーションで、読んでいるこちらも息苦しさを感じるほど引き込まれた。

    いささか荒唐無稽に思えるところもあるが、日本の地表面積は世界の陸地の0.3%にも満たないというのに、火山の割合は世界の10%という現実、そして国内の火山地帯の最近の不安定な状況を見ていると、大袈裟ではなく今読んでおくべき小説なのかもしれない。

    ジョジョで例えると、

    究極生命体カーズでさえ火山の爆発的エネルギーには勝てなかった・・
    続きを読む

    投稿日:2015.05.10

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ブクログレビュー

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  • りーり

    りーり

    破局噴火による日本崩壊。
    災害へ立ち向かう学者、日本を守るため画策する政府、そんな日本を付け狙う諸外国。
    圧倒的科学的知見と政治の駆け引き。ただパニックを描いたディザスター小説ではない。

    投稿日:2024.05.04

  • 主婦ねこ

    主婦ねこ

    阿蘇に旅行に行くので再読!この小説のおかげですっかり火山ファンです♪『死都日本』の舞台は霧島火山付近ですが、阿蘇山も同じ九州のじょうご型カルデラ火山なので、予習(?)はバッチリ!

    『死都日本』の舞台は九州南部の火山地帯。破局的噴火に巻き込まれた主人公・黒木の運命を描く災害小説的な側面と、噴火によって国家滅亡の危機に瀕する日本を存続させる為に国内外で知略を尽くす、もう一人の主人公・菅原総理を描く政治小説的な側面もある、濃厚な超大作です!

    ストーリー自体はフィクション(…というよりも火山が噴火したら何が起きるかをシミュレーションした小説のような感じ)ですが、火山に関する解説や過去の事件は事実に基づいていて、アイスランドのラキ山の噴火のせいで日本で江戸時代に大飢饉が起きた事があるとか、噴火の後の土砂災害がかなり危険な事とか、オドロキの事実の連続!

    著者の石黒耀さんはなんとお医者さま!…なのだけどかなりの火山好きのようで、火山に関する記述は科学的にも確かなものなのだとか(しかも図解あり)。さすがお医者さま。火山学者の中での評判もよく、「破局噴火のリスクと日本社会」というシンポジウムが開催されるほど!民俗学、政治、経済の知見を生かした緻密なストーリー展開と、素朴なセリフ回しや表現が…

    ギャップ萌えです(о´∀`о)!!

    火山大国・日本に住む人は全員読んだ方が良い珠玉の名作!私は『死都日本』の影響で、トンガ火山が噴火した時は米をひとり大量買いしました(^_^;)。価値観が変わる一冊です!
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    投稿日:2024.04.12

  • おびのり

    おびのり

    2002年第26回メフィスト賞受賞
    2005年第15回宮沢賢治賞奨励賞受賞
    2005年日本地質学会表彰 火山界からのエールですね

    作者の石黒さんは、医師であり火山マニア(に違いない)。SF災害小説。クライシスノベル。
    九州霧島山の地下加久藤火山が破局的噴火。そこから九州に連なる火山が活動を始める。
    他のメフィスト賞とはちょと違うのでは⁉︎
    “日本沈没”や“復活の日”みたいなやつでは⁉︎
    期待感が膨らみます。
    マニアらしく使われている地図や地名、火山等、かなりの知識の下のリアリティです。
    火砕流が海上を進み、ついには鹿児島まで到達。
    九州はほぼ全滅。
    火山学者がこの火砕流から逃げながら、災害の被害の広がりを表現していきます。
    この後、南海地震、東海地震へと予測される中、日本は国家として生き残る為の戦略を立てる。
    「神の手作戦」として、売られる円を買い支えアメリカ政府と交渉を試みる。
    最後の一手は、首相により発表された日本国土の復活案。太古からの災害を避ける新しい国土造り。この戦略により死都日本は復活の希望を得る。
    ストーリーの中で古事記の中の火山活動描写や ヨハネ黙示録大バビロンの焼失を盛り込む。ここが興味深いところなんだけど、そこで緊迫感が薄れたりするような気もするんですが面白いんですよね〜。
    続きを読む

    投稿日:2024.04.01

  • 9678

    9678

    600ページ超の長編読了しました!読み応えのあるSFでした。日本の抱える宿命である火山噴火について専門的な説明も加わり楽しめました!

    投稿日:2024.02.17

  • Masanori

    Masanori

    西暦20XX年、有史以来初めての、しかし地球誕生以降、幾たびも繰り返されてきた“破局噴火”が日本に襲いかかる。噴火は霧島火山帯で始まり、南九州は壊滅、さらに噴煙は国境を越え北半球を覆う。日本は死の都となってしまうのか? 火山学者をも震撼、熱狂させたメフィスト賞、宮沢賢治賞奨励賞受賞作。(講談社文庫)

    黒木伸夫
    本作品の主人公。日向大学工学部助教授。「宮崎を造った火山の話」を地元紙に連載し、加久藤火山の存在や火山噴火の恐ろしさを県民に広めた。火山オタクで防災工学の講義はいつも火山の話になる。その話芸には、学生達のファンも多い。国家プロジェクト"K作戦"の一員(コードネームは「クロマツ」)としての活動を真理や岩切に話せずに苦悩する。彼自身の予測よりも早い加久藤火山復活のその場に岩切と共に立会い、決死の脱出を試みる。

    黒木真理
    伸夫の妻。大阪出身の麻酔科医。
    女子大生時代の観光旅行中にフィールドワーク中の伸夫に出会い、結婚した。伸夫の話芸の一番のファンでもある。噴火当時、日南はまゆう病院に勤務中だった。
    岩切年昭

    宮崎日報の記者。伸夫の日向大学での後輩。
    「宮崎を造った火山の話」の担当をしていた。黒木伸夫と共に加久藤火山の破局噴火からの脱出行を行ったことにより、"K作戦"に関わっていく。
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    投稿日:2023.09.09

  • おおたろう

    おおたろう

    【きっかけ・目的】
     何でこれを知ったのかよくわからない。しかし最初に読んだ時はとても興奮した一冊だった。日本沈没とどっちにするか悩んだけどこちらを選択して読んだ。

    【感想】
     一番最初に読んだ時の評価が一番高い。なかなか内容は手が込んでいる。
     九州南部、加久藤霧島火山の破局的噴火を題材とした災害パニック小説だ。実際に噴火を迎える前に多くの伏線が仕込まれている。
    ①古事記から神話時代の話を昔の噴火がモチーフになっていることを繰り返している。
    ②日本政府の政権交代から噴火予知の裏事情が①とあわせて描かれている。
    ③破局的噴火を前にして神話とシンクロさせている。

     テンポよく読めるのだが、古代神話が噴火など伝説として昇華され伝承されることを繰り返すあまりパニックが被害数値だけにとどまってしまったことはとても痛い感じがする。政権交代時の混乱に乗じたK作戦本部なども描くのはいいのだがもっと何かいい手段がなかったのか読んでいて気になった。読み返すとどさくさ紛れ感があり中途半端になってしまう。

     そして、①②③という流れの中で伏線回収が最後あまりできていない点がすごい気になる。噴火に誘発される形で東南海地震が来ておしまいになるが、そもそも噴火中心に展開してきてそこに地震が重なることが前半から後半にかけて何も情報として展開されていない。古代神話から着想を得て新しい日本が出発するのはいいのだが、神話が伏線となっているのであれば噴火そのものがあまりに大きすぎ規模が伏線を超えすぎている感はある。

     さすがに津波は?家屋などの倒壊は?想定被害は?ということが全て置き去りで、それでいて次の新しい時代は、という流れは強引すぎないかと思ったわけです。

    【終わりに】
     神話とシンクロさせておいて地震との寓話はないのかとか、噴火ばかり予知して地震はなかったのかとか、とにかく噴火を描きたかったの!という小説だった。面白かったんだが、最後の終わり方がかなり消化不良だった。
    続きを読む

    投稿日:2023.04.23

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