【感想】それから

夏目漱石 / 岩波文庫
(47件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
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14
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  • すさまじい…。夏目漱石恐るべし。

    現在、改めて朝日新聞に連載中ですが、むかし最初の方だけを読みかじっていただけだったので、ちゃんと最後まで読んでみました。夏目漱石の「それから」はこんな話とは知りませんでした。迂闊でした。最後の方はもうノンストップ。これが当時新聞に連載された時はおそらくとんでもない反響だったんでしょうね。今、読んでもこの文章から感じる迫力は、まったく色あせていないですね。驚きです。(とはいえ、この感触は、いろいろ様々経験して、この歳になって読んだからかなあ…)続きを読む

    投稿日:2015.08.22

  • すぐれた文学作品

    草枕、三四郎に続いて、夏目漱石は3作品目。やはりというか、当然ながら文体の美しさや表現の豊かさ、博識さに驚き、圧倒され、感動しながら読みました。

    主人公代助という人のイライラするほどの現代性に、まず驚きました。こういう人って、小説の描かれた時代よりもむしろ現在の方が多いのではないでしょうか(当時のことを知らないのに言うのもなんですが…)。代助のように惜しみなく金銭を与えてくれる裕福な親や兄弟はいなくとも、大人になりきれずいつまでもモラトリアムを延長している人いますよね。リアルですよね。物語としては、私はそういった部分は読みたいとは思えないところですが、ナルシスティックな理想主義者で実際はなんら生産性のない人の描写のリアルさに、漱石の言葉の力の深奥を感じました。

    また、そのような代助の人格の肉づけがしつこいほど精緻になされることによって、破滅的な物語の結末への必然性がなおさら説得力を強く持つことになるのだと思いました。

    他人から見たら、愚かで恥知らずでみっともないだけの不倫が、ともすれば陳腐な、巷の世間話にしかならないこのテーマが、当事者からするとまったく違う価値を持っているということを、そしてその両方の視点を芸術的な文体で描いていて、ちっとも白々しくありません。

    最後の方の場面や、物語の終わり方は、とても好きになりました。三四郎の静かなエンディングとは違う、胸騒ぎを覚えるような感覚で、「三四郎のそれから」として読むぶんにも、対比的で面白いと感じました。

    素晴らしい小説でした。
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    投稿日:2016.02.03

ブクログレビュー

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  • 長井代助

    長井代助

    当たり前だけど略奪愛に対して世間や家族はいい思いはしないのはわかっていても応援したくなる。代助のだらけ格好悪いところも嫌いになれない。人はなかなか決心できず、行動できないものだと再確認させられた。門を早く読みたいと感じた。続きを読む

    投稿日:2020.09.07

  • seaurchin

    seaurchin

    主人公は数えで30になる青年「長井代助」。
    彼は裕福な家に生まれており、実家のお金で一人暮らしをして書生を置き、読書をしたり演奏会に行くなど、働かずに自由気ままに生きています。
    夏目漱石の作中でしばしば登場する高等遊民と呼ばれる人々の代表格として挙げられることが多い人物です。
    代助は作中、友人の平岡の「何故働かない」という問いに「日本対西洋の関係が駄目だから働かない」と答えます。
    曰く、「西洋の圧迫を受けている国民は、頭に余裕がなく碌な仕事ができない」、「悉く張り詰めた教育で目の廻るほどこき使われるから揃って神経衰弱になる」と、そして、「働くなら生活以上の働きでなくちゃ名誉にならない」とも述べています。
    ただ怠けたいから働かないというわけではない、人は麺麭のみにて生くるものに非ずの精神が本書では述べられていて、高等遊民という生き方に関する考えが本作では読むことができます。

    放蕩家の長井代助は過去に「平岡」と「菅沼」という友人がいた。
    菅沼には「三千代」という妹がいて、代助は三千代を深く愛していた。
    ある日、菅沼の母がチフスにかかり、その看病にあたっていた菅沼もチフスで、母と共に亡くなってしまう。
    菅沼の父は止事無き事情により北海道で困窮しており、後に残った三千代を心配した代助は、銀行に就職した平岡に仲立ちし、二人は夫婦になる。
    仕事もせず嫂に甘えて親の金で遊び歩く代助は、父親の説得も聞き入れず、財閥の令嬢との縁談を勧められるがそのつもりもなかった。
    一方で三千代は結婚後に子供を亡くし、体調も崩してしまう。また、平岡は職を失い多額の借金をしていた。
    自分が身を引いたことで三千代が幸せになることを固く信じてていた代助はそれが裏切られる結果となったことにショックを受ける。
    物語はそんなところから開始となります。

    夏目漱石の前期三部作の2作目ですが、前作の三四郎とは重ねるところはなく、誠実で一本気な三四郎がどう成長しても代助にはならないです(そう望んでいます)。
    結局のところ代助は、今で言うところのニートのダメ人間で、そのくせ友人の奥さんに恋慕を抱いてしまうという、概要を書くと非常にひどい物語と言わざるを得ません。
    ラストも大団円となるわけはなく、主人公は前向きなスタートをすることとなり、一つの完結ではありますが、結局いろいろな問題が未解決のままとなっていて、明るい未来が見えないというのが正直な感想です。
    ただ、後半の盛り上がりはすごく良かったです。
    序盤は情報も少なくて雰囲気も暗く、とっつきにくいと感じますが、後半の代助が男を見せるシーンは大変良かったです。
    面白かったです。今は「門」を読んでますが、こちらも期待です。
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    投稿日:2018.12.24

  • kazubook21613

    kazubook21613

    古典的名作という事に騙されてはいけない。内容はかなり先鋭的。今現在でも充分通用する主題を描いてます。もちろん時代が時代なので、それなりの古臭さや時代錯誤的なところはありますが。

    なにせ主人公の徹底したパラサイトぶりががすごい。プラス徹底したニート(高等遊民という便利な言葉はあるが)。しかも、姦通罪というおどろおどろしい法律があった時代の不倫なので、不倫に向き合う二人の深さがなんとも言えない。

    現代の薄っぺらい恋愛物とは一味も二味も違う。あらためて、古典の凄さを感じた次第です。若い人にぜひんで欲しい。
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    投稿日:2018.08.29

  • RT

    RT

    「自然」でありたいと希望し、近代の論理に抗って三千代を選ぶ代助。しかし、後半の代助の心の動きは「自然」ではないように感じるところがある。柄谷行人はそれは姦通を扱ったから、無意識の発露であるからという。漱石は「拙」であっても「自然」であることを目指していたが、むしろ「自然」であるためには「拙」になってしまうのかもしれない。中世に戻りつつある現代において漱石を読む意味はこの辺りにあるのか。続きを読む

    投稿日:2017.01.16

  • のっぴ

    のっぴ

    高等遊民のような暮らしをする代助が主人公。友人への義侠心から当時好きだった三千代への想いを断ち切る代助。数年後、三千代と友人の間に愛がないことを知った代助は三千代を取り戻そうとする過程が書かれる。

    個人的には代助の仕事への考え方に驚く。社会に流されることなく自己本来の活動を自己本来の目的とする、ニートにドキッとするようなことを言われた…続きを読む

    投稿日:2016.11.04

  • ぐぐぅ

    ぐぐぅ

    朝日の連載終了。読むのは25年振りぐらいなのかな。大した内容では無いんだけど、まぁ、興味を持って読めた。ストーリーは遅々として進まないけど当時の社会状況に対する漱石の皮肉とかユーモアを、頭でっかち高等遊民の主人公に語らせている部分が興味深い。相変わらず、現代にも通じるような箇所も多く、人間大して変わって居ないなと、感じた。続きを読む

    投稿日:2015.09.08

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