【感想】いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ

吉川洋 / ダイヤモンド社
(26件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
1
12
8
1
0
  • 経済政策への蒙を啓く良書

    まず前提として、当方教養課程で(新)古典派を学習、現代思想的関心による興味本位で資本論を読了。ケインズ派というかマクロはとっつき辛いと思っていたが山形浩生氏翻訳のクルーグマンの一連の公刊物で関心を抱き「一般理論」を(こちらも興味本位で)読了という経歴の、床屋談義メインな市井の野良ケインジアンという立場です。

    現在の世界的不況、及びクルーグマンのノーベル賞受賞で(それまで古典派に何度目かの葬送が行われたにも拘わらず)改めて脚光を浴びたケインズ、そしてある意味ケインズ以上に「経済学者」でありながらあまり注目を浴びておらぬ同時代人のシュンペーター、この2人の人生を辿りながら、それぞれの主張と独創性を大づかみに描き出したのが本書といえます。
    人生のタイムラインに沿った学説概略紹介は分かりやすく、また双方の欠点についても避けることなく触れているので、不況対策にどういう経済の捉え方をすればいいのかを理解するには好適書と言えるでしょう。個人的にはほぼ事前知識皆無だったシュンペーターについて理解を深められました。

    現在アベノミクスへの評価という形で、(政権への支持は別として)消費増税以外は概ね支持を見せるケインジアン側と、強固な批判者として旧来のIMF的な財政健全論(これはかなり問題外)と「金融政策よりも構造改革」な古典派系との対立が見受けられ、両者の論議の断絶が気に掛かっていたのですが。
    シュンペーターの主張する「イノベーション」を現在的に捉え直すと、「経済」はマクロな政策とミクロな経済活動、それと別の第三の評価検討軸として産業構造というものが必要になっているのではないでしょうか。産業全体を「第〇種産業の規模は…」と語るのでなく、各種産業自体の構造が硬直化していないか、「創造的破壊」を封殺して緩やかな自死を容認する構造になっていないかといった視点。そうすると、財政健全論はともかく構造改革論とケインジアン的マクロ政策論双方の強みを生かせるように思います。特に企業依存型経済になっている日本の場合においては。
    シュンペーターが主に主張していた景気循環論は著者も批判しておりますし、個人的にも(経済史の視点としてならともかく)お話にならない印象があるのですが、この点については検討すべき視点を提供してもらえたし、価値があったと感じられました。
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    投稿日:2013.11.21

ブクログレビュー

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  • matsunokaori

    matsunokaori

    第一次世界大戦に翻弄された二人の経済学者の話。わかりやすく解説。戦争で覇権を奪われた英国、戦争で帝国が崩壊したオーストラリア。
    企業家のイノベーションの動機とは、「自己の帝国建設の夢想と意志」、「勝利への意志、成功への意欲」、「創造の喜び」である。
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    投稿日:2022.09.19

  • yoshidamasakazu

    yoshidamasakazu

    吉川洋 「いまこそ ケインズ と シュンペーター に学べ 」著者の結論は 資本主義経済の重要な核は ケインズの有効需要、シュンペーターのイノベーションの統合概念(需要創出型のイノベーション)

    ケインズ=有効需要の理論
    *経済の活動水準は需要により決まる=不況は需要不足により起こる
    *投資の不安定性が資本主義経済の変動要因
    *金融投資は 美人投票と同じ(自分が美人と感じる人に投票するのでなく、みんなが美人と感じる人に投票する)

    シュンペーター=イノベーション、創造的破壊
    *資本主義の本質=企業家によるイノベーションに基づくダイナミズム→不況はイノベーションがもたらす必然

    「不況なくして 経済発展なし」
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    投稿日:2021.02.03

  • coffee-choco

    coffee-choco

    このレビューはネタバレを含みます

    シュンペーターとケインズの考えがわかる。
    シュンペーターが経済の発展はイノベーションにあるとしたのに対して、ケインズは一貫して完全雇用を生み出すために、有効需要は政府が作り出さなければいけのいとする。
    現代の企業活動を考える上で、また投資を考える上で参考になる。

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    投稿日:2019.01.06

  • yukisaito

    yukisaito

    「いまこそ、○○○に学べ」というとき、
    ○○○に入る人物は、ごまんといるのだろう。
    学者や思想家、政治家から、芸術家、スポーツ選手に至るまで、
    多くの偉人たちの膨大な知識の蓄積の上に僕たちは生きていて
    こうしている間にも、新たな知が生み出されている。

    それらの知識を、たとえGoogleがすべて電子化したとしても、
    一人の人間がそれらすべてを把握することは不可能だろう。

    そのような中では、
    純粋にまったく新たなアイディアや知識というものはあり得ず、
    どんなに画期的な考えであっても、すでに誰かがどこかで
    言ったり書いたりしたものの焼き直しに過ぎないという人もいる。

    僕にはそのあたりの話はよくわからないけれど、
    少なくとも昨今の金融危機〜世界同時不況という時代にあって、
    「マクロ経済」なるものから目をそらすことはできない
    という気はしていた。

    古典と呼ばれる知識を現在の環境に当てはめて考えることは
    単なる懐古主義とは違った意義があるはずだ。
    とはいえ、すべての古典に目を通すのも、正直しんどい。
    そんなわけで、本書のような内容は非常にありがたい。
    「いまこそ学べシリーズ」として
    続編を出してもいいのではないかと思ったりする。

    しかも本書が優れているのは、
    単に読みにくい古典をわかりやすく解説するだけでなく、
    当時の時代背景も含めた生々しい「人としての営み」が
    垣間見える点と、タイトルのとおり、昨今の金融危機や、
    日本の80年代のバブル崩壊など、
    近年の経済環境を俯瞰した上で、
    これまで対立概念として捉えられてきた(らしい)
    ケインズとシュンペーターの理論を統合化し、
    今、そしてこれからの経済を考えるための示唆として
    再構築している点にある。

    「有効需要の不足」が不況の原因であり、
    積極的な財政出動がその解決策であると説くケインズと、
    企業家精神によるイノベーション(新結合)こそが、
    不況脱出の鍵であると主張するシュンペーター。

    著者は両者の主張を統合することこそが、
    現状の世界的不況に対する処方箋になると述べ、
    「需要創出型イノベーション」を提唱する。

    これはまさに「いまこそ」考えなければならない命題であり、
    (ケインジアンとして有名な)著者とは異なる選択肢を
    自分自身で考えてみてもおもしろいかもしれない。

    写真も随所に入っていて、文章として読みやすいことも
    本書の魅力の一つである。学生時代にこんな本があったら・・・
    と思う人も多いかもしれない。
    続きを読む

    投稿日:2015.06.21

  • hrtt

    hrtt

    本当に良い本だった。影の立役者であるシュピートホフ、ロバートソンらにスポットライトを当てている点も興味深い!

    投稿日:2015.04.02

  • koichikitadani

    koichikitadani

    シュンペーターを知らなかったが、ケインズと比較しながらもしかしたら分かりやすいかもと気楽に読みだして、後悔
    これは経済学を少し本を読んで勉強しただけでは分からない
    きちんと勉強して、学者の考えをある程度概要を掴んでいないと、チンプンカンプンなところがある。
    早まったか・・・
    だが、それでも面白い。彼らの出生から時系列に比較しているが、まさに歴史の変動と大きく関わっているのが分かる。そうか。経済学の用語に出てくる単語は人の名前がこんなにあるんだ
    しかしシュンペーターの本はかなりの難物のようだ。
    ここまで「読みにくい」と紹介されるとは
    だが中身は鋭い気はする。経済学では国、企業視点が多く確かに産業視点でないイメージをもった(そうでないのかもしれないが)
    また不況をイノベーションの収穫期と言い切る点、金融政策・財政政策では経済の動きは止めれないと言い切る点など、なるほどと感じる。確かに小手先感は否めない
    経済を変えるのはイノベーションである点も納得である
    でも経済学者でも読みにくい本ww

    きちんと全てを理解することは出来なかったが、なかなか面白かった
    続きを読む

    投稿日:2015.02.02

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