【感想】「みんな違ってみんないい」のか? ──相対主義と普遍主義の問題

山口裕之 / ちくまプリマー新書
(26件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
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  • 人それぞれでほんとにいいの?という話

    2023年中学入試では東農大一、田園調布、東邦大東邦、豊島岡女子、洗足学園などで出題された。「みんな違ってみんないい」という言葉が独り歩きしてしまい、誤った解釈を元にゆがんだ価値観が蔓延するのではないかと警鐘を鳴らす本。集団生活を営む以上、みんながある一定の価値観や社会的制約の中で生きていく必要がある。その中で正しさを決めているのは多数決の論理。ただ、様々な立場や考え方の双方が話し合い、妥協点を見出し、お互いが納得することが大切。個性尊重と独善的行動を混同してはいけないと自戒しなければと思った。続きを読む

    投稿日:2024.05.09

ブクログレビュー

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  • horinagaumezo

    horinagaumezo

    「正しさは人それぞれ」「みんな違ってみんないい」というような相対主義、「真実は一つ」という普遍主義のいずれをも退け、考えの異なる者同士がともに生きていくために、「正しさ」とは何か、それはどのようにして作られていくものかを、様々な学問のこれまでの議論を概観した上で考察。
    本書の結論としては、「正しさは人それぞれ」でも「真実は一つ」でもなく、「正しさはそれに関わる人々が合意することで作られる」というものである。
    元来自分は相対主義的な考えを持っていて、それこそが「正しい」とも思ってきたが、本書の中で、「正しさは人それぞれ」という相対主義は相手を思いやっているようで、相手のことを理解し自分のことを理解してもらおうとする努力を放棄しているだけという趣旨の指摘を受け、確かにそのとおりだと顔をはたかれたような衝撃を受けた。
    本書では、筋道だって、「人それぞれ」というほど人は違っていないということ、そして、「道徳的な正しさ」あるいは「事実認識の正しさ」を人それぞれで勝手に決めてはならず、他者との関わりの中で「正しさ」というものが作られていくということが論じられており、納得性が高かった。
    ただ、実際に「正しさ」の合意形成を図っていくのはすごく困難な道のりだとは思う。しかし、それを安易にあきらめて「正しさは人それぞれ」に逃げるのはやっぱり違うなと認識した。
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    投稿日:2024.04.13

  • ms06f2

    ms06f2

    心地よく聞こえるフレーズが世の中にどういった影響を与えるのか
    意味も影響も知ろうともしないまま使っていた言葉は沢山あります
    自分自身も社会の一部であることは忘れてはいけないと感じた一冊

    投稿日:2024.04.02

  • 司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    「他人との関係を切り捨てるのでもなく、自分と異なる考えを否定するのでもなく――「正しさ」とは何か、それはどのようにして作られていくものかを考える。」

    投稿日:2024.03.31

  • でんでん

    でんでん

    人それぞれだからと口にする時、思考停止していませんか?と問いかけられます。人それぞれ、その言葉は「自分自身の正しさの根拠や理由についても考えない態度を助長する」と書かれています。今でいうと多様性だから、がその最たるものかもしれません。

    上記にあげたメインの主張には非常に同意できる点が多いですが、そこに行き着くまでの理由や、わかりやすくする為のたとえ話には個人的に賛同しにくいところがありました。
    良い悪いの話ではありませんが、今回の結論は一緒だけれど、いつか違ってくるんだろうとうっすら感じながら読んだ印象です。
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    投稿日:2023.11.17

  • くにまさ

    くにまさ

    丁寧に丁寧に「人それぞれ」に対する誤りを指摘し、著者の考える対応をしっかりと述べてある。

    最後に書かれている《おわりに「人それぞれ」はもうやめよう》を読むと、ここまで読んできて本当の良かったと思う。

    ついつい『人それぞれだけど〇〇だと私は思います』とか逃げ口上気味に書いてしまう事が多い自分。意識して合意を形成して行くようにしなくては。人はバラバラで生きて行くのでは無いのだから。

    読書の流れとしては、この後「訂正する力」(東浩紀)を読み進めて行く予定。
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    投稿日:2023.10.18

  • nakahisashi

    nakahisashi

    「みんな違ってみんないい」というフレーズに違和感をいだいていた僕にとって、違和感の原因が明確化できたと言える本。

    本来、社会の同調圧力に抗うための言葉であったはずなのに、いつのまにか「お前はお前、俺は俺」という他者の関わりを拒絶するための便利な言葉に成り下がってしまっている。

    章タイトルにあるように、「『道徳的な正しさ』を人それぞれで勝手に決めてはならない」し「『正しい事実』を人それぞれで勝手に決めてはならない」と思わされる。

    デモクラシーの本質は、熟議によって合意形成を目指し、最終的には多数決によって現時点で「正しい」であろうと思われることを仮説として進めて行く。間違っていたかもと思った時のために反対意見を温存しておく、というものだが、社会生活に関わる多くのものが同じような仕組みであるべきなのだろう。
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    投稿日:2023.06.18

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