【感想】囲碁ライバル物語

内藤由起子 / 囲碁人ブックス
(2件のレビュー)

総合評価:

平均 3.0
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  • ライバルのいた時代の物語

    第1局 石田芳夫-林海峰
    23歳で林海峰を破り本因坊を5連覇した石田だが7大タイトルは9つで挑戦手合は19回。林との対決では5-1とかもにした。年齢的には加藤正夫がライバルのはずだが、加藤の活躍は石田の5連覇の終わりと入れ違いのため0-3で加藤と対決は少ない。一方で6歳年上の林は2001年に59歳で依田に挑戦するなど息が長い。

    林海峰の対戦成績は対坂田6-2、対加藤2-5、対小林2-3、対趙2-2

    昭和40年代は坂田栄男の時代が終わり若い林海峰と石田が碁界の中心となっていった。

    第2局 大竹英雄-林海峰
    同い年で誰もが認めるライバルながら直接対決はわずかに2回。大竹の活躍は1975年に石田から名人をとった頃からで林からは10年遅れと言える。1976年以降加藤、武宮、趙、小林が次々とタイトルを取っており木谷門では石田に代わり年長の大竹が昭和50年代から平成までは木谷一門の時代でその前半を引っ張ったのが大竹と加藤だ。 大竹のタイトル戦は対趙が2-8と最も多く、対加藤は4-2、対小林1-5、対石田3-0、対武宮1-1と門下全てがライバルとなっている。

    第3局 趙治勲-加藤正夫
    趙が6歳で来日し内弟子生活を始めたころ、石田、加藤が次々に入段し1965年に武宮と小林が加わり10年近く一緒に暮らした。加藤が少し遅いとは言え17歳で入段したころ、趙はまだおもちゃのピストルを持って走り回る小学生だった。石田、武宮とともに木谷門の三羽烏と呼ばれた加藤はタイトルの数ではこの三人の中では大きく抜きん出ている。対小林4-6、対趙3-5 、対武宮3-1

    第4局 小川誠子-小林千寿

    第5局 小林光一-武宮正樹
    学年と入段はともに武宮が2つ上だが木谷門下に入ったのはほぼ同時で初タイトルもほぼ同時。しかしタイトル戦の常連となったのは昭和60年代以降と2人の活躍は30代以降がメインだ。武宮がしかけた舌戦もあり、外野から見れば囲碁では珍しいプロレス的な対決だった。最終的な実績は小林に軍配が上がるが人気では武宮か。

    武宮の対戦成績は対小林2-3、対趙2-4と木谷門下でのタイトル戦がほとんどだ。

    第6局 趙治勲-小林光一
    対戦成績は趙の8-2と偏ったが3大タイトルでの対決9回はまさにライバルだ。年は小林が4歳上だが木谷門では趙が先輩で小林の入門時は趙の方が強かった。しかし小林が先に入段した。初の7大タイトルもほぼ同時ながら20代の趙は次々とタイトルを重ね昭和60年代から平成の前半はこの2人が碁界の中心に居続けた。

    趙の対戦成績は上記以外では対王立誠4-4、対依田2-2、対山下2-1など。

    第7局 趙治勲-依田紀基
    木谷一門の時代を終わらせるのは依田だと思っていた。15歳で入段し11連勝。18歳で名人戦リーグ入りしかしその後歌舞伎町におぼれ、バクチにハマりとこの辺はどん底名人で。7大タイトルは1995年の十段から2005年の碁聖までとほぼ30代だけと言うのは寂しい。

    趙との4戦以外めぼしい対戦相手がないのはライバルといえる存在がいなかったと言うことだろうか。

    第8局 山下敬吾-羽根直樹
    第9局 張栩-高尾紳路
    第10局 井山裕太-芝野虎丸
    平成四天王は入段がいずれも平成になってから。タイトルは2000年山下21歳が最初で2000年代始めは趙、王立誠、依田から四天王の時代へと変わっていった。しかし井山の登場で全てが変わる。2010年以降は誰が井山からタイトルを奪えるかが焦点となった。2019年までの10年間で井山の出てこないタイトル戦はわずか15回だ。

    井山の対戦成績は対張栩6-3、対山下11-1、対高尾6-2、対羽根1-0、対河野臨7-0、対村川大介3-2、対一力遼5-0、対許家元1-1、対芝野0-1

    張栩は対山下6-2、対高尾3-2、対羽根1-0、対依田3-0、対芝野0-1

    山下は対羽根5-2、対趙2-1、対河野0-3、羽根-高尾は2-0、以外だが山下-高尾のタイトル戦がない。

    国内ではライバルのいない井山だが中韓には同等以上の相手がおそらく20人以上いてその上にAIがいる。

    ライバル物語が描ける時代はもうあまり残っていないかもしれない。
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    投稿日:2020.06.14

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  • okadata

    okadata

    第1局 石田芳夫-林海峰
    23歳で林海峰を破り本因坊を5連覇した石田だが7大タイトルは9つで挑戦手合は19回。林との対決では5-1とかもにした。年齢的には加藤正夫がライバルのはずだが、加藤の活躍は石田の5連覇の終わりと入れ違いのため0-3で加藤と対決は少ない。一方で6歳年上の林は2001年に59歳で依田に挑戦するなど息が長い。

    林海峰の対戦成績は対坂田6-2、対加藤2-5、対小林2-3、対趙2-2

    昭和40年代は坂田栄男の時代が終わり若い林海峰と石田が碁界の中心となっていった。

    第2局 大竹英雄-林海峰
    同い年で誰もが認めるライバルながら直接対決はわずかに2回。大竹の活躍は1975年に石田から名人をとった頃からで林からは10年遅れと言える。1976年以降加藤、武宮、趙、小林が次々とタイトルを取っており木谷門では石田に代わり年長の大竹が昭和50年代から平成までは木谷一門の時代でその前半を引っ張ったのが大竹と加藤だ。 大竹のタイトル戦は対趙が2-8と最も多く、対加藤は4-2、対小林1-5、対石田3-0、対武宮1-1と門下全てがライバルとなっている。

    第3局 趙治勲-加藤正夫
    趙が6歳で来日し内弟子生活を始めたころ、石田、加藤が次々に入段し1965年に武宮と小林が加わり10年近く一緒に暮らした。加藤が少し遅いとは言え17歳で入段したころ、趙はまだおもちゃのピストルを持って走り回る小学生だった。石田、武宮とともに木谷門の三羽烏と呼ばれた加藤はタイトルの数ではこの三人の中では大きく抜きん出ている。対小林4-6、対趙3-5 、対武宮3-1

    第4局 小川誠子-小林千寿

    第5局 小林光一-武宮正樹
    学年と入段はともに武宮が2つ上だが木谷門下に入ったのはほぼ同時で初タイトルもほぼ同時。しかしタイトル戦の常連となったのは昭和60年代以降と2人の活躍は30代以降がメインだ。武宮がしかけた舌戦もあり、外野から見れば囲碁では珍しいプロレス的な対決だった。最終的な実績は小林に軍配が上がるが人気では武宮か。

    武宮の対戦成績は対小林2-3、対趙2-4と木谷門下でのタイトル戦がほとんどだ。

    第6局 趙治勲-小林光一
    対戦成績は趙の8-2と偏ったが3大タイトルでの対決9回はまさにライバルだ。年は小林が4歳上だが木谷門では趙が先輩で小林の入門時は趙の方が強かった。しかし小林が先に入段した。初の7大タイトルもほぼ同時ながら20代の趙は次々とタイトルを重ね昭和60年代から平成の前半はこの2人が碁界の中心に居続けた。

    趙の対戦成績は上記以外では対王立誠4-4、対依田2-2、対山下2-1など。

    第7局 趙治勲-依田紀基
    木谷一門の時代を終わらせるのは依田だと思っていた。15歳で入段し11連勝。18歳で名人戦リーグ入りしかしその後歌舞伎町におぼれ、バクチにハマりとこの辺はどん底名人で。7大タイトルは1995年の十段から2005年の碁聖までとほぼ30代だけと言うのは寂しい。

    趙との4戦以外めぼしい対戦相手がないのはライバルといえる存在がいなかったと言うことだろうか。

    第8局 山下敬吾-羽根直樹
    第9局 張栩-高尾紳路
    第10局 井山裕太-芝野虎丸
    平成四天王は入段がいずれも平成になってから。タイトルは2000年山下21歳が最初で2000年代始めは趙、王立誠、依田から四天王の時代へと変わっていった。しかし井山の登場で全てが変わる。2010年以降は誰が井山からタイトルを奪えるかが焦点となった。2019年までの10年間で井山の出てこないタイトル戦はわずか15回だ。

    井山の対戦成績は対張栩6-3、対山下11-1、対高尾6-2、対羽根1-0、対河野臨7-0、対村川大介3-2、対一力遼5-0、対許家元1-1、対芝野0-1

    張栩は対山下6-2、対高尾3-2、対羽根1-0、対依田3-0、対芝野0-1

    山下は対羽根5-2、対趙2-1、対河野0-3、羽根-高尾は2-0、以外だが山下-高尾のタイトル戦がない。

    国内ではライバルのいない井山だが中韓には同等以上の相手がおそらく20人以上いてその上にAIがいる。

    ライバル物語が描ける時代はもうあまり残っていないかもしれない。
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    投稿日:2020.06.14

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