【感想】漢方医学 「同病異治」の哲学

渡辺賢治 / 講談社学術文庫
(4件のレビュー)

総合評価:

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  • 漢方薬と腸内細菌の互恵関係など興味深い話が多い

    私自身、抗がん剤の副作用を漢方薬に救われた経験があるが漢方のことは全く知らなかった。著者らの考えでは全人的医療としての漢方は、西洋医学と密接な協力関係を築くことによって高齢化を始めとする今日的な課題に応えうる。しかし現状では専門医も少なく補助的な立場に留まっているようで、もったいないと感じた。続きを読む

    投稿日:2023.02.21

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  • hono-Reyife

    hono-Reyife

    漢方医学とは言い換えれば、中国を主に伝わった東洋医学のことで、最近妙に薬膳や中医学という概念が独り歩きしているように感じますが、そもそも漢方ってどんな医術、哲学なのか?
    西洋医学とよく比較され、対極化されがちな二つの医学概念があるけれど、きっとどちらが良い悪い、よりも、二つのアプローチや性質、専門領域の違いを深く知り、つい胡散臭いと括られがちな漢方薬膳薬局の問診や中医師の診る視点と治療のゴールの違いを知ることが出来ればきっと互いの得意を生かし合ってよりその人らしく歩むためのホリスティックなアプローチが出来そうな気がするなぁ。そんな感想を持てた。

    【日本式漢方と中医学の差異】
    日本漢方:
    方証相対
    ある症状に対して共通するひとの病態を基に、診断をつけて治療内容を定める
    (処方箋を使用した、処方ベース)

    中医学:
    完全個別化医療
    弁証論治(べんしょうろんち)
    病気の起因、環境因子人により千差万別であり、個々でその人がよりよく生きられる治療のアプローチは異なるという理論のもとに、漢方医師の技量によるさじ加減が治療効果の有無に表れる医学。
    その人の全体を診た上で(森)で、その人独自の治療を行う(全人的)

    こうしてみると、すべてを中医学の視点で診てしまうと、圧倒的な非効率からごく一部の人しか助けられない結果を生む可能性も否めない。
    日本漢方のような、なるべく中医学を効率化して、助かる人数を増やして医療費を抑えること。
    どちらもいまの医療に大切な考え方だと思った。
    きっと適材適所で、必要な医療(西洋・東洋・アロマ・指圧・フィトセラピーなど)を患者自身が選べる医療が未来の人口減少に期待できるのかもしれない、と思った。
    --------
    以下は、序盤に著者が、漢方医師の先駆者としてオランダから持ち込まれた解体新書の現代語訳の改訂版の刊行に尽力された師匠「大塚先生」から授かった印象的なフレーズを載せます。

    ------------
    p7.17行目:
    「細分化されて、木だけで森を見なくなってしまった西洋医学と反対に、森(その人にまつわる全体的な諸症状・心身)を見る医学が、漢方である」
    一つの尺度ではなく、あらゆるものさしで、治療方針(対象となる課題)を考えることができれば、その人がよりその人のままで健やかな暮らしを助けるアプローチの幅が広がる、ということ。

    「一流漢方医+一流西洋医師が、一人の患者を診ても1+1=2でしかない。
    でも、一つの頭に漢方、西洋の一流を併せもてれば、一人のアプローチで1+1=10Xに、なり得る」

    p.8 8行目:
    「物事の本質を掴みたいなら反対学をまず、学べ」
    (その心は:知りたい学びの対極から眺めないと、全体像が掴めない)
    同じ患者さんでも診る窓が違えば、必要なアプローチも変わる

    なるほどなぁ。さまざまな角度が頭にあればきっとひとつの課題に対しても、一面の解決策だけではなくて自分がよく知る問題についてより深い理解と道筋が見えてきそうだ。
    なるべく100歳になっても頑固ちゃんにはならず、柔らかな頭を保ちたいものだ。

    あ、BUMPの窓の中から聴きたくなってきた。(知らんけど

    患者さんの症状に合わせて医師独自のさじ加減と信頼感が特に顕著にモノを言う世界が、漢方なんだろうな。

    となると、責任も重くなるけれどますます興味が湧きました。

    対話と嗅覚の感度を高めるアロマや指圧マッサージ。薬や機器を持たずとも、自らの身体技術とコミュニケーションで病気を介抱に導く診療の在り方が日本にももっと浸透していってほしいな。

    アロマが薬局で調剤として処方が当たり前となっているフランスのように。
    一冊読み終えたら、新しい視界が開けそうな予感。
    じっくり読み進めたい。
    続きを読む

    投稿日:2024.04.06

  • かとうみどり

    かとうみどり

    読みやすさ、構成力ともに海外の科学系著作物と引けも劣らない作品だと思う。
    西洋医学と漢方医学は、緯度と経度の関係に喩えられるという記述が好きだ。見えるものが違うので、比較したりするものではない。
    多くの人に漢方という日本文化(個人的な意見であり、著作物では文化と表現していない)を読んでもらいたい続きを読む

    投稿日:2021.09.12

  • hatchan0610

    hatchan0610

    閉店が近づく三月書房で購入
    一般向けでありながら、あっと思う記載が所々あり、瞬読用として読み返してチェックする予定

    投稿日:2020.03.17

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