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カミュ, 宮崎嶺雄 / 新潮文庫 (335件のレビュー)
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総合評価:
bookkeeper
3
2011年4月の読書メモより
震災後の状況をこの作品になぞらえた文章をたまたま2つも別々に見つけた。そこで読んでみる事に。 日常をむさぼっていた都市が、徐々に不条理な事態に直面する(徐々に、というのが地震と異なるが、原発や電力の…問題が当初の予想を超えてエスカレートしていく様は少し似ていないか)様子を淡々と描く前半から、そのペストと言う事態の只中で、確たる希望もないまま闘う人物の姿が描きこまれていく後半へと盛り上がっていく。主人公のリウーやともに保健隊で働く仲間たちは、彼らを動かす原動力こそ違えど、ヒロイズムでなく平凡に自分の職務と思うところを果たしていく。世界は圧倒的な力で人間を打ち負かすことがあるが、それでも抗うことに人間の人間たる所以があるのだろう。 しかし、フランス人が書いたせいか、60年の隔たりのせいか、翻訳と言うフィルターのせいか、単に趣味の問題か、どうもセリフや叙述がまだるっこしく思える(これでも簡潔な文体と訳者は言うが)。それに主題も、ボクにとってスッと腹に落ちるものなのだが、スっと落ちすぎて引っ掛かりが足りない感じ。読みきれていない部分もあるのだろうけれど。続きを読む
投稿日:2017.03.12
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横
ペスト 著:カミュ 新潮文庫 か 2 3 ペストは、14世紀、東アジアで流行が始まり、中央アジアを経由してヨーロッパで猛威をふるった。 人類の歴史史上、14世紀は、唯一人口が減少した世紀であり、その…原因はペストであった 現在もマダガスカルをはじめ、散発的にペストの流行が発生している 本書のように、ペストが突然、大都市を襲うというようなことはあながちあり得ない話ではない 一方、作者のカミュは、「シーシュポスの神話」、「異邦人」といった、不条理を扱う作家である ペストの初期から、都市がロックダウンしたあとの人々の生活と、その心理をリウーという医師の目で描いたのが本書である。ある意味で、「夜と霧」のように、逃げることも抗うこともできない状況で人々はどう考え、どう行動するのかという状況に近い ペストの流行が終焉に向かうにもかかわらず、人々の心は開放へとは向かうことはない リウー医師は、神はペストから人を救うことはできず、また、彼も神の存在を否定する、それでも、医師として疲労困憊の中、そして半ば病人を救うべく、立ち上がるのであった 気になったのは、次の言葉でした ・病人は家族から遠く離れて死に、通夜は禁止されていたので、結局、宵のうちに死んだ者はそのまま死体だけでその夜を過し、昼の間に死んだものは時を移さず埋葬された ・みずからペストの日々を生きた人々の思い出のなかでは、そのすさまじい日々は、炎炎と燃え盛る残忍な猛火のようなものとしてではなく、むしろ、その通り過ぎる道のすべてのものを踏みつぶしていく、果てしない足踏みのようなものとして描かれる ・これもいっておかねばならぬが、ペストはすべての者から、恋愛と、さらに友情の能力さえ奪ってしまった なぜなら、愛は幾らかの未来を要求するものであり、しかも、われわれにとってはもはや刻々の瞬間しか存在しなかったからである ・「ありがとう」と彼はいった。「しかし、修道士には友というものはありません。すべてを神にささげた身ですから」 ・ペストが市の門を閉鎖した瞬間から、彼らはもう別離のなかだけで生き、すべてを忘れさせてくれる人間的な温かみをもぎ取られてしまっていたのである 目次 1 2 3 4 5 ISBN:9784102114032 出版社:新潮社 判型:文庫 ページ数:480ページ 定価:850円(本体) 1969年10月30日発行 2004年01月20日64刷改版 2020年03月20日86刷続きを読む
投稿日:2024.05.15
タイラ
この本に書かれていることを完全に理解するにはまだ至らない。だから、これから何度も読み返したい、あるいは、自分の成長を測る物差しのようなものとして持っておきたい。
投稿日:2024.04.07
はるたろう
2024/03/18読了 #カミュ作品 アルジェリアを舞台に発生したペストの物語。 テーマだけに終始重い展開。 50年も前の作品だが、この度発生した新型コロナと 様相が非常にかぶるシーンが多くて驚い…た。 感染症の状況も生々しいが、 それ以上にペスト環境下で非罹患者でさえも 希望を失う絶望的さまが痛々しく描かれる。続きを読む
投稿日:2024.03.29
まめだいふく
人間ではどうしようもできない圧倒的恐怖、それでも闘おうとする人間特有の強さ、世の中の無常を思い知らされた。
投稿日:2024.02.05
tom555
このレビューはネタバレを含みます
アルジェリアのオランでペストが発生し町は封鎖される。その街の中の人々の生活や振る舞いが時系列に描かれている。コロナを経験した今、ドキュメンタリーのように読んだ。淡々と語り治療をする医師リウーは気力も体力もギリギリの状態で良く生き延びたと思う。感情が無くなる程過酷な状態の中で治療を続ける姿勢に胸を打たれた。待ち望んだペストの収束と門の解放。その喜びの中で戻ることの無い人を思うと悲しみを強く感じる。何も起きなかった頃のようには生きられないと認識できたことだけでも、読んだ甲斐があったな。
投稿日:2024.02.02
一塔
とある港町に発生した疫病の進行と終息までを、実際に見届けてきた当事者が書き残すという体を取っている。 1匹の鼠の死骸から始まり、忽ちのうちに無味乾燥な町にペスト=死が蔓延していく様子、その中で人々がどのように生きようとしたかを努めて客観的に、注意深いまなざしで綴っていて、読み進める程に引き込まれていった。 少年の苦悶の死、夜のテラスでの会話、ショーウィンドウ前での老吏の涙、物語の最後の死者が見せた戦いなど、終盤胸がグッと詰まる場面が続いてたまらなかった。務めを果たさんと奮闘する人たちを美化せず描くところが良い
投稿日:2024.01.02
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