【感想】断片的なものの社会学

岸政彦 / 朝日出版社
(241件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
100
78
26
2
1
  • なんてことのない、話です。

    社会学、と銘打たれているけれども、どうか気負わずに開いてみてください。ここには、社会学者岸政彦がすれ違った市井の人々との出会いが、淡々と、かつ丁寧に書かれています。

    見知らぬ他人から話を聞く、という行為は社会学者である岸が常日頃行っているもの。しかし、様々な人たちの、様々な話を聞いていくと、どの論文にも報告書にも使うことのない断片的な物語を受け取ることがある。そして、そういうものこそいつまでも印象に残っている、と彼は語ります。

    かつて新興宗教の教祖を務めていた老人、ゲイをカミングアウトした南米の青年。どのストーリーも山場を迎えそうになると、ふっと静かに立ち消えてしまう。普段の生活の営みに沿った話だからこそ、据わりのよいオチなんて用意されていない。でも、その掌編のひとつひとつが、不思議と読み手にも染み込んでいくのです。
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    投稿日:2016.10.25

  • 物語以前の出来事や想いの断片

    ハリウッド映画とかで、ビルに押し入った悪役が警備員を射殺してどんどん中に入っていったりするじゃないですか。その登場5秒で死んじゃう警備員さんのこれまでの人生ってどんな風だったんだろう…。

    昔から時々私はそんなことを考えてしまうことがありました。そして、自分がそういうことを考えることがあったということを、この本は思い出させてくれました。

    多くの人が語る物語がある一方で、当事者しか語ることのない、あるいは当人が死んでしまった時点で誰も語ることのできなくなる、物語以前の出来事や想いの断片。圧倒的な数で存在するそれらのいくつかに、筆者は社会学の調査インタビューで出会い、社会学の分析の対象からこぼれたそれらを、ただそういうものとしてここに綴っています。それを読むことで私たちは何かを知ったり学んだりする訳でもなく、でもふと忘れていた自分と出会ったり、誰かを思い出したり、誰かと話してみたくなったりします。
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    投稿日:2019.03.12

ブクログレビュー

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  • wanderlust

    wanderlust

    世の中の
    良いとされていること
    悪いとされていること
    そしてその背景を丁寧に捉えつつ、
    その先、へ進もうとする姿勢が素晴らしく、
    まさに断片的なものの社会学。

    アウティングと親友の鍋の話
    そして豪雨の中干からびた観葉植物の話
    が特に印象に残った。

    岸先生の描写、捉え方、そこからの解釈
    その全てが美しくも泥臭くて好き。名著。
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    投稿日:2024.04.21

  • サニー

    サニー

    本当にいろんな人がある。会社の同僚、上司、部下。家族、親戚、友人、知人。人それぞれにそれぞれの物語がある。

    私にも、とても人に言えないような話はある。著者の岸先生になら話してもいいかもしれないと思った。寧ろ聴いてほしい。吐き出して楽になりたい。

    世界は複雑で、美しいだけではない。

    美しい面ばかり見ていたいのと同時に、扉の向こう、穴の底を覗きたい。

    などということを考えずにはいられない本だった。

    本を読むことは他人の人生の一部を生きることと同義であると思っている。

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    投稿日:2024.04.17

  • 本好き初心者

    本好き初心者

    友人が貸してくれたエッセイ。自分があまり読むタイプでは無かったので最初はその世界観にたじろいだ。練りに練られた言葉というよりは作者の強い思いが溢れ出し、何とか言葉としては封じ込めたように感じた。普段何気なく過ぎていく「日常」。当たり前だがやはりこれが人間の数だけあるのだと強く感じた。読み終わる事が惜しくなってしまうような作品。
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    投稿日:2024.03.30

  • まに

    まに

    タイトルの通り、いろいろな人の人生について綴っている。
    ざっくりとした解説ではなく、概念的に事細かく解析している岸さん。なんて面白い本なんだ。

    投稿日:2024.03.21

  • 作工画図

    作工画図

    短期間で3回も読んでしまった。。。
    目の前で起きている事を、そのまま理解する「観察」は今最も重要な事の一つだが、これが意外と難しい。どうしてもバイアスがかかる。
    この本の作者の岸さんは、目の前で起きる、語られらるどうしようもない事を、どうしようもないと、ただ記録する。でも、諦めつつも受け入れている。そんな気がする。この態度は、デザイナーの深澤直人氏もその著書で同じ事を書いている。
    観察とは、残酷でありながらも、どこか温かい。
    この暖かさは、何なのか。。興味、気掛かり、愛おしさ。
    「笑い」についての記載がある。それは自由だと、、この自由の捉え方が、アッバスキアロスタミ監督の桜桃の味でのそれと同じ事だったのは、記憶しておきたい。
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    投稿日:2024.03.09

  • Anony

    Anony

    感想
    平凡さと特殊な経験。どうして1人の人間の中に同居できるのか。彼らは何を考えどう生きているのか。翻って。きっと自分も何か欠けているはず。

    投稿日:2024.02.16

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