【感想】アイヌと縄文 ――もうひとつの日本の歴史

瀬川拓郎 / ちくま新書
(13件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
4
6
1
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0
  • 日本のもう一つの歴史

    日本列島の北と南に縄文人の直系の子孫、原日本人ともいうべきアイヌと琉球の人々がいます。
    そのうち特にアイヌの人々は 2000年以上もの昔から 弥生の文化に取り込まれることなく 「続縄文人」として暮らしてきました。
    歴史に 「もし」という言葉は存在しないといわれますが、アイヌの人々の姿は 日本人の取りうべき もう一つの日本の歴史だったかもしれないのです。

    この後に私がレビューを書いた「2700の夏と冬」という本で、およそ2000年から3000年前の縄文人と弥生人のラブストーリーが描かれていますが、、この「アイヌと縄文」を読んでから 読むと、納得しながら さらに興味深く読むことができます。
    古代の日本に興味がある人はぜひ読んでほしい本です。
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    投稿日:2016.10.02

  • 民俗学と考古学のお好きな方は是非!

     タイトルだけ見るとアイヌの人々と縄文時代の人々とのつながり、あるいは、アイヌの人々の中の残る縄文時代の文化みたいなものが列挙されているように思うかもしれませんが、あにはからんや、もっと大きな、今日の日本を作り上げた、「流れ」みたいなものを著述したものであります。
     実に面白く読ませて頂きましたが、全体として、あまりアイヌとか縄文とかにとらわれずに、日本人の源流みたいなものをのぞき見た感じでした。
     特に、埋葬の習慣とか、日本語に残る古代語が、どこからやってきたのか、等というエピソードはとても興味深いものであり、また、夫を亡くした妻はかぶりものをし、3年の間顔を洗わなかったという喪に服する風習は、どこかイスラム社会にも通じるような気がしました。(そんなことは、本の中では指摘してませんけれど)
     それから、他の集団、他の民族とか部族との交易の中で、物々交換というのはありがちな話なのですが、私にとっては、贈与交換というスタイルは、初めて知るものでありました。
     この手の本を読むといつも思うのは、古代の人々の行動範囲の広さです。江戸時代の歩いて旅をしたことでさえ、驚きでありますが、この交流の範囲の巨大さには驚かされます。人間の好奇心なのでしょうかね?
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    投稿日:2017.11.30

ブクログレビュー

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  • yoshidamasakazu

    yoshidamasakazu

    瀬川拓郎 「 アイヌと縄文 」

    アイヌ文化に保存された 縄文思想(日本の原郷としての)を 抽出しようとした本。

    面白い。日本の原像を探ろうとする 人類学者、歴史学者、作家等が 縄文時代に 惹かれる理由が わかる気がした

    アイヌが 日本列島のみでなく 北東アジアの交易(商品交換)により、富と権益を拡大しながら、アイヌ同士では 贈与交換により社会を維持していたことに驚く。日本人のバランスの良さを感じる

    アイヌ文化に保存された 縄文思想(日本の原郷としての)
    *贈与交換の社会〜親戚のような連帯性
    *個人へ富の集中させない→権力や階級を生じさせない→心の連帯を求める集団

    縄文時代
    *縄文文化は 北海道、本州、四国、九州、琉球で展開〜抜歯が行われた人骨、イノシシ祭り、土偶
    *日本列島の縄文人は 異なる生態系を超えて 共通の宗教や儀式(縄文イデオロギー)を共有
    *縄文時代の巨大な土木遺産=縄文社会の心の豊かさの証拠→静川遺跡、垣の島遺跡など〜聖域、祖霊を祀る場→心の豊かさ

    続縄文時代(弥生時代)
    *日本列島に弥生文化が広がるなか、北海道の縄文人は弥生文化を拒否
    *縄文イデオロギーとしてのイノシシ祭りが アイヌのクマ祭〜子熊を一定期間飼って 殺す習俗(神の国に送り返す)〜へ変化

    擦文時代(奈良、平安)
    *毛皮、サケ、大鷲など交易品を生産し、本州へ流通
    *東北からの移住者(エミシ)→擦文文化を形成→富を求めて商品生産社会に転換し、他者の領域を侵して成長
    *擦文文化では、墓や墓地がない〜擦文文化の特徴は 複雑な文様の土器、竪穴住居

    ニブタニ時代(鎌倉以後)
    *交易品をさらに拡大→北東アジアへ進出→アイヌは 日本と北東アジアを結ぶ中継交易者

    アイヌの縄文思想
    *和人、北東アジアとは 交易(物々交換=商品交換)をしても、アイヌ同士は 贈与により モノをやりとりしていた(贈与交換)
    *人々を親戚として結びつけるような連帯の原理
    *商品交換は 人々を不平等化し、差別化する原理→戦争を常態化させ、王を誕生させ、国家を成立


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    投稿日:2022.02.18

  • tomokuni0714

    tomokuni0714

    日本の総氏神が伊勢の天照だと言われる中、どうしても納得と同意しかねていた自分が立てた仮説に答えを与えてくれるような記述が多く発見できた書籍特にアイヌに縄文の流れが残ると言う基論を下地に展開される証拠の数々は、改めて多くの旅への機会を提示してくれた。一冊で三度以上の楽しみができた。まずは感謝!そして出会えたことに礼◎続きを読む

    投稿日:2021.01.15

  • あんず

    あんず

    シャーマンキングやゴールデンカムイなどの漫画からアイヌに興味を持つようになり、ちょうど筑摩書房のセールもやっていたため購入。

    縄文人の末裔であるアイヌの歴史を振り返りながら、同じ祖先である縄文人の縄文思想とは何だったのかを考えていく内容です。
    これは良書ですね。
    遺伝子的な部分だけではなく、言語や文化、風習などといった多角的方面からアイヌの歴史について述べています。
    そして参考文献の数がすごい…。

    アイヌを語るのに欠かせない本州との関連や中国やロシアなど大陸側との関係にも言及されており、より理解が深まります。
    今のアイヌはただ縄文人が外部の文化を受け入れずに現代まで続いているのではなく、様々な文化と交わり変化していった姿だということがよく分かりました。
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    投稿日:2020.06.28

  • mishuranman

    mishuranman

    このレビューはネタバレを含みます

    漂海民は魚などが銭で変われることを好まず、陸上の知人に贈り物として与え、その返礼として催事に招待をしてくれることを良しとし、そうした関係を親戚とよんでいました。この親戚は、漂海民にとっての疑似親族、中立地帯であり、彼らはこの親戚を通して外部の商品経済との関係を保とうとしていた。アイヌが守り通そうとした縄文思想とは人々を親戚として結びつける連帯の原理であり、商品交換を忌避したのは、それが人々を不平等化し差別化していく原理だったから。縄文の思想を知る意味とは、非対称化していく歴史のなかで原郷の思想である連帯と平等をかたくなに守り通そうとしてきた人々が今なお私たちの目の前にいること、さらには漂海民のようについ最近まで私たち自身のなかにもいたことを通して、その意義に今一度おもいをめぐらせてみる。
    ここまで新書1冊で来られる。なんとはるかに。

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    投稿日:2018.11.01

  • obana

    obana

    おもしろい!
    サブタイトルの通り、「もうひとつの日本の歴史」が鮮やかに描かれている。
    ひとつひとつ実例を混じえ論理を積み重ねていきつつ、
    全体としてとてもダイナミックな構成となっている。
    古代から中世にかけて日本にに数々の民族が存在したことを、
    恥ずかしながらよく知らなかった。
    彼らの文化、言語、DNAが今の日本人とどうつながっているのかなどは、
    非常にわかりやすく興味深い。
    また、交易や埋葬についてはかなりページが割かれており、
    その民族の文化の中で相当重要な位置を占めていたこともわかった。
    複雑な話をここまでわかりやすく描ける筆力もあるのだろう。
    アイヌや縄文というキーワードだけでなく、民族、文化、精神性などに興味がある人には広くおすすめしたい。
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    投稿日:2017.09.16

  • harmonixy

    harmonixy

    アイヌと縄文 瀬川拓郎 ちくま

    同じ縄文人を祖先に持つからと言って
    2千年以上も異なる歴史を歩んできた私たちは
    互いに補い合う精神的な文化を選んだアイヌと
    権利を主張し合い知識による文明を目指す弥生文化を選んだ本土人を
    同一視することはできない

    しかし現代の日本人として縄文的精神文化を振り返り
    彼らが大事にしてきたお互いの関係に自主的な参加をする全体感という
    総合的な生き方を取り戻すことが可能なのだとつくづく思わされた

    それにしてもアイヌと一口に呼べないほどこの二千年は多様であり
    意思を貫きながらも生き延びるために
    互いを補い合う譲渡の文化と駆け引きによる交易の二刀流を使い分けた
    したたかさに頭が下がる
    所有意識がもたらした侵略という競争に依存する行為が
    物的な文明の促進のみを目的にする視野の狭さを
    育ててきたことの愚かさに気付かされる

    そろそろ欲ばかりでなく自主的な選択で
    前向きなしたたかさを手にして私達も
    墓穴の中から這い出すことが大事なのだと
    この本で学ばなければならない峠を向かえているのだと思う
    続きを読む

    投稿日:2017.03.07

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