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ジョン・ディクスン・カー, 加賀山卓朗 / ハヤカワ・ミステリ文庫 (24件のレビュー)
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総合評価:
マルティン☆ティモリ
8
怪奇趣味あふれる古典的名作
余りにも有名な作品。 かなり以前の事、旧訳を購入して読み始めたのだが、文章が読みづらくて途中で挫折した。後で知ったところによると、あれは箸にも棒にもかからないほどの悪訳だったらしい。この新訳は読みやす…くて、カーの名人芸が堪能できる。 読者に死人が墓から蘇ったかのような印象を植え付ける奇怪な冒頭から始まって、仮面をつけた男の訪問と、その男の姿が消失してしまう密室での殺人、死に際のとぎれとぎれの言葉、さらにあるべき足跡がない雪道の密室、探偵役のフェル博士による有名な密室講義(この部分は有名な割にそれほど大したものではなかったけれど小説の中の一部なんだからこんなものですね)、そして最後にすべてを合理的に説明づける驚愕のトリック! ミステリ好きにはたまらない状況の連続で謎の解明まで飽きさせない。 最後のフェル博士による真相の説明の部分はちょっと切れ味に乏しく冗長だったが、あれだけ複雑な謎に辻褄を合わせなければならなかったんだから、こうなってしまうのも仕方ない。トリック自体は素晴らしいものだったし真相の意外性も申し分ない。ミステリの謎とき部分と言えばまあ他の作品でもこんなものだと思う。そこに至るまでの道程が素晴らしいのだ。 未読の皆さん、読み進める際には是非ともメモをお取りになって、提示された謎が様々に変化しながら深まっていく過程を楽しんで下さい! 続きを読む
投稿日:2015.05.30
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may
このレビューはネタバレを含みます
エドガー・アラン・ポーの早すぎた埋葬モチーフを本歌取りしたらしい、墓場から土をかき分けて這い出す手、という雰囲気満点のつかみが気になりすぎて、真相がわかるまで一気に読んでしまった(これ、真相あてられる人いますかね?MIT白熱教室で複雑な数式を用いて再現実験してもらいたいような…)。東欧出身の三兄弟が絡む骨肉の争い、という点でエラリー・クイーンの某国名シリーズに通じるものがあり、どちらも「仲が悪すぎじゃない...?お母さん泣くよね」と突っ込みを入れたい。ただし本格推理のため(だけ)にホラー並みの血みどろ惨劇が淡泊に展開されてまったく怖さを感じないとぼけた味わいの某作に対し、本作は主人公のろくでなしなハチャメチャぶりに人間臭さを感じる。また練られた犯罪をほぼ完璧に遂行する犯人を綻びとも言えない極微細な違和感から突き止める鮮やかさが魅力だった某作も好きだが、やたら凝った計画を出だしで大失敗しながらど根性の力業で乗り越え...ようとして周囲の人々を謎だらけの困惑に陥れたドタバタ劇-結局何がやりたかったのか博士の説明にあまり納得できない、むしろ命取りなパニック状態?-には妙な愛着を覚えてしまった。「2発目はお前だ」、そりゃそうよね!そこそこ顔の知られた人物が派手な服装で街中の近所を歩いたら誰かの目につくリスク高そうだけど…人の好い居候のお爺さん、助かったのかな、あなたが善意で助けた人物は高邁な思想の政治犯ではなく銀行強盗でしたよ。。。
投稿日:2024.02.19
ひまわりめろん
「また罪を犯してしまったよ、ハドリー」博士は言った。「また真実を見抜いてしまった」 はい、このミス海外2024年版の1位『頰に哀しみを刻め』と同3位『処刑台広場の女』(こちらは未読)の翻訳者であり、…現在ひまわりめろんの中でプチブレイク中の加賀山卓郎さん なんとあのジョン・ディクスン・カーの翻訳も手掛けていらっしゃいました 翻訳者さんで選書するのを「通」だと思っているワタクシですので、早速かの有名な『三つの棺』を読んでみましたよ! (『処刑台広場の女』はまだ読みません、焦らすね〜) もちろん海外古典本格好きのワタクシが『三つの棺』を読んでないわけがありませんので、一応再読ということになりますが、前回は三田村裕さん訳でした 今回は「新訳」と銘打ったものだけあって、いや〜読みやすかった!ちゃんとは覚えてないけど三田村裕さん訳はもっと難解だった気がするな〜 今の子たちはほんと幸せよね この幸せを活かしてどんどん読んでほしいわ古典ミステリー もうすごいから 本作『三つの棺』も、もうすごいです カーが生み出した名探偵のひとりフェル博士が活躍する密室殺人ものなんですが マジで、マ!ジ!で!教科書です あらゆる意味で密室殺人の教科書と言える作品で、これ読んだことない人は本格ミステリオタクとは認めてもらえません 本棚にこれない人は神保町にある社団法人本格ミステリオタク協会の会員資格を得られません 受け付けで追い返されます「こちとらボランティアじゃないんだよ!」とガチギレされます「非営利違うんかい!」言っても「税金払っとるわ!」とさらにキレられます もう読むしかないわな『三つの棺』こうなる前に 次は加賀山卓郎さん訳何読もうかな〜(『処刑台広場の女』違うんかい!) 続きを読む
投稿日:2024.01.11
祥
密室もののディクスン・カーの傑作、と昔何かで読んで、初めて読んでみた。フィル博士のシリーズものの1つらしいけど、他の作品を読まなくても楽しめました。 密室で死んだ男、直前に押し入った謎の男は部屋の中にはおらず、建物の周囲は雪に覆われていたが故に、犯人と思われる謎の男が忽然と姿を消したことを示している。事件の解明に乗り出すフィル博士たちだが、間をおかずして、第二の事件が起きる。雪道の上、近距離で撃たれたであろう男の死体、本人以外の足跡は残されていない。空でも飛べなければ不可能な殺人を、現場の状況と、関係者の発言からパズルのピースをはめるように解いていく。 雪を舞台装置にした密室ものの先祖がこの作品なのかな、と思いながら読んだ。途中に入るメタい講義も、独創的だと思う。つららを凶器に使ったトリックと聞いて斜め屋敷が脳裏によぎった人は私だけではないはず。 たまたま時計が遅れていたり、やたら頑丈な被害者だったり、内心「そんなんあり?」とツッコミ、ちょっとスッキリしない気分と、海外の古典っぽい独特の言い回しや冗長さを楽しみながら読了。
投稿日:2023.11.12
きりしき
良くできているが、面白くはない。 事件パートが密室パズルを出題するために用意されているようで魅力的ではないし、探偵役のキャラもただ不可能状況を提示するために動いている。 密室談義の部分で、「現実感がないといってミステリを批判するな」といった話が出てくる。それはそのとおりだと思う。ミステリにはあっと言わされるようなものを求めてる。ただ、現実感のなさにも2通りがあると思う。1つは、有り得そうもない奇抜なトリック。つまり「思いついてもやらんやろ…」。もう1つは、必然性が薄いために起きえないと思うもの。つまり「そんなんよう起きんやろ…」というやつ。この作品はそれで言うと後者だ。密室殺人という不可能を可能にするために「目撃者が頼りにした時計がズレてた」「撃たれてからもあるいていて偶然であって撃ち返した」「撃たれてからもしばらく大丈夫だったが、密室に入ったあとにはずみで死に至った」といった偶然を重ねていく。今回のような事件が起きない、とは言わない。起きたから小説になったのだ、と言えるから。不可能状況を可能にするために多種多様な仕掛けの部品を用意して、それらで一つの密室という機械を作り上げる執念には感心する。ただ面白いかというと別だ。私は手品の種をきいてなーんだと思うよりも、手品の種をきいてなお魔法の世界に居続けられるようなミステリのほうが好きだ。
投稿日:2023.09.01
もぐ
図があるにもかかわらず物の位置関係をきちんと把握できない自分の空間把握能力のなさのせいでこのお話のトリックを100%理解できず…お話自体は非常に面白いです!
投稿日:2023.06.27
tomo
最近の作品と違って少し読みづらさを感じたが、密室についてよく練られた作品であると感じた。 かの有名な密室講義は他の作品を読む上でさらに面白さを向上させるような内容だったが、当の密室トリック自体は個人的…にはうーんという感じだった続きを読む
投稿日:2023.06.12
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