【感想】後宮小説

酒見賢一 / 新潮文庫
(201件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
68
62
44
14
1
  • 書き出しがぶっ飛んでる!

    「腹上死であった、と記載されている。」
    この一文から始まる、今は休止された日本ファンタジーノベル大賞の第1回受賞作。
    皇帝崩御によって後宮入れ替えの募集に応じた田舎娘・銀河が正妃になるというシンデレラストーリー。
    「素乾」国の正史や歴史通釈書から後宮にまつわる話を小説として構成したという体裁を採っていて、所々にある書き下し文や引用文献名のもっともらしさに架空の国だとわかっていても「こんな国本当にあったんじゃないか?」と思ってしまう面白さです。
    また、好奇心旺盛でイキイキとした銀河、個性的な銀河のルームメイト達や教師達、反乱軍のゴロツキどもも皆魅力的です。ラノベ小説バリにキャラクターが立っていて、お気に入りを見つけて読むのも楽しいかも。
    ファンタジーノベル大賞の受賞記念に作製されたアニメ「雲のように風のように」を小学生の時に見て面白かった覚えがあり、中高生の頃にこの原作小説を初めて読んだ時には最初の一文にぶっ飛びました。さすがにアニメでは性的描写は割愛されているので子供の時にはわかってなかった。少しHなシーンもあるけれど、カラッとした描写で笑ってしまいます。
    続きを読む

    投稿日:2014.07.31

  • 著者のデビュー作にして、(今のところ)最高傑作

     第一回日本ファンタジーノベル大賞受賞作で、アニメ「雲のように風のように」の原作です。
     正直、アニメは毒気が全くなくて(子供向けだからしょうがないか)、物足りないとお思いのあなた、ぜひこの本を読むべきです。アニメでの登場人物の造形は原作にかなり忠実と思われるので、違和感は無いと思われます。
     ジャンルとしては、確かに東洋歴史ファンタジーとしか言いようがない作品ですが、リサーチは行き届いていて、魔法とか超自然的なものに逃げることなく、本格的な歴史小説のようなハードな部分も持っている小説です。
     だからといって、取っつきにくい部分は全くなく、からっとした乾性の雰囲気の(その当時はまだ概念としてなかった)ライトノベルのような軽い、楽天的な小説です。でも、絶対ジュブナイル小説ではありません。(ジュブナイル向けではないシーンもいくつかあります。)
     とにかく、物語世界と登場人物の造形がしっかりしているので、読んでいて引っかかりが全くありません。するすると納得して読めてしまいます。
     西洋風のファンタジーに飽きた人、中国を舞台としたファンタジー小説が好きな人はもちろん、大体の読書好きなら読んで損はない万人向けの小説だと思います。

     なお、個人的には、日本ファンタジーノベル大賞で最終選考以上に残ったなかで本として刊行された小説では畠中恵氏の「しゃばけ」がベスト、次点が「後宮小説」と思っています。
    続きを読む

    投稿日:2014.12.23

  • 壮大なるホラ話

    第一回日本ファンタジーノベル大賞にして酒見賢一氏のデビュー作となった小説ですが、受賞が1989年ですからもう四半世紀が経つのですね。いつかは読もうと思っていましたがようやく読みました。

    氏の大作「陋巷に在り」などは史実が元になっていますが、この「後宮小説」は全てが作り話。正史「素乾書」にはこう記されているとか、歴史家が著した「素乾通鑑」という文献ではこう書かれているとか、もっともらしい作者の蘊蓄が入りながら歴史絵巻風に物語られますが、それらの文献も含め何もかもが作者の創作です。「素乾国」という国が「幻影達の乱(渾沌の役)」という内乱で滅亡するのですが、その最後の皇帝の正妃となる地方の庶民出身の娘の一代記という体裁で一国の存亡が語られます。小説が終わった後に作者が語る後日譚まで味があって面白いです。

    新皇帝が皇太后に命を狙われているなど陰謀が渦巻いていますが、主人公「銀河」の性格からかなんとも爽やかな物語になっており、魅力的なキャラクターがたくさん登場するのでとても楽しく読めました。私の好きな登場人物ベスト3は、
    1. 渾沌 - 反乱軍の参謀、冗談のような反乱が国を滅ぼすことになりましたが。
    2. 角先生 - 女大学の講師、性を哲学として極めています。銀河の恩師ですね。
    3. 江葉 - 銀河の同僚、後宮が解散した後は二人で市井を席巻したんだろうか。
    ですかね。正妃さんをランキングに入れるのは恐れ多いのでこうしておきます。(^^)
    続きを読む

    投稿日:2016.01.28

ブクログレビュー

"powered by"

  • なえまる

    なえまる

    252ページ
    1200円
    9月28日〜9月29日

    ある国の跡継ぎを得るための後宮の物語。後宮に務める女としての心得を説く。

    不思議な話だった。赤裸々で、どこかの国の本当の話なのかという書き方だった続きを読む

    投稿日:2024.03.25

  • yuukichimaru

    yuukichimaru

    追悼 酒見賢一さん
    訃報ニュースから改めて手に取りました。
    1989年受賞作品だったんですね。当時、アニメを見てから原作を手に取って、アニメで描かれていなかった部分を読んでびっくりした記憶があります。「17世紀初頭の中国を思わせる架空の国の王朝」という設定にすごく新鮮な感じがしました。
    ご冥福をお祈りします。
    続きを読む

    投稿日:2023.11.16

  • tybsk

    tybsk

    小田雅久仁さんのインタビューで載っていて気になって読んだ本。
    なるほど、こうやって本は脈々と繋がって行くんだなあと思いました。
    ユーモアでありながら、哲学も描き、軽やかな悲しみも小田雅久仁さんの筆致に受け継がれています。
    渾沌が一つのテーマになっているのも面白かった。
    続きを読む

    投稿日:2023.01.20

  • 霧明

    霧明

    このレビューはネタバレを含みます

    好奇心が服を着て歩いているような素直な平民少女の銀河が後宮へ召し上げられ、前代未聞の活躍を遂げる話。

    銀河がいかに真っ直ぐで破天荒な人間であるか、彼女が成した偉業がどのようなものであったか、ということが歴史小説風に記されている。
    サッパリした性格の銀河が、彼女の周りのくせのあるルームメイトや女大学の師範といった魅力的な人物との丁々発止なやり取りや不思議な魅力のある双槐樹との関わりで少しずつ変わっていくところがじわじわ面白かった。銀河の偉業を語る上で欠かせない男、ここぞというときに命を張る博奕に勝ち続ける渾沌に関しても少なからぬ分量が割かれているが、一貫して気分屋であるという彼の在り方もなかなか面白かった。

    これ、たぶん今似たようなものが世に出るとしたら、主人公の銀河と渾沌は絶対に転生者とか異世界人とかそういう設定が生えてるんだと思う。本作はそんなことはなくて、純然としたファンタジー(作者はあとがきで否定しているが)だと思った。歴史家という少しばかりメタっぽい視点こそあるけれど、「自分の時代の自分の国で自分の物語を生き抜いた、ちょっと変わった人たちの話」という点ではかなり筋が通っているなぁと感動してしまった。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2022.12.10

  • ゾウガメ

    ゾウガメ

    このレビューはネタバレを含みます

    さすがファンタジーノベル大賞
    ずっとど真面目にシモの話してるから人に勧められるかって言われたら違うけど個人的にはめちゃくちゃ好き
    何よりそれぞれのキャラクターが良くて一切モヤモヤしなかったスッキリ読めて気持ちよかった
    これは物語の為に書かれた物語

    レビューの続きを読む

    投稿日:2022.07.16

  • ふっこ

    ふっこ

    何年も前に読みましたが図書館でみつけて再読。ファンタジーノベル大賞受賞作。中国王朝を舞台とし、田舎者の少女が正妃となるシンデレラストーリーの要素も含むファンタジー。さらりと読め、架空の王朝にタイムスリップしたような気分になれる一冊です。 続きを読む

    投稿日:2021.10.02

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。