【感想】繁栄 明日を切り拓くための人類10万年史

マット・リドレー, 大田直子, 鍛原多惠子, 柴田裕之 / ハヤカワ文庫NF
(23件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
11
7
4
0
0
  • 通俗悲観論の解毒剤として

    本書の主張をまとめるとこんな感じでしょうか。
    「分業による専門化が人類の発展をドライブしてきた。現在の人類は、過去のどの時代とも比べ物にならないくらいの繁栄を手にしている。だから未来への過度の悲観論は慎もう。」
    当たり前と言えば当たり前のことでありワタクシも大筋で同意するのですが、たとえて言えば社会科の教科書を読んでいる気分で、当たり前なだけにいまひとつ面白みに欠けます。ちょっと難癖気味の感想ですが、刺激的な終末論のほうが流行るのが分かる気がしました。

    また、古今東西にわたってさまざまな例を引いて見事な博引傍証ぶりではありますが、事実を元に考証すると言うよりか主張をサポートするために事実を並べている印象を少し受けました。重箱の隅をつつくようで恐縮ですが、日本に関する記述で「あなた一体ナニを調べて書いたの?」と言いたくなる箇所もあって、全体的な信頼性に疑問符がついてしまいます。大部分まっとうなことが書いてあるに違いないとは思いますけれどね。
    続きを読む

    投稿日:2013.10.14

  • 合理的な楽観主義

    小泉元総理は、この本を読んだのではないか。
    「政治が原発ゼロを決めれば、知恵は専門家から出てくる」
    これは本書でいうところの、合理的な楽観主義にほかならない。
    人間の進歩は結局これまでよいものだったこと、
    これまで良かったことが、いまさら続かなくなるとは決して言えないこと。
    本書は、様々な事例を通じて、これを証明し、変わることなく世界が繁栄し続けることをうたう。
    世界は悪くなる一方と、悲観的になりそうな時に読む本。
    続きを読む

    投稿日:2013.11.26

  • 合理的な楽観主義者が語る世界は何の心配もいらなさそうだが本当だろうか?

    確かに昔は良かったという幻想とは裏腹に明らかに今の方が良いというデーターはあふれている。世界中で平均寿命は伸び、新生児死亡率は概ね低下しており、2005年は50年前と比べると地球上の平均的な人間で所得は3倍になり、摂取カロリーは3割増以上で寿命も30%以上延びた。人口の爆発的な増加にも関わらず世界中の人々が手に入れられる商品やサービスは増大した。間違いなく物質的な豊かさはましてきている。

    では物質的な豊かさで人は幸福になったのかというと2008年に人は豊かになるにつれ幸せになるという分析が示されている。まあこれには否定的な意見の人も多いだろうが個体数が増え、寿命が延びているのだから繁栄しているというのは間違いではない。交易がその鍵になったというのが著者の考えで、自給自足の生活よりもそれぞれが専門性を高め物々交換を始めたことで収穫量が増大する。交易は信頼を醸成し信頼が取引コストを下げる。当然上手くいかないこともあるが交易量の増加は一方通行といって良いだろう。

    世界大戦のイメージにも関わらず戦争(国家間やら隣の村やら)で死亡する人数は近代になり減っているしそういう意味では世界は平和になっている。日本だって殺人事件の件数は減り続けているのだ。少し古いデーターだが2003年の日本人の屋外での死亡原因第一位が交通事故なのに対し、家庭内での事故(転落、転倒、浴槽での溺死、誤嚥による窒息などなど)の方が多い。

    マルサスの人口論、ローマクラブの成長の限界にこれでもかこれでもかと反証をぶつけ続ける。最後の山は気候温暖化だがそれにたいしても問題なしとゆるがない。恐らく人口は100億か多くても150億で飽和すると見られており、問題はそれを抱え続けるだけの資源が続くかなのだが、過去にも同様の警告はいくつもあり、その度新たなイノベーションで食料も燃料も増やし続けてきた。必要に応じて新たな発明が起こるのでこれからも大丈夫というのが著者の主張だ。ビル・ゲイツでもそこまでは言わないだろうという楽観論だが、いろんな懸念があることはわかっていて、それでもあえて楽観論者でいようではないかということだ。

    過去より今の方が良いという主張には賛成ながら、今まで大丈夫だったからこれまでも大丈夫と言い切られてもちょっと真に受けるのはどうかと思う。まだ大丈夫だというのと今のままで良いというのとは違うし著者の楽観論も必要に応じて変化すると言うのが前提にある。まあ暗い話に飽きた人には良い本なのでは。
    続きを読む

    投稿日:2014.06.20

ブクログレビュー

"powered by"

  • なおゆき

    なおゆき

    人類が交換と専門家により繁栄してきて、そしてこれからも繁栄は続いていく。
    世界は絶望に向かう悲観論に注目されがちだがこれまで予測されたものは大きく外れている。
    むしろ予測に反して世の中は良くなっており貧困や病気、環境問題、エネルギーなど改善されてきている。
    少し楽観的な主張は強いと感じたが全体的に世界が良い方向に向かっているのは間違いないと思う。
    昔は良かった,というフレーズはここ最近ではなく何千年も前から言われているが、実際全体の数字で見ると世界の問題は確実に解決されてきている。
    人間は昔(というか恐らく自分が若い時代)とネガティブ論が好きなだけでそれに現実的で数字や根拠を用いてツッコミを入れている本。
    続きを読む

    投稿日:2023.09.30

  • 349gjwsinferas

    349gjwsinferas

    合理的楽観主義者の本は読んでいて明るい気持ちになれる
    そして、分業と専門化、それを支える信用は最近考えていたことが言語化された感じがして面白かった。

    発展した場所は必ず規制と保護主義の温床になるので次の自由、資本、知識が流動化している場所に飛び込むことが大事だと思わされる本
    ーーーーーーーーーーー
    - 人類は分業と専門化によって発展してきた。
    - 分業と専門化には信用が必要で、利己主義になりすぎると継続的に分業ができなくなるため、継続的に取引が行われる場合に人間は礼儀正しく振る舞う。
    - 知らない相手との分業に役に立つのが、貨幣と国家による法律の設計。法律によって、完全に見知らぬ他者を信用して分業が可能になる。
    - この信用が発達した結果、銀行業というシステムが生まれ、貨幣領域において信用が信用を生むサイクルができた
    - イギリスは工業の勃興期に自由貿易を推進する人間が首相になった、これにより分業が爆発的に広まり急激な経済発展が起きた
    - 逆に保護主義は分業を止め、貧困に陥る
    - 自由、資本、知識が十分に流動化する場所には機会が溢れており、才能が集まる
    - 具体例は以下
    - ここ30年のシリコンバレー
    - 戦後の日本
    - 産業革命期のイギリスで
    - 発展した後は、そこで蓄えられた資本を守ろうとするインセンティブが働き、大企業優位な規制が蔓延し保護主義になる
    - それが発展を止める
    - 一方で、知識も分業が起きている。特に、テクノロジーは既存のテクノロジーを組み合わせるが、部分の総和より大きい全体となる。
    - 車を社会実装したヘンリーフォードは自分は何も目新しいものを発明していないと認めたことがある
    - イギリス人はモーターと発電機を発明したマイケル・ファラデーを褒め称えるが、そのアイデアの半分はデンマーク人のハンス・クリスチャン・エルステッドに負っている
    - アメリカ人はエジソンが白熱電球を開発したと学ぶが、実際はイギリスのジョセフ・スワンやロシアのアレクサンド・ロディ人などの商業的に成功しなかった先人の功績である
    - 分業の規模は市場の規模に応じる
    - 世界の貧困が減少しているのは世界規模での分業が発展してきているからである
    続きを読む

    投稿日:2022.12.05

  • honnyomimann

    honnyomimann

    ヒトの繁栄は,その社会全体で分業(専門化)と交換.
    繁栄=時間の創出
    時間に余剰が生まれることで,さらなる価値創出の機会が生まれる.これを繰り返して人はどんどん幸せになる.

    テクノロジーにとっての交換は遺伝子にとっての生殖に値.

    確かに,昔の生活を思えば,生活を維持するのに必要なコスト(1日のうち他者に貢ぐ時間)は減っているように見える.
    周囲の人間はその余暇を無に使っているような気がするが


    利己的な遺伝子やファクトフルネスとも親和する内容であり自然科学(生物,進化,環境...)と社会科学(経済,政治,経済史,歴史...)を縦横無尽に横断する良作.
    これは手元に置いておいて読み返したい一冊.

    読書スタミナがなくて後半は読まずに返却.リベンジする
    続きを読む

    投稿日:2019.04.06

  • うみ

    うみ

    早川書房公式ツイッターで紹介されていたので購入。
    ああ、ありがとう>早川書房公式ツイッター
    「人類の未来」について述べている書籍のほとんどが、『悲観論』に満ちあふれている。書店にはありとあらゆる悲観的な未来についての情報で満ちている。でも、本当に未来は悲観的なの?明るい未来は来ないの??ってなんとなーく思っていたのが腑に落ちる本が見つかった感。そう、こんなのが読みたかったね。歴史をたどれば人類が、いかに発展してきたのか。現在の自分の生活を百年前のエリート層と比べて、二百年前の上流階層と比べて、三百年前の王侯貴族と比べていかにすばらしいか。人類は、『交換と専門化』これによっていかに進歩に進歩を繰り返してきたのか、そして、現在の社会はますます『交換と専門化』を推進している。このままいったら大変だーじゃなくて、このままですむわけないでしょと!
    技術により困難が生じても、技術がもっと進めばその困難は解決できるんじゃないかなあ
    続きを読む

    投稿日:2018.10.14

  • naoki10617

    naoki10617

    まず読み切った自分褒めたい 笑

    人類は交換と専門化によって発見や発明を繰り返して進化してきた。今、世界的な社会問題としてある貧困や人口爆発、地球温暖化だって、乗り越えられるはず。
    このことを大量のデータや過去の前例を踏まえて理論的に説明した「合理的楽観主義」の本。

    読み終わって思ったのは、社会全体が変わっていくことを恐れてはいけないということ。状況は変わっていくのに自分たちが変わらなければ当然自分たちが苦しくなっていく。その変化に対応する、むしろ、その変化を自分で引き起こすくらいの気持ちと力が求められてる気がした。

    少なくとも、今の自分の周りの人たちは安定を求める人が多い。きっとその価値観から1歩も出れない人は繁栄していく社会の変化に追いつけないのだろうし、自分自身、貪欲に進化しなければならないと感じた。
    人類の繁栄は個人の安定を保証はしないのだから。


    きっと医療の世界も繁栄のために変わっていく。その中で個人として生き抜くためにはただ漫然と仕事をしていくのではダメなのだろう。
    具体的な話をすれば、AIと比較した自分の利点となる技術を身につけるとかね
    続きを読む

    投稿日:2017.12.03

  • show

    show

    巷には誤った認識が多数あることが分かった。
    グリーンピースといった環境テロリスト達がいかにいい加減でデタラメな人々・組織なのかがよく分かる。
    将来・未来に悲観することはない,楽観して大丈夫,だと思わせる内容である。

    「進化は万能である」と違って訳文も普通だし,書いてあることも至極まっとうである。リドレー氏は変な人ではなかった。訳者が悪いのかもしれない。先に「進化は万能である」を読んでしまったのが失敗かもしれない。
    続きを読む

    投稿日:2017.01.10

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。