【感想】プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神

マックス・ヴェーバー, 大塚久雄 / 岩波文庫
(115件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
33
35
26
3
0
  • 分かりやすい現代語訳で古典の名著を

    社会学的に避けて通れない程の名著。
    久し振りに電書で読んでみたら、以前読んだのが何時のどの版かは定かではないが、随分噛み砕いた翻訳で読み易くなっていて驚いた。……とはいえ一種の「専門書」ではあるので。まずは訳者による解説を一読した上で、改めて本文を、脚注は飛ばして読み進めるのをお勧めしておきたい。脚注は全体像をそうやって把握した上で、著者の多面的な関心や著者への批判に対する反批判を押さえておくために読むのがベター。
    (なお電子書籍版では後半1/2が索引と、ハイパーリンクでジャンプするための脚注[本文内に記載されたものと同内容]で占拠されているため、ぱっと見ほどのボリュームでもなく、割と楽に読み終えられる)

    大澤真幸的理解で噛み砕くと。
    それまでの中世的世界観は誕生>幼児>大人>老人>死の円環を、直近世代で若干の重なり合いを持ちつつも、延々繰り返す…厚みゼロの円を、世代を重ね延々繰り返すようなイメージだったと。
    そこに宗教改革の波が押し寄せた。ルターがBeruf(天職)概念を聖書翻訳に導入し、カルヴァンで更にその世俗化(生臭な聖職よりも清くつましい生活を送る世俗者の方が救われるべき>修道士の生活スタイルで世俗生活を送る事が推奨され、儀式儀礼的なモノが排除される)が進められた。
    更にカルヴァンの後継たるカルヴィニストらでは「神の恩恵が与えられるのは一部の選ばれた者だけ」という予定説概念が導入される。
    その恩恵を受ける「予定」に入っているかどうかは、絶対者たる神と相対者たる人の間が断絶している以上説明も理解も不能。
    しかし、「人間には推し量り得ないとはいえ、神は合目的性を持って世界を生み出した筈」「だから合理的な社会の実現のために邁進すべき」「そして被造物神化(偶像崇拝の拡張概念。物神崇拝)は厳しく抑制されるべきだから、生理的な欲求も厳格にマネジメントし、利益や財産の発生は否定しないがそれに安逸してはいけない」という、実践を行う事によって自分が選ばれた者である事を実感できる、という。
    ここで最後の審判という無限遠点に至るまでの時間を、果てしなく微分した「今」の実践で時間を捉える…直線的・一方向進行的に時間を捉える…世界観が生まれたのだとか。
    (ヴェーバーの本書に微分概念は出て来ない。また生活時間を一定時間で区切って管理するスタイルは修道士の模倣で生まれた事に注意)
    これは一種のカルトとも言える思考であり、メンタル貴族主義でもあり、常に自分が救われるべき存在である事を確信したいがために、強迫神経症的に「実践」を強いられる事になる。
    その強迫神経症が資本主義黎明期の爆発的なエネルギーを生み出した、という考え方が本書の基本トーンになるだろうか。
    大澤理解によれば上記の時間概念のパラダイム変化により、中世の資本主義=遠隔地貿易のリスクテイクによる利潤から、近代・現代の資本主義=時間の離れた未来に対するリスクテイクによる利潤、が生まれたという捉え方もできるが、それは本書から離れた別の話。

    何はともあれ。折角読み易い翻訳で名著が刊行されているので、読まない手は無いのではないかと。
    続きを読む

    投稿日:2013.11.04

ブクログレビュー

"powered by"

  • fumio

    fumio

    初の古典。とにかく日本語が意味がわからない。最後の解説から読めばよかったと読み終わったあとに気づく。

    解説いわく、宗教的な強制的禁慾という精神が、本当の意味での資本主義を形成していき、最終的にな宗教的倫理観に基づく禁欲行動が形骸化してしまい、鉄の檻として、自分たちを資本活動に邁進させてしまっている。そんな分析をしている本だと分かった。
    鉄の檻という言葉を使っているから、ヴェーバーは資本主義の活動自体を、生活を制限するものとして考えていたのかな?とか考える。
    ただの漢字と平仮名に目を通す作業だったが、背景がわかったうえでもう少し読んでみても面白いのかもしれない

    続きを読む

    投稿日:2024.02.14

  • 和歌山のよっしー

    和歌山のよっしー

    著者が生涯を賭けた広大な比較宗教社会学的研究の一部である本。
    難解すぎ。独学の技法で学んだ線引き読解をすること決意。
    【関連書籍】
    イエスの生涯

    投稿日:2023.11.28

  • ぽんすこ

    ぽんすこ

    プロ倫を読み切った達成感、良い…!
    合理的な職業労働やその結果が神に救われているという確証の手段であり、予定説とはなんと厳しく絶望的なものだろう、それを信じる者のエネルギーは凄まじいと思った。
    今、営利活動と宗教をなんら結びつけない私たちに対して著者が引用している一文がかっこよかったのでメモを残しておく。
    「精神のない専門人、心情のない享楽人。この無のものは、人間性のかつて達したことのない段階にまですでに登りつめた、と自惚れるだろう」
    続きを読む

    投稿日:2023.10.17

  • 司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    331.5
    「ウェーバーは100年前、「禁欲」倫理から生まれ落ちた近代資本主義の最終段階に現れる「末人」をこう「預言」した。「精神のない専門家、魂のない享楽的な人間。この無にひとしい人は、自分が人間性のかつてない最高の段階に到達したのだと、自惚れるだろう」―宗教倫理が資本主義を発展させるダイナミズムを描いた名著。」

    「社会分析の書としてもそうですが、実は「論文」としても第一級品である。ここで扱われているのは、「西ヨーロッパの特定の地域と時期に資本主義が誕生したのはなぜか?」。なぜ中国や西アジアでも、ロシアでもインドでもなく、西ヨーロッパであったのか。この本には常識的なものの見方や考え方を次々とくつがえしてくれる「発見」がたくさん含まれており、非常で高度で難しい内容を、論理的に明らかにしてくれる楽しさがある。ーなお、このウェーバー説をもう少しやさしく解説した著者『社会科学における人間』もおすすめ」
    (『世界史読書案内』津野田興一著 より紹介)

    目次
    第1章 問題提起(信仰と社会的な層の分化;資本主義の「精神」;ルターの天職の観念―研究の課題)
    第2章 禁欲的プロテスタンティズムの職業倫理(世俗内的な禁欲の宗教的な基礎;禁欲と資本主義の精神)

    著者等紹介
    ウェーバー,マックス[ウェーバー,マックス][Weber,Max]
    1864~1920。一九世紀から二〇世紀初頭に活躍したドイツの社会科学者。『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』や『儒教と道教』『古代ユダヤ教』を中核とする比較宗教社会学と、『支配の社会学』『社会学の基礎概念』『法社会学』など、死後、『経済と社会』としてまとめられた膨大な研究を残した。また、社会科学の方法論でも有名な『社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」』を書いている
    続きを読む

    投稿日:2023.08.16

  • gakudaiprof

    gakudaiprof

    解説が丁寧で分かりやすい。武器としての哲学の推薦本であったが、解説によると宗教社会学であり、社会学の一部分である。近代資本主義が発展したのはカトリックからプロテスタンティズムになったためである、ということが首尾一貫して書かれている。いまではだれでもが知っていることであるがそれを説明した最初の本である。カトリックは享楽主義でその日暮らし、プロテスタントは禁欲主義で勤労主義ということで、キリギリスとアリのたとえでもいいのかもしれない。
     解説にあったように注を読み返す、ということが必要な本である。
    続きを読む

    投稿日:2023.07.07

  • いけ

    いけ

    宗教革命は別の形態による教会の支配
    より厳しい支配を受け入れることの謎
    プロテスタント カトリック 
    非現世的と資本主義的営利生活の親和関係
    カルヴィニズムの影響はルター派よりいちじるしい
    資本主義の精神の非合理性

    ルターはベルーフを広めたけど伝統主義的な思想へ向かう
    伝統主義とは利益の追求は追い求めない(修道士的禁欲には価値を置かない)

    日本での経済発展が停滞しているのは社会への貢献の意識がなく利潤が還元されないから?

    救いの確信を得られるわけでもないのにシステムの中で生きていくために何の喜びもなく労働を続ける自分が怖い
    あるいは職業労働の中に新しい救いが現れる可能性もあるけど
    続きを読む

    投稿日:2023.03.18

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。