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紫式部, 山本淳子 / 角川ソフィア文庫 (16件のレビュー)
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総合評価:
崩紫サロメ
10
人生の晴れやかさとしめやかさ、甘さと苦さ
『紫式部集』によれば誰も声をかけてくれず、「仲良くしてください」と歌を送ってもはぐらかされる始末。 結局欠勤してしまい、それがこじれて五ヶ月にもわたりひきこもるはめになりました。(本文・寸評より) …角川ビギナーズ・クラシックスにはいろいろあるが、だいたい、現代語訳→原文→寸評+コラムという形になっている。 未読者や挫折者には「読んでみたい」と思わせ、既読者には「そんな読み方があるのか」と思わせる、その両方ができたら、このシリーズとして成功なのだと思う。 そういう意味で本シリーズの『紫式部日記』は結構好き。<寸評>の部分を上手く使っている。 『紫式部日記』といえば 清少納言の悪口を書いてあるやつか というイメージが強いように思う。 少なくとも私はそれで、あまり好きではなかった。 原文を読もうと頑張ったことがあるが 「あかんこの人、性格暗すぎ・・・」と挫折した。 が、本書は、紫式部の暗くてじめじめして、ちょっといけずなところを とても好意的に読み解いていて、新鮮だった。 それも、根拠のない読み方ではなく、きちんと学説を紹介した上で読み方を提示したり、 上記のように『日記』には収録されていない『式部集』から窺える式部の姿を紹介したり。 最後に添えられた解説も興味深い。 「政治的な意味、個性的な表現」と題した文章、一部抜粋すると また晴れの日とである中宮自身にしても、紫式部の描くその姿は、決して肩で風を切るような様子ではありません。 彼女が歩んできた道の険しさは、当時の貴族社会の人々なら皆常識として知っていたことでしょう。 この作品は、一見華々しい世界がはらむ「苦」の面をあえて目をそらさずに記しているのです。 紫式部にしか書けない、人生の晴れやかさとしめやかさ、甘さと苦さのない交ぜになった個性的な宮仕え記録。 ・・・そんなこと言われるとやっぱり原文再チャレンジ?(笑) ビギナーズ・クラシックスは、「原文を読んだ気になる」ものよりも、「原文を読みたくなる」ものが一番だなあ、と思った。続きを読む
投稿日:2014.10.03
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bukurose
図書館の大河コーナーにありとりあえず借りてみましたが、読みだすと、これが読める。古典は苦手の私にも、現代文、原文、解説、の順に日にちを追って印刷されている。細切れになっているところが読めた理由かも。そ…れに山本さんの現代文、解説がとても分かりやすい。やはり手元に置かねばと購入しました。 「紫式部日記」は、彰子の出産の様子を記すようにとの命令から書かれたものだとの推測。書かれたのは2年後だがその時はメモを取っていたのではという解説。后の出産は一大事、一大イベントであるのがわかります。血は穢れとされ天皇は穢れに遭ってはならないので后姫たちは内裏から出て実家などに帰る。本人は几帳の中にはいるものの回りには女房だけで40人が控え、出産の無事を祈る祈祷の僧侶などもいて、紫式部は分娩室の次の間にいた。道長は几帳の外でサポートし大声をあげている。 「紫式部日記」は A 前半記録部分」寛弘5年(1008)秋の彰子出産前から翌年正月3日まで B 消息体 「このついでに」で始まる手紙文体部分 C 年次不明部分 いつのことかしらされない、二、三の断片的エピソード D 後半記録部分 寛弘7年(1010)元旦から正月15日まで。 この構成は、一旦記録を書き終えた紫式部が飽き足らずにその後を書き加えたとも、紫式部が残した幾つものメモが後の人の手でつなぎ合わされたためとも考えられるが、謎のままだとある。 「紫式部日記」は作者の書いた原本はもちろん、古い時代に書き写された本も伝わっていない。現在残るのは「紫式部日記絵巻」の絵詞以外は皆、江戸時代以降に書き写された写本や印刷された版本ばかりだとある。 2009.4.25初版 2023.11.30第14刷 購入続きを読む
投稿日:2024.05.04
Cherry Kacy
道長妾説、実際どうなんでしょう?大河ドラマ『ひかる君へ』では、恋人って関係だったけど…、(物語盛り上げるため)いやー、気になりますねぇ。紫式部さんのプライバシーににゅっ入ってしまうけど、気になってしま…うー。紫式部さん、人のこと一人一人レビューしてて、なんか面白い。合コン行った時の男定めみたい…。(いい例えではありませんね、ごめんなさい。)続きを読む
投稿日:2024.05.03
yumi
ビギナーズ・クラシックス4冊目ともなると不思議と一冊目よりも原文が比較的すらすらと読めるようになってきました。もちろん詳しい解釈は出来ないので本書の「現代語訳」→『原文』→『解説』はスムーズな理解に大…いに役に立ちました。 日記の作者紫式部は『枕草子』の清少納言が宮仕えしていた定子時代のあとの彰子時代に宮仕えし、本書はその彰子中宮の出産前後のエピソードから始まります。 なかなか理解しがたかった相関図や、当時の雰囲気がとても分かりやすくて、紫式部の目を通して中宮彰子や藤原道長、宮仕えの女房たち、さらには紫式部自身のこともしることができ、面白い構成や時々意地悪だったり辛辣だったりする紫式部のもの言いもとても面白かったです。 そのことには紫式部自身は触れていないとしても、なんとなく、紫式部、道長の愛人説も有り得たかもな、プライドの高い紫式部はズバリ言わずにほんのり匂わせているのかも、と思いを巡らせるのもまた楽しいものです。 宮仕え時代には清少納言と面識はなかったようですが、清少納言の存在が紫式部の作品をさらに上質にさせたのだろうな、と思うとオリジナルエピソードだらけの今放送されている大河ドラマも素直にとても楽しく見られます。続きを読む
投稿日:2024.03.07
yuko-romarin
編者の選択にもよると思うが、思っていたよりお仕事小説だったのが面白かった。 紫式部、それほど陰湿ではなかったけど、 やっぱりちょっと面倒くさい女だな。
投稿日:2024.02.07
marina
清少納言曰く「派手好きな旦那」を持ち、華麗なる宮廷ロマンス文学を執筆した紫式部のことだから、見た目も性格も男女関係もさぞかし華やかな人物だろうと想像していた。紫式部日記を読むまでは。 イマイチ乗り気…じゃない宮仕えが、やがて自分の得意分野(物語執筆活動や出産時の記録係、彰子への漢文講義等)を活かして宮中に居場所を見つけるとともに、知識をひけらかすことなく周囲とも波風立てず穏やかな人物を装うことで時の権力者・藤原道長にも一目置かれるような唯一無二の存在となった処世術は、現代人の我々にも参考になりそうだ。 「マウント女子」とは対極的な紫式部。かと言って容易く周囲に流されるような頼りない性格でもない。「チーム彰子」の女官としての誇りを保ち、同僚やライバル達に対して表立っては言わないが一家言を持っている。悩み事も軽々しく口にはせず、控えめながらも内に秘めた強さを持っている女性だと感じた。 道長と愛人関係にあったのか気になるところだが、自己顕示欲の強くない紫式部の性格からして、もしそうだったとしても後世には書き残さないんじゃないのかしら。わざわざ言及しなくても良いのに道長をあしらったエピソードを敢えて残しているところが意味深だけども。 本書を読み終えると、土御門殿の道長が六條院の光源氏と重なって見える気がした。続きを読む
投稿日:2023.05.05
あんず
大変貴重な史料だった。もちろん原本は残っていないし後年の写本ではあるものの…。この時代にこんなお手軽に読めることに感謝したい。 1000年も前に生きていた人たちの生々しい生活が垣間見える。いつの年代で…も人間は本質的には変わらないんだなと(悪口言ったり意地悪する場面ね) 世の中には清少納言好きで紫式部は性格が悪いだの友達になりたくないだの、嫌なことを言う人が多く、編集者さんも同様の人だったらどうしようと不安であったが一切そのようなことはなく、客観的なコメントをされていて安心した。 確かに明るくはなく物憂げな感じではあるが本人としては世間に対し思うことはありながらも生き抜いたんだろうなと…。 どちらかというと紫式部よりの人間なので気持ちがわかる気がする。続きを読む
投稿日:2021.03.06
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