【感想】わたしを宇宙に連れてって―無重力生活への挑戦

メアリー・ローチ, 池田真紀子 / NHK出版
(17件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
5
7
2
1
0
  • こりゃオモシロい!!

    科学読み物としてはもちろん、宇宙生活関連の資料として、ユーモアセンスを磨くためのバイブルとして楽しめます。
    試し読みには注意してください。
    即買いせずにはいられなくなってしまいます。
    私がそうでしたから。続きを読む

    投稿日:2013.10.14

  • アメリカで最も愉快なサイエンスライターと評されるメアリー・ローチが連れて行ってくれる宇宙は予想のやや斜め上を行く。

    メアリーのこれまでの著作のテーマは死体、霊魂、セックスで、下世話な話題を扱いながら本書でもみられるように独特のユーモアを交えながら下品にならない軽いタッチが特徴だ。原題は「Packing for Mars」火星探検に行くためにこれまでの宇宙開発を下敷きにどう準備するかを広範に取り上げている。

    「宇宙開発のエキスパートにとって、あなたは巨大な頭痛の種だ。」無重力も狭い閉鎖空間も当然ながら人間が長期に暮らすには向いていない。食事、お風呂、トイレ、洗濯と日常生活の全てが頭の痛い問題になる。短期間のミッションなら我慢しろというのが一番簡単な解決法だが火星まで行こうかとすると数年がかりのミッションになるので宇宙飛行士の健康だけでなくモチベーションも大事な要素になる。これがすごく厄介なのだ。

    最初の場面はJAXAの宇宙兄弟で有名な閉鎖空間試験現場から。第一期宇宙飛行士に求められたのは勇気やカリスマ的な才能だったが現在ではストレス耐性や協調性が重視されている。これはミッション期間が長期間になるからだ。例えばNASAでチームワークに関する研究を行った所男女混成>男性のみ>女性のみだったらしい。火星に行くならベストなチーム構成は?アポロ計画の飛行士マイケル・コリンズによれば去勢済み男子クルーがベストだとか・・・。ちなみに体型が小柄で協調性の高い日本人は宇宙飛行士に向いてると言う評価だ。狭い部屋にも慣れている。

    無重力下ではトイレが大問題になる。地球上のトイレは重力を元に設計されているので宇宙では全く役に立たない。当初使われたのは糞便バック、袋の開口部に粘着剤がついていてぴったり張り付けて用を足す。問題はこれで終わらず、口を閉じたままほっとくだけだと大腸菌の働きでガスが出て破裂してしまう。”逃亡者”を作らないためには殺菌剤をふりかけもみ込まなくてはならない・・・。スペースシャトルでは宇宙用便器が開発されたが開口部はわずか10センチ、正しい位置で使用すれば気流で回収するので”逃亡者”は逃げられない。NASAでは正しい位置合わせの訓練用におまるカムつき便器でトレーニングする。自分のお尻をみながら座る位置決めをするのだが、メアリーはチャレンジしようとするも断念。しかし火星に行くには尿も貴重な水分と言うことで濾過した自分の尿を飲んでみせる、チャレンジャーだわ。

    無重力空間では平衡感覚が無くなる。重力下では耳石が転がりどちらが下かわかるが宇宙で頭を急激に動かすと耳石はでたらめにぶつかり、目から入ってくる情報との狂いから宇宙酔いを起こす。船酔いにしてもそうなのだがなぜ吐くのかはよく分からない、吐いても解決にならないのだから。海の上なら魚が集まってくるぐらいだが、宇宙ではこれも大変。バイザー内がゲロまみれで何も見えないのではニュータイプでない人はモビルスーツに乗るべきではない。ただの水でも表面張力で肌に貼り付くのでゲロは凶悪だ。閉鎖空間では臭いがこもりもらいゲロを誘発、うわぁ〜っ。おならですら空気の流れがないとそこにずっと漂い続ける。

    お風呂も問題で基本は入らないのだがこれも悪臭のもとだ。足、股間、脇の下が特にひどい。ずっと着替えない不潔実験では最初の1週間は皮脂の分泌量は変わらない。衣服は汗と汚れのほとんどを吸収する。ジェミニ7号の2週間のミッション終了後には地上での実験以上に宇宙飛行士のパンツはひどい有様になっていた。その頃使ってた集尿器は時々豪快にお漏らししたらしい。無重力下ではシャワーの水滴は集まり大きな塊になるのでからだを洗う役には立たない。現在では日本女子大の開発した宇宙下着が素晴らしい成果を上げている。光触媒の作用により汚れを分解し、抗菌剤が菌の繁殖を防ぐ。若田光一さんは28日間同じ下着を履き続けても不快感はなかったらしい。光触媒を働かせるにはパンツ一丁の時間が長かったのだろうが・・・

    食事もいまでは美味しく食べれる宇宙食が増えているらしいが当初はとにかく少量でハイカロリーが標準だった。毎食エナジーバーみたいな物だ。しかも水分は減らして唾液で戻す。逆にぱさぱさなものはくずが出るのでNGになる。また食事はそのままトイレの問題に直結する。ペットが喜んで食べ糞の処理が楽なそんな食事が理想なのだ。

    無重力セックスは可能なのか?やはりそう来たかというところだがポルノ映画会社が無重力体験の弾道飛行を貸し切ったことはあるらしい。メアリーが調べた限り真実は不明だ。無重力空間では血液が上半身に集まる。映像でみる宇宙飛行士の顔がむくんでいるのはそう言う理由でへそから下には血液は集まらないらしい。と言うことは・・・。

    他にも小ネタが盛りだくさん。火星にたどり着けるのはいつの日か?
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    投稿日:2014.04.20

  • 口の堅い宇宙開発機関への取材記録。

    まだ見ぬフロンティアとして宇宙はまだ謎を含んだかっこいい憧れでもあります。そしてもちろん高度な知識や技術に厳しい訓練を経てなれる宇宙飛行士もそうです。でも、宇宙飛行が輝かしい!と思ったら、それは一部だけのことかもしれません。無重力での嘔吐に、拭えない体臭。排泄も…。人間の生理に関わることはまだまだ解決しなければいけないことも多そうです。

    「宇宙」では、いったいどんな生活が待っているのでしょう。NASAが自ら明かすことのなかった宇宙開発の裏側。空気もシャワーもプライバシーもまだ整備されていないリアルな無呪力宇宙飛行の実態は、実は嘔吐の連続だそう…。

    ユーモラスだけどちょっと下品に明かされる有人飛行にまつわる秘密を、未来の自分と重ねて読んでみてください。宇宙が近づきます(行きたくなるかはまた別です…)。
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    投稿日:2017.04.19

ブクログレビュー

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  • okadata

    okadata

    アメリカで最も愉快なサイエンスライターと評されるメアリー・ローチが連れて行ってくれる宇宙は予想のやや斜め上を行く。メアリーのこれまでの著作のテーマは死体、霊魂、セックスで、下世話な話題を扱いながら本書でもみられるように独特のユーモアを交えながら下品にならない軽いタッチが特徴だ。原題は「Packing for Mars」火星探検に行くためにこれまでの宇宙開発を下敷きにどう準備するかを広範に取り上げている。

    「宇宙開発のエキスパートにとって、あなたは巨大な頭痛の種だ。」無重力も狭い閉鎖空間も当然ながら人間が長期に暮らすには向いていない。食事、お風呂、トイレ、洗濯と日常生活の全てが頭の痛い問題になる。短期間のミッションなら我慢しろというのが一番簡単な解決法だが火星まで行こうかとすると数年がかりのミッションになるので宇宙飛行士の健康だけでなくモチベーションも大事な要素になる。これがすごく厄介なのだ。

    最初の場面はJAXAの宇宙兄弟で有名な閉鎖空間試験現場から。第一期宇宙飛行士に求められたのは勇気やカリスマ的な才能だったが現在ではストレス耐性や協調性が重視されている。これはミッション期間が長期間になるからだ。例えばNASAでチームワークに関する研究を行った所男女混成>男性のみ>女性のみだったらしい。火星に行くならベストなチーム構成は?アポロ計画の飛行士マイケル・コリンズによれば去勢済み男子クルーがベストだとか・・・。ちなみに体型が小柄で協調性の高い日本人は宇宙飛行士に向いてると言う評価だ。狭い部屋にも慣れている。

    無重力下ではトイレが大問題になる。地球上のトイレは重力を元に設計されているので宇宙では全く役に立たない。当初使われたのは糞便バック、袋の開口部に粘着剤がついていてぴったり張り付けて用を足す。問題はこれで終わらず、口を閉じたままほっとくだけだと大腸菌の働きでガスが出て破裂してしまう。”逃亡者”を作らないためには殺菌剤をふりかけもみ込まなくてはならない・・・。スペースシャトルでは宇宙用便器が開発されたが開口部はわずか10センチ、正しい位置で使用すれば気流で回収するので”逃亡者”は逃げられない。NASAでは正しい位置合わせの訓練用におまるカムつき便器でトレーニングする。自分のお尻をみながら座る位置決めをするのだが、メアリーはチャレンジしようとするも断念。しかし火星に行くには尿も貴重な水分と言うことで濾過した自分の尿を飲んでみせる、チャレンジャーだわ。

    無重力空間では平衡感覚が無くなる。重力下では耳石が転がりどちらが下かわかるが宇宙で頭を急激に動かすと耳石はでたらめにぶつかり、目から入ってくる情報との狂いから宇宙酔いを起こす。船酔いにしてもそうなのだがなぜ吐くのかはよく分からない、吐いても解決にならないのだから。海の上なら魚が集まってくるぐらいだが、宇宙ではこれも大変。バイザー内がゲロまみれで何も見えないのではニュータイプでない人はモビルスーツに乗るべきではない。ただの水でも表面張力で肌に貼り付くのでゲロは凶悪だ。閉鎖空間では臭いがこもりもらいゲロを誘発、うわぁ〜っ。おならですら空気の流れがないとそこにずっと漂い続ける。

    お風呂も問題で基本は入らないのだがこれも悪臭のもとだ。足、股間、脇の下が特にひどい。ずっと着替えない不潔実験では最初の1週間は皮脂の分泌量は変わらない。衣服は汗と汚れのほとんどを吸収する。ジェミニ7号の2週間のミッション終了後には地上での実験以上に宇宙飛行士のパンツはひどい有様になっていた。その頃使ってた集尿器は時々豪快にお漏らししたらしい。無重力下ではシャワーの水滴は集まり大きな塊になるのでからだを洗う役には立たない。現在では日本女子大の開発した宇宙下着が素晴らしい成果を上げている。光触媒の作用により汚れを分解し、抗菌剤が菌の繁殖を防ぐ。若田光一さんは28日間同じ下着を履き続けても不快感はなかったらしい。光触媒を働かせるにはパンツ一丁の時間が長かったのだろうが・・・

    食事もいまでは美味しく食べれる宇宙食が増えているらしいが当初はとにかく少量でハイカロリーが標準だった。毎食エナジーバーみたいな物だ。しかも水分は減らして唾液で戻す。逆にぱさぱさなものはくずが出るのでNGになる。また食事はそのままトイレの問題に直結する。ペットが喜んで食べ糞の処理が楽なそんな食事が理想なのだ。

    無重力セックスは可能なのか?やはりそう来たかというところだがポルノ映画会社が無重力体験の弾道飛行を貸し切ったことはあるらしい。メアリーが調べた限り真実は不明だ。無重力空間では血液が上半身に集まる。映像でみる宇宙飛行士の顔がむくんでいるのはそう言う理由でへそから下には血液は集まらないらしい。と言うことは・・・。

    他にも骨密度を調べるための寝たきり実験や、アポロは実は宇宙に行っていなかったと言う陰謀が生まれた国旗の秘密、着陸時の重力加速度の影響を調べるマネキンの落下実験はエイリアンの噂を呼び、アストロチンプ(宇宙チンパンジー)が当初チンポノート(セーラーパンツをはいた猿になる)と言われた話などコネタの脚注が満載。厄介な荷物を火星に運ぶためには滑稽に思える様な莫大な努力の積み重ねが続けられている。宇宙兄弟には出てこない日常の時間がミッションの時間以外の全てを占めるのだから当然なのだが。
    続きを読む

    投稿日:2014.04.07

  • sokabook

    sokabook

     宇宙開発の一番の悩みは人間。機械と違って統一規格がないし、文句も言う。閉所にいる事でストレスを溜め、無重力に酔い、入浴を我慢し、大変な思いをしてトイレをする。これらの問題を大真面目に研究しているNASAでのエピソードを紹介した本。

     「宇宙でセックスは可能か」って章を目当てに買ったけど、それ以外も全部おもしろかった。ジョークを入れまくってるのでサクサク読める。
    続きを読む

    投稿日:2012.12.06

  • yoichi41

    yoichi41

    よくここまで調査したなあと思います。この本読んだ後にまだ宇宙飛行士目指そうとする人は偉いなあ。もっとも重要なことなんだけどね。

    投稿日:2012.05.12

  • koonpal

    koonpal

    グロテスクな記載があったり、下世話な話があったりするけど、でも人間を人間たらしめているのも、人間を宇宙に向かわせているのも、好奇心以外の何物でもないから、好奇心に満ちた作者の追求は面白い。

    投稿日:2012.04.10

  • Pantone226

    Pantone226

    相変わらずNHK出版の翻訳ものは読みづらい…
    後半の方が興味深い。

    重力がない
    ということが当たり前の地上では考えられない、
    本当に「想定外」の出来事が起こるのだなぁ。

    常識って常識ではないのだ。

    投稿日:2012.02.16

  • koyaj

    koyaj

    途中放棄。宇宙飛行士に関する雑学を集めたノンフィクション。致命的に訳が読みづらい。おそらく原文の文体の味もコピーしようとした結果だと思うが、逐語訳になってしまっていて日本語の文章に仕上がっていない。内容も陳腐だったので諦めた続きを読む

    投稿日:2012.01.23

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