【感想】始祖鳥記

飯嶋和一 / 小学館文庫
(58件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
31
10
10
2
0
  • 熱い男たちの闘い

    天災続きで民が疲弊した江戸時代天明期。
    岡山の表具師・幸吉は、ずっと空を飛ぶことを夢見てきた。
    そして凧の原理を応用した翼を作り滑空に挑戦したところ、本人のあずかり知らぬところで鵺騒動が沸き起こってしまう。
    お上の悪政に押しつぶされつつあった平民たちが、幸吉の空飛ぶ翼に「立ち上がる勇気」を見たからだ。
    幸吉の翼に勇気付けられ、人々は公儀の悪政に敢然と立ち向かう――といった話です。

    結構な分量のある本作品ですが、実は幸吉を描いているのは半分くらいです。
    幸吉自身は枠にはまった生き方に馴染めず、心の奥底にある「飛ぶ」欲求一直線に生きます。
    ただ、本人は飛ぶことに必死なだけで、お上にたて突こうなどとは毛の筋ほども考えていません。
    むしろ周囲が勝手に幸吉の行動に理由を付けてしまいます。
    そうした「理由付け」に魂を揺さぶられて、自らお上の隙を突く形で悪政に反旗を翻す人々を、残り半分で描いている物語です。

    ざっくり纏めてしまうと
    「迷わず行けよ 行けばわかるさ」が八割
    「プロジェクトX」が二割
    …といった読後感。
    個人的には、幸吉の生き様よりも、第二部で語られた巴屋伊兵衛たちの活躍の方が面白かった。
    目先の利に捕らわれない、長期スパンで物を見る、熱い男たちの生き様…みたいな展開が心地よかったです。
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    投稿日:2014.04.05

  • 始祖鳥記

     空を飛びたい 空を飛びたい 江戸時代は ロマンチックで
    鮮烈です 現代と違い いろいろ政府による支配や制約 
    時代の流れの中 理想を追い求める男の生き様
    秋の夜長 何処かから聞こえる虫の声 ぜひ 読んでいただきたいです  続きを読む

    投稿日:2013.10.27

  • 静岡に行きたくなりました

    江戸時代に空を飛んだ人の話です。
    今で言うとハンググライダーを自分で設計し作り飛んだ、それだけでも十分にすごい話ですが、ご当人がそれをなぜ成し遂げられたのか、その物語が事実なのか?と思うほど興味深いです。
    後半は静岡が舞台になるのですが、つい数ヵ月前に訪れた町だったので、この本読んでたら旅もより面白いものになっていたろうな♪と。伝記ではないのですが歴史物として楽しめます。鳥人間に捧げます。
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    投稿日:2015.02.24

  • 時代に迎合しない幸吉の人生(風来坊)とエスタブリッシュメントに真っ向から戦いを挑んだ廻船業者たちのそれぞれの人生に乾杯

    飯島和一作品の初読。感想は一言『痛快でおもしろかった!』。第一部は、江戸期天明の暗黒の時代に幸吉が大凧(いわゆるパラグライダーか)を使って空を飛ぶ話であり、人々の尾ひれがついて幕府に逆らった咎で追放。第二部は、がらりと変わって、幸吉に刺激を受けた塩問屋や廻船業者たちが、幕府・特定の大問屋達に果敢に戦いを挑む痛快この上ない話になり(この重層構造が良い)、第三部に入り、幸吉の後半生を描くことになる。最後は、祝!長距離滑空。この幸吉という人物には、お奉行の使った『風来坊』という言葉がよく似合う。 時代を超越した人生にも、良かれと思い既成概念に立ち向かった人たちにも祝福を捧げたい。続きを読む

    投稿日:2015.07.17

  • 男は夢を追うのだ

    詳しくは他の方が書いている通り。

    大事なのは、実質には(心の)挫折が無かった主人公がいつの間にか「自分を忘れていた」事に気づいて、再度挑戦をする事。登場する主要人物のほぼ全員がこの流れで生き抜きます
    ちょっと心に迷いのある人はぜひ手に取ってほしいです。
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    投稿日:2016.09.26

ブクログレビュー

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  • sam

    sam

    江戸時代に鳥のように空を飛ぶことに人生を賭けた男の話。
    凧揚げが盛んな地で育ち、表具屋としての技を磨くうちに凧で空を飛ぶことを思いつく。しかし実験を重ねるうちに大騒動になり町から追放となってしまう。そんな時に幼馴染の船乗りが彼を拾い、共に廻船業を営むが海育ちの者との差を感じ陸暮らしを始めるが、あることがきっかけで再び空を飛ぶことへの挑戦を始める。

    実在の人物と思われるが、ほとんど記録が残っていないため大半が創作らしい。
    他の作品と比べるとドラマチックさは控えめ。主人公の行動を通して、当時の世の中のシステムへの批判的な面も窺える。
    空を飛ぶことへの執着は主人公の性質という感じではあるが、もう少し何らかの外因があると納得感が増し、迫力が出たのではないかとも思った。
    続きを読む

    投稿日:2024.01.12

  • sari

    sari

    このレビューはネタバレを含みます

    一万円選書の二冊目。
    私にはちょっと難しかったかも…
    幸吉の人となりはわかったし、物語的にも面白かったけど、細かい設定があまり頭に入らず流し読みしてしまった。歴史小説は好きな方なんだけど、わかりやすく没入できる司馬遼太郎はすごいなと思ってしまった。ただただ私の読解力の問題だけど。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.01.03

  • charlie-iruka

    charlie-iruka

    空を飛ぶことに執着した男。意図しない社会の反応。数奇な運命。漢たちの情熱。
    江戸時代、岡山城下の表具屋の職人が空を飛んだことは事実として残ってるそうで、それに脚色してるんだとは思うけど、こんな人がいたかもと思わせる。
    面白かった。
    続きを読む

    投稿日:2023.08.20

  • てぃー

    てぃー

    一万円選書に入ってた。
    歴史物特有の言い回しにとっつきにくさを感じるけど、読み応えがあって、すごく面白かった。
    安住せずに己の道を開く情熱に感動する一冊。

    投稿日:2023.01.17

  • ppon

    ppon

    ただ飛びたかった、それだけだったというのに、この影響力!
    市中は沸き立ち、さらには遠く行徳の伊兵衛や幼馴染だった源太郎たちの心までも揺さぶる。
    思い切ったことをやる人がいるというのは、それだけで力になる。
    同時に、そういう右へ倣えでない人たちの話は、読み手としても魅力的。

    特に印象に残ったのが、卯之助や杢平たちも含め、それぞれが磨いてきた技術やものごとへのこだわり。
    できることならドキュメンタリー番組にでもしてもらいたい。
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    投稿日:2021.09.20

  • sakaiX

    sakaiX

    てっきりギリシア神話のイカロスをめぐるお話のような完全なフィクションを想像していたのですが。半分違ってました。実在の人物を題材にしており、作中で発生した事件も史実に基づいているみたいです。
    この種の作品はどうしても歴史上の出来事に縛られてしまうため、往々にして展開が窮屈になってしまいがちですが、本作もその例に漏れていない印象です。
    また、本作のキモは間違いなく第二部の塩をめぐる幕府や問屋との対決で、この部分はかなり面白く読めたのですが、相対的に幸吉が空を飛ぶお話が付け足し程度にしか思えないという弊害が・・・。第一部が終わった時はこの後何をやらかしてくれるんだろうと期待したんだけどなあ。結局、『始祖鳥記』というタイトルにしても文庫裏の説明文にしてもミスリード感があり、スタート地点から著者の意図と読み手である私の捉え方にズレが生じたのかな、という気がしています。
    続きを読む

    投稿日:2021.09.09

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