【感想】死体は語る

上野正彦 / 文春文庫
(84件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
18
27
30
2
1
  • 死体は嘘をつかない

    監察医であった著者が書き記した、法医学エッセイ。目の前にいる死者は自殺なのか、他殺なのか、または病死なのか。彼の言葉で言う「死者の人権」を守るため、本当の死因を探っていきます。

    犯罪・事件の真実が解き明かされていく様子は、まさにミステリー小説さながら。死体が残すわずかな痕跡を手がかりに、生者の嘘を暴いていきます。

    著者が出会う事件は、死体の観察だけに留まりません。時には警察から「埋められた死体を見つけたい」という依頼までがやってきます。実は、警察犬は腐敗臭の訓練を受けておらず、仮に数年かけて臭いを覚えさせても、死体が土中に30cm程埋められていると分からないんだそう。結局はバイプを土に打ち込み人間の鼻で捜査するのが確実、なんてこぼれ話も飛び出します。

    20年以上前に書かれたものなので、情報が古くなってしまっている箇所もあるけれど、彼の豊富な経験から語られる法医学の面白さは変わりません。人間が人間であるために、死者の人権は大切。ちょっぴり怖いけれど思わず読みふけってしまう、そんな不思議な1冊です。
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    投稿日:2015.07.17

ブクログレビュー

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  • 犬

    元監察医によるベストセラー。
    35年前に書かれたものなので今読むと倫理的にどうなんだろうと思う箇所もちょいちょいある笑

    「死者の人権を守る」「死者にも医師を選択する権利がある」という視点には驚かされると共に、著者の強い信条を感じた。

    死後解剖を拒否する遺族がいることは知っているが、ただ単に死者の尊厳を保つ為の拒否ならば、それは本当に死者のためを想った発言ではないということを遺族は理解しなければならない。

    執筆された当時でも監察医制度は五大都市でしか施行されていなかったみたいだが、現在でもそれは変わってない。「監察医制度を全国的制度に」という著者の願いはなかなか実現されそうにないようだ。
    見逃されそのまま闇に葬られた不自然死もいまだに数多くあるのだろう。
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    投稿日:2024.03.20

  • Anno

    Anno

    変死体を扱って三十余年の元監察医が綴る、法医学ノンフィクションの大ベストセラー。

    元監察医の上野正彦さんによる、法医学ノンフィクション・エッセイ本です。
    ドラマ化もされたと書いてあったので調べてみた所、そのまま『監察医・篠宮葉月 死体は語る』というタイトルで2001年からドラマシリーズが放送されていたみたいですね。

    私の手元にある文庫本で19版目、何度も重版されたベストセラーだけあって、それこそドラマや小説の中でしか知らなかった監察医という仕事が、くっきり輪郭を持った気がします。
    偽装殺人や親子鑑定、外から見ただけでは分からない、死体に秘められた真実を明らかにする監察医という仕事。ときには割り切れないような事実や事情に直面することがあっても、誇りをもってその職業と向き合っている姿がとても格好いい。
    語られる事件に添えられたコメントも、人情味のある人柄があらわれています。

    ちなみに、単行本の初版が1989年発行なので時代的に仕方ないのですが、現代の感覚で読むと、ちょっとハラスメント意識やら性的指向、性的マイノリティに対する意識など若干気になるかもしれません。
    法医学部分についても、DNA鑑定がなかった頃だったり、現状とは違う部分も多いのかなと思うので、最近の法医学を扱った本などもあれば読んでみたいですね。
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    投稿日:2023.05.17

  • まよい

    まよい

    法医学、監察医をテーマにしたドラマを見たことがきっかけで興味を持って読んでみました。
    夜、眠れなったらどうしようと思いましたが、そんなことはありませんでした。
    昔昔の出来事からニュースで知ってるぞという大きな事件まで、死因を導き出すための『死者との対話』、そこから浮かび上がる人間模様が綴られています。死因というものは一般人が思うよりもかなり重要なものらしい。
    死者の人権を守る、社会的最小単位である家庭のあり方を見直す、という言葉が繰り返し出てきますが、元々は役所の厚生福祉や保健などの衛生業務にかかわる人が読むための情報誌での連載だったそう。なるほど。
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    投稿日:2023.02.16

  • ゴミズノ

    ゴミズノ

    このレビューはネタバレを含みます

    実はこんな本を探していました。もともと犯罪心理とかに興味があったのですが、進路的には法医学かもしれません。
    この本の初版は2001年のものですから、今はもっと法医学も進歩しているでしょう。
    不謹慎かもしれませんが、死後硬直とか科学的なことももちろん面白いのですが、死体から浮かび上がってくる人間模様もまた興味深いです。金、愛情、憎しみ、葛藤、その他諸々…。
    この著者の外の作品も読みたくなって色々探してみましたが、内容に重複があるようで、どれか一冊でいいっぽいです。そしてよくまとまっている本作がオススメらしいっす。
    しかし本屋の検索機で「シタイ」とか打ち込んでる僕とか犯罪者予備軍って感じだよねうける。

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    投稿日:2023.01.09

  • 渡部和也

    渡部和也

    身近にそんな状況でも起こらない限り、調べることはないだろう。
    解剖の種類、監察医制度。
    自分が原因不明で亡くなる時、きちんとした専門家に触って欲しいと思う。

    投稿日:2022.12.07

  • ヒボ

    ヒボ

    このレビューはネタバレを含みます

    単行本として本書が世に出たのは1989年、文庫化されたのは2001年。

    多くの重版を重ねてきた本書、読めば納得のノンフィクション作品でした。

    法医学、監察医、臨床医、検死、司法解剖、行政解剖...言葉としては見聞きしたことはありますが、無知故に違いは何か?と問われればわからないと答えるしかなかった。

    故意に死体を傷つける事(死体損壊)が罪になる事は知っていましたが、死体解剖保存法なる法律のことなど、全く知りませんでした。

    監察医としての実体験。

    偽装殺人、自殺を装った他殺、またその逆、一見すると見落としてしまう死の本当の原因。

    死体と向き合い、そこの残された僅かな痕跡から故人がどのように亡くなったのかを法医学に基づき解き明かす。

    作られたミステリーではなく、これがノンフィクション。



    説明
    内容紹介
    あなたにも死者のメッセージが聞こえますか? 法医学入門のバイブルとなった大ベストセラー。
    偽装殺人、他殺を装った自殺、猟奇事件…。どんなに誤魔化そうとしても、もの言わぬ死体は、背後に潜む人間の憎しみや苦悩を雄弁に語りだす。その死者の声を聞き、丹念に検死をし、解剖することによって、なぜ死に至ったかを調べていくのが、監察医の仕事である。
    浅沼稲次郎刺殺事件、ホテルニュージャパン火災事件、日航機羽田沖墜落事故等の現場に立会い、変死体を扱って三十余年の元監察医が綴る、ミステリアスな事件の数数。
    テレビドラマ『監察医 篠宮葉月 死体は語る』シリーズの原作にもなった、話題の書。
    解説・夏樹静子
    内容(「BOOK」データベースより)
    偽装殺人、他殺を装った自殺…。どんなに誤魔化そうとしても、もの言わぬ死体は、背後に潜む人間の憎しみや苦悩を雄弁に語りだす。浅沼稲次郎刺殺事件、日航機羽田沖墜落事故等の現場に立会い、変死体を扱って三十余年の元監察医が綴る、ミステリアスな事件の数数。ドラマ化もされた法医学入門の大ベストセラー。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    上野/正彦
    1929(昭和4)年、茨城県生まれ。東邦医科大学卒業後、日本大学医学部法医学教室に入る。59年、東京都監察医務院の監察医となる。84年から同院長となり、89年退官。以後、法医学評論家として執筆活動を始め、89年、初の著書『死体は語る』が、60万部を超える大ベストセラーとなる。その他、専門書、学術論文多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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    投稿日:2022.10.22

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