【感想】検証 東日本大震災の流言・デマ

荻上チキ / 光文社新書
(45件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
4
17
16
0
1
  • 震災時のデマが読みやすく整理・分析されている

    流言・デマに惑わされにくくなるために具体的な事例を知ろう、という本です。
    著者はこれを「流言ワクチンを摂取して流言に対する免疫を高める」と表現しています。
    感染症とのアナロジーで、皆がワクチンを摂取することで感染症(流言)の広がりを抑えよう、ということですね。

    東日本大震災に伴って(ネット上に)登場した流言について具体的に紹介・分析していき、その中で代表的な流言の型やモデル、対策の紹介をする、という構成で、それぜれの事例の紹介は非常に丁寧です。

    序章で著者は、個人のリテラシーの底上げだけ議論してもしょうがない、弱者が存在していることを前提とした対応・システム作りが必要だ、と述べていますがその辺の提言がほとんど無いのは残念でした。
    この本自体はあくまで個人のリテラシーの底上げをするワクチンでしかないので、例えば皆がワクチンを摂取するような仕組みをどうやって作るか、みたいな話が欲しかったです。

    …と思ったんですが、これ、震災発生から二ヶ月で出版されたものなんですね。びっくりしました。それならしょうがないというか、二ヶ月でこういった本が作れるというのは素直にすごいなと思います。
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    投稿日:2014.09.05

ブクログレビュー

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  • iadutika

    iadutika

    このレビューはネタバレを含みます

    検証 東日本大震災の流言・デマ
    荻上チキ著
    2011年5月20日発行 
    光文社新書

    東日本大震災が起き、フクイチ事故に至った時、一時、石原都知事(当時)が、パチンコ屋の営業や自販機を止めれば、節電が出来ると繰り返し訴えていましたが、あれは実はネットでのデマから始まったことをご存じでしたでしょうか。
    私は知らなかったが、この本に経緯が詳しくかかれています。

    セ・リーグの公式戦を予定通り開催すべきかどうかの議論が起きた時、試合を強行しよとして批判を浴びたジャイアンツ。親会社の読売新聞が「東京電力管内の主な産業や施設などの電力消費量」という表を掲載したが、誰かが、その一部だけを切り取り、ランクの下の方にあったパチンコや自販機があたかも一番電力を消費しているかのように見せかけて拡散させた。そのランク表では東京ドームが最下位で、読売にとってもその拡散は都合がよかった。
    それに引っかかった都知事が発言、これはいいとばかり、読売がそれをまた報道した、という図式。

    さて、
    この本の著者は、「シドノス」を設立し、メールマガジンなど情報発信メディアを確立しつつ、自らも発言する若手の学者系言論人、とでもいうべき人かな。肩書きは、批評家、編集者、となっています。
    テレビで見るディベートの仕方はあまり好きではないけど、比較的まともな人ですね。

    チキ氏が、東日本大震災で飛び交った流言・デマについて、具体的に取り上げ、なぜ起きたのか、それがどんな迷惑を及ぼしたのか、それにひっかからないためにはどうしたらいいか、などを記している本。

    大災害時に流言・デマはつきもので、歴史上、一番有名なのが関東大震災時におきた「朝鮮人来襲説」。全くのデマにより、何の罪もない、そして自らも被災して苦しんでいる在日朝鮮人や朝鮮人と間違われた人がたくさん殺されました。

    20年前に私も軽く被災した阪神・淡路大震災でも、こうした外国人に関するデマが関西の都市部には出回った。当時はインターネットがほとんど普及しておらず、みんな口から口への噂で伝わっていきました。
    代表的なのは、神戸でカップルが電気がまだ復旧していないバーで飲んでいると、東南アジア、イラン系の男が2人(3人)入ってきて、彼女を強姦、止めに入った彼氏とバーテンはボコボコにやられて重傷。警察もマスコミもパニックを恐れて発表していない、という話。私もあちこち(飲み屋の女性からがほとんどだった)で聞いたもんです。
    これについては、同時に読んでいる「うわさとは何か」という、こちらは専門家である社会心理学者が書いた本に、もとネタが説明されているので、また書きます。

    さて、今回も外国人に関するデマが随分あったようです。
    この本によると、
    「仙台市三条中国の避難所で中国人がトマトの皮をぺっ!と吐いて汚し、ストーブ前にいた高齢者を足で払って独占。近隣の外国人留学生(7割強が中韓)が避難所用救援物資を根こそぎ運びだした」
    というようなデマが出たらしい。
    この避難所はその日はまだ閉鎖されていたので、真っ赤な嘘。
    しかし、デマにも世相が反映されているというか。

    関西の人にも関わりのある、流言・デマも出てきます。チェーンメールを受け取った皆さん、書き込みを見た皆さん、多かったでしょうけど、「関西電力に勤める友人からのお願い」と称する節電要請メールが代表例。関電も、平松市長(当時)も否定のコメントを出すに至った件です。これも個人が要請するわけがないということを考えれば、すぐにデマだと分かるのだけど。今はそういえても、みんな“ハイ”になっている時は判断を誤りますね。

    そう言えば、ボランティアに入った人による不確かな情報発信、拡散についても取り上げています。「ボランティア・ハイ」の状態になると解説。・・・確かに、それはあるかも、という内容でした。

    この本では、
    1.注意喚起として広まる流言・デマ
    2.救援を促すための流言・デマ
    3.救援を誇張する流言・デマ
    の三つに分けて事例紹介し、時間の経過とともに情報提供した者の書きようが変化していたった様子なども含めて分析しています。

    最後の章では、どうしたらこういう情報に踊らされずにすむか、ということも考察。その一つに、NGワードに注意というのがあって、その中に「日本のマスコミが報じていない・・・」という書き出しがつくのは要注意というのがありました。

    私も、マスコミは信用できなから一切見ない、読まない、と主張している人が、「マスコミが一切報道していない事実・・・」なんて書いていると、マスコミに一切目を向けない人が、なんで分かるの?と不思議に思います。それに、一切報道してないことを証明することなんて、ほとんど不可能、いわゆるブラックスワン(悪魔の証明)なのにね。
    といいつつ、「マスコミであまり報道されてませんけど」とついうっかり使ってしまいがちなので、他山の石とすることにしましょう。

    この本、面白い。東日本大震災時の過去の話ではなく、ネット、とくにソーシャルメディアを利用する人には必読の教科書かもしれません。

    内容を書きだしたノート、かなり長いので省略します(^_^;)

    レビューの続きを読む

    投稿日:2021.03.15

  • はち

    はち

    有事の時こそ冷静で在れ。興奮せず淡々と。「拡散依頼」や「皆に教えて」って言うのを右から左に流さずソースの確認しようってのはいいが、誤ソースだったり操作されてる可能性もあると言われるとコンスタントに止めるってのがいい気がする。。ソースの質の判断は素人には難しい。それと、有事のときに悪事をはたらく奴は問題外だけど、震災関連の本を読む度に出てくる「善意の人」ってのがやっぱり厄介。「善意」に基づく言動が必ずしも「善行」にならないってのがイタイ。ボランティア一つとっても「善意」ではなく効果や結果で評価されるべき。続きを読む

    投稿日:2020.05.27

  • miyach23

    miyach23

     奇しくも熊本地震が起こった時に読んでいたのがこの本。
     東日本大震災が発生したときに巻き起こった流言・デマの類いをTwitterを中心に分析、類型別にまとめた本です。

     関東大震災や阪神大震災のときに起こった流言・デマも参考にし、混乱時に出やすいものを提示していますが、今回の熊本地震でもやはり同様の流言飛語が出回っていました。
     人間は成長しないというか、混乱時には不安な心理などからそうなってしまうものなのでしょうね。

     この本は、情報リテラシーの相対的向上を狙ったもので、一人でも多くの方がこの本を手に取り、「この情報は流言かな?」と考えられる環境が整えばと思います。
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    投稿日:2016.05.07

  • taka_2

    taka_2

    東日本大震災にまつわる、流言・デマの検証本。当時Twitterは相当見ていたので、大体知ってるけど、見なかったらデマにかかることもないのかなと。まあ、少なくとも無闇に拡散することだけは避けようと思う。

    投稿日:2014.12.24

  • shihomushi

    shihomushi

    当たり前のことだけど、なかなかできていないことが書いてある実用書。

    震災のときとか非日常はもちろん普段から情報のソースはちゃんと確認しないといけないなと改めて思う。

    萩上チキさんはほんとちゃんとした仕事をしているなぁ。誠意があるってこういうこと。続きを読む

    投稿日:2014.09.01

  • W. Yuriko

    W. Yuriko

    実用的な良書。「コスモ石油の黒い雨」に始まり、東日本大震災で流れたデマが、どのようなメカニズムで流れたのかを検証した一冊。要は、「情報に飛びつかずに、ウラを取ろう」という話だが、以下の側面によりとても面白かった。
    (1)【拡散希望】とか「○○から聞きました」のようなデマの典型を示してくれているので、情報のウソホントを見分けるためのちょっとしたマニュアルのようになっていること
    (2)ツイッターという新しいメディアが浸透してから起こった大震災におけるデマの特徴を描いていること

    著者はこの本を「流言ワクチン」と表現しているが、確かに、これを読んでおくことでデマを真に受けない・自ら拡散させないという耐性が前よりはできた気がする。
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    投稿日:2014.01.19

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