ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか デジタル時代の総力戦
高橋杉雄(編著)
/文春新書
作品情報
米中の覇権争いでは終わらない。世界は戦争の世紀に突入した――
最前線! リアルタイムの戦争研究
グローバリゼーションが進んだ世紀におけるウクライナ戦争の開始は、
「終わらない戦争」の始まりを告げる出来事となった。
見えない情報の行き交うサイバー戦、イーロン・マスクのスターリンクに
代表される民間による宇宙利用もが戦争の命運を握る。
ウクライナ戦争以後、戦争はどう変わったのか?
米中の覇権争いでは終わらない新たな問題群を前に、
台湾有事を抑止することは可能なのか?
ロシア・ウクライナ戦争をケーススタディに、
「大国間競争」に埋め込まれた「終わらない戦争」について考える。
目次
第1章 ロシア・ウクライナ戦争はなぜ始まったのか 高橋杉雄
第2章 ロシア・ウクライナ戦争――その抑止破綻から台湾海峡有事に何を学べるか 福田潤一
第3章 宇宙領域からみたロシア・ウクライナ戦争 福島康仁
第4章 新領域における戦い方の将来像――ロシア・ウクライナ戦争から見るハイブリッド戦争の新局面 大澤淳
第5章 ロシア・ウクライナ戦争の終わらせ方 高橋杉雄
終章 日本人が考えるべきこと 高橋杉雄
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この作品のレビュー
平均 4.6 (11件のレビュー)
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本書の題名を見た際、「読むべき?」と思ったのだが、読了に至ってその思い付きは間違っていなかったと確信できる。これは「読まなければならない」と言って差し支えない。言葉を換えると「必読書」に挙げるべきかも…しれない。
「前史」というような展開は長いのだが、とりあえず“戦争”ということになったのが2022年2月であるから、既に1年4ヶ月間も続き、直ぐに1年半になってしまう。こうなると「何故終わらない?」という表現が口を突くというものだ。
本書は複数の執筆者による論考を纏めているのだが、論考を綴ると同時に纏める作業を担当した編者は、テレビ番組等でコメントを求められ、「何故終わらない?」または「落としどころ?」というように尋ねられる場面が在り、そんな中で考えを色々と整理することを重ね、本書という形に纏まったということであるようだ。
本書の各論考は、旧ソ連諸国や欧州の地域事情等を専門とするということではなく、所謂“安全保障”全般や、技術と社会というような事柄等、地域事情に拘泥しない論点を有する人達が手掛けている。それが凄く面白い。
たった一言で“結論”を敢えて言えば、目下のウクライナとロシアとの戦争は「簡単に終わるようには見えない」ということに他ならないかもしれない。それは「何故?」ということを本書では説いている。
ハッキリ言えば、ウクライナとロシアとは、経済規模や開戦当初の軍隊の規模等が「10倍以上の差」であった。そういう情況にも拘らず、ウクライナが善戦して持ち堪え、戦闘が膠着する場面も生じて、長期化している。その辺りの技術的なことも判り易く纏めているのが本書だ。
一言で言えば、“成功体験”から「詰めが甘い?」という感で開戦に踏み切ったロシアに対し、苦心しながら備え、必死に抵抗し、効果的な反撃で持ち堪えるウクライナという図式になるであろうか。「国の一部に組み込んでしまえ」と攻めるロシアに対し、「それは断る」と守るウクライナで、両者の“自己同一性”を賭しているような情況になっていて、目下の戦いの“終わり”は見え悪い。
「戦争」というような様相は、“外交”、“情報”、“軍事”、“経済”という諸要素が複雑に絡み合っている。そんな様相を、新しい意味で「総力戦」とでも呼ばなければならない筈で、目下のウクライナの戦争もそういう例に入らざるを得ないとしている。
そして「戦争」は、或る1国で勝手に決断すれば起こしてしまうことは出来る。が、その結果として「交戦相手」が生じてしまう以上、少なくとも2国以上で何とかしなければ、簡単には終わらない。要は「始めてしまわないように…」としなければならないのが「戦争」なのかもしれない。
このままであれば「厭戦ムード」が高まる迄の「更に数年?」というような時間が「終わり」に必要ではあるかもしれない。が、それは早ければ早い方が善いことは疑い悪いとは思う。国土が荒廃―通常兵器の激しい交戦の結果、「原爆??」という程度に破壊されてしまった都市も既に在る訳だ…―し、人々の生命が擦り減らされるばかりなのだから。
この戦争の件に関しては、「考える材料」を怠りなく集めるべきだと思う。そういうことで、この種の本は積極的に読まなければならないと思う。
本書の好さは、地域事情等でもない「外交や軍事や技術の全般」という視座でウクライナで起こっていることを説こうとしている点で、それ故に「非常に判り易い」という辺りだ。広く御薦めしたい。続きを読む投稿日:2023.07.01
ロシア・ウクライナ戦争について、なぜこの戦争は始まったのか、この戦争はどのような戦争なのか、この戦争は終わらせることができるのか、という3つの論点について考察し、最後に日本の安全保障への影響についても…論じている。
1つ目の問いについては、この戦争はロシアとウクライナのアイデンティティをめぐる戦争であり、抑止はほぼ不可能に近かったと結論付けられている。
2つ目の問いについては、この戦争は、「古さ」と「新しさ」が同居しているところに特徴があり、「デジタル時代の総力戦」と捉えられると論じられている。
3つ目の問いについては、3つのシナリオが考えられるが、どれも相当の時間がかかることが見込まれたり、蓋然性が低かったりして、いずれも早期実現の可能性は低いという悲観的な結論となっている。
そして、日本の安全保障への示唆として、中国による台湾海峡有事を念頭に置き、ロシア・ウクライナ戦争の最大の教訓は「戦争は始めるよりも終わらせることが難しい」ことであるとして、中国に「戦争を始めさせない」ために軍事的な抑止力の強化が必要であると指摘する。
ロシア・ウクライナ戦争の来歴と性格、今後の見通しについてとてもよく整理されている良書である。DIMEという概念や構造的リアリズムにおける「バンドワゴン」と「バランシング」という概念など初めて知る概念も少なくなく、ロシア・ウクライナ戦争の分析を通じて、安全保障論全体の勉強にもなった。
本書の結論はかなり厳しいものであるが、納得性の高いものであった。支援疲れが言われているが、ウクライナが占領地を奪回できるように国際社会が支援を継続していくことが大切だと改めて認識した。
アイデンティティを巡る争いという点では、懸念される台湾海峡有事は、ロシア・ウクライナ戦争以上ともいえ、本書が指摘するように中国に戦争を始めさせないために日本としても最善を尽くすことが必要だと感じた。その点で、賛否両論あるが、日本の防衛力強化は重要だと再認識した。続きを読む投稿日:2024.03.31
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