奇跡の社会科学
中野剛志(著)
/PHP新書
作品情報
社会科学とは社会について研究する学問であり、政治学、経済学、社会学、人類学、国際関係論などが含まれる。その古典を読み返したところで、当時とは時代が違うのだから役に立つことはないと思われるかもしれない。ところが驚くべきことに、現代を理解するためにはこれらの古典の知見について知る必要があり、さらに言えば現代で起こる様々な失敗は、古典の知恵を知らないために起こったものが多い。組織が官僚化することによる停滞、「抜本的な改革」に潜む罠、株式市場を活性化させることの危険性・・・・・・。「教養にして実用」である社会科学の知見を明快に解説。 【本書で取り上げる社会科学の古典】●マックス・ウェーバー「官僚制的支配の本質、諸前提および展開」 ●エドマンド・バーク『フランス革命の省察』 ●アレクシス・ド・トクヴィル『アメリカの民主政治』 ●カール・ポランニー『大転換』 ●エミール・デュルケーム『自殺論』 ●E・H・カー『危機の二十年』 ●ニコロ・マキアヴェッリ『ディスコルシ』 ●J・M・ケインズ『雇用・利子および貨幣の一般理論』
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商品情報
- シリーズ
- 奇跡の社会科学
- 著者
- 中野剛志
- 出版社
- PHP研究所
- 掲載誌・レーベル
- PHP新書
- 書籍発売日
- 2022.08.10
- Reader Store発売日
- 2022.08.11
- ファイルサイズ
- 0.3MB
- ページ数
- 248ページ
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この作品のレビュー
平均 4.3 (12件のレビュー)
-
1990年代初頭の日本のバブル崩壊に始まる失われた30年。第二次安倍政権が声高く叫んだデフレ脱却のための3本の矢も、蓋を開ければ異次元の金融緩和による、金余りから端を発する株価上昇と輸出企業の円安メリ…ット享受くらいだろうか。
冴えない日本経済と言う印象を持つなか、何気に取った本書は、眼から鱗が落ちるものだった。
馴染みのない社会科学と言う標題だが、副題の「組織改革の失敗」「自殺」「戦争」は、どれも現在世界や日本における問題であり、興味のあるテーマ。
中身は、古典比較的最近の経済学者の主張を、現代の問題点と結びつけて解説してくれている。
マックス・ウェーバー
なぜ組織改革は失敗するのか
効率性の追及が非効率を生む
数値だけで測定できない価値
エドマンド・バーク
急がば回れ
漸変主義こそ、実は近道
アクレシス・ド・トクヴィル
民主主義の怖さ
平等が進むほど全体主義化する
人々の絆が社会を豊かにする
カール・ポランニー
新しい資本主義
新自由主義と「社会防衛の原理」
エミール・デュルケーム
自殺はどうすれば防げるのか
突然の社会変化が自殺を減らす
E・H・カー
どうして戦争は起こるのか
ロシアがウクライナを侵攻したわけ
「軍事力」「経済力」「意見を支配する力」
ニコロ・マキアヴェッリ
どうして臨機応変に行動できないのか
人はどのようにして必然的に破滅するのか
ジョン・メイナード・ケインズ
世の中、何が起きるか分からないから
いったい経済学はどうなってしまったのか?
社会古典は活きている
特に現在当然のように言われている新自由主義経済の弊害は、納得がいく説明だった。
古典経済学者の先見性に驚いてしまう。
1980年代以降、アメリカ、イギリスそして日本は、自由市場に任せれば豊かになるという信念の下、規制緩和、自由化、民営化、「小さな政府」への行政改革、さらにはグローバリゼーションを進めてきた。このような信念が「新自由主義」と呼ばれる。
新自由主義がはらむ最大の問題は、全体主義を呼び込んでしまうという点にある。
新自由主義を信じる日本の改革論者は、労働組合や農業協同組合といった団体組織を「既得権益」「抵抗勢力」呼ばわりして排除し、政府の市場に対する規制を有害無益だと主張してきた。組合組織や政府による規制は、まさに市場が人間や自然を「商品」化するのを防ぐ「社会防衛」のため、市場原理を理想とする新自由主義者にとっては、それが邪魔で仕方がないのだ。
新自由主義が支配的な経済思想となったのは、冷戦が終結し、社会主義の敗北が決定的になった1990年代頃から。マスメディアでは「小さな政府」「規制緩和」「自由化」
「グローバル化」の大合唱だった。
この1990年代に、20歳から30歳であった若者たちは、時代の空気を吸って成長し、新自由主義という思想に染まっていく。
そして、「新自由主義が教えるような理想的な世の中へと日本を変えたい」などという志を抱き、政治家や官僚あるいは経済学者への道を歩んでいく。
世界は20年前とは大きく異なり、すでに金融市場の不安定化や格差の拡大といった新自由主義の弊害が顕著に現れている。それにもかかわらず、その現実が見えずに、新自由主義という20年前の古い思想を今さら持ち出してしまったのだ。
だからケインズは「危険なものは、既得権益ではなくて思想である」と言った。
続きを読む投稿日:2023.09.06
名前はなんとなく知っていても、実際に原書を読んだことはない(ハードルが高い)ような社会学の古典を、わかりやすく解説してくれる。述べられている通り、長く読み継がれる古典には深い洞察があり、現代に当てはめ…ても十分納得できる内容であることが理解できた。内容の大枠が掴めたことで、逆に興味が増し、原書にもトライしてみたい気持ちになった。
ただ一点、最後の堺屋太一批判が少々引っかかった。視点が逆だの、まるっきりわかっていないだの、個人的に恨みであるのかと。笑
自分の主張の正しさの論拠の一つとして述べているが、結果論として後からアレコレ言うのは簡単で、この部分はなくてもよかった気がする。
著者は非常に優秀な方であり、他の著作も読んでいて内容も素晴らしいが、「周りがみんな間違っていることを自分だけは知っていた」という主張が一部に見られ、この点はちょっと危険。自分の考えに自信を持つことは大事だが、未来のことはだれもわからないからこそ、わからないなりに思考するのが人間。
古典の考え方を理解・尊重しつつも、今を生きる自分たちで判断していくことが大切だと感じた。
続きを読む投稿日:2024.04.29
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